[BlueSky: 320] 子どもの数  Re:317 & 295 & 297


[From] suka@nacri.pref.nagano.jp (SUKA, Takeshi) [Date] Fri, 6 Aug 1999 12:21:51 +0900

長峰さん 小宮さん みなさん
          須賀です。

長峰さん、お子さんの誕生、おめでとうございます。

小宮さん:
> > 僕は独身なんですが、守らなければならない家族、将来に残す子孫を
> > 持たれている方は、恐らく一人身のものより、環境問題に対する意識
> > も変わってくるんでしょうね。より切実な問題として。

長峰さん:
> それは実感しています。

ああ、きっとそうなんだろうなあ。わたしも小宮さんと同じで、子どもは
いません。子どもをそだてていらっしゃる方の環境問題への関心やパワー
は、わたしのように「仕事」でそれについて考えている者のそれと、質的
にちがったものがあるような印象をうけています。

> 後藤さん:
> > 僕が思うに、「可哀相だから産まない」というより、「大変だから産まない」と
> > いう方が率としては高いんじゃないでしょうか?

長峰さん:
> そう思います。でも、大変だから子供を作らない人は、生物的には淘汰される
対象と考えていいのかな?今1人目と2人目が認可保育所に行っていますが、市
に納める保育料が値上がり続け、8月についに10万円を突破してしまいました。
子供が作りにくい社会も淘汰されていくのでしょうけど。

う〜ん、そういう言い方もできるのかもしれませんね。わたしには、長峰さんの
このご発言の真意がよくわからないのですが、ただ、生物現象としてみたときに
「淘汰」がそこに生じているとしても、それは社会的な価値判断の対象としての
「よしあし」の問題とは区別して考えた方がいいのではないでしょうか。生物学
でいう「淘汰」はただ「なりゆき」としておこる自然現象を表現するための言葉
にすぎず、本来「いい」とか「わるい」とかいう社会的な価値判断をこめたもの
ではないと思うのですが。

毛虫が葉っぱをたべたり鳥が毛虫をたべたり、といった自然現象は、人間がそれ
について価値判断をしてもしなくても(人間がいてもいなくても)起こってきた
ことだしこれからも起こっていくことだろうと思います。生物学者がそういった
自然現象をいろいろな角度から研究してそのなかに「淘汰」という現象があると
いうときには、そういう自然界の事実そのものにせまることを目的にしています。

けれども、あることが「いい」とか「わるい」とか判断するとき、それをおこな
ているのは、判断する側であって、判断される対象の方ではありません。そして、
その判断の内容は、判断する側の価値観に大きく左右されます。さらに、価値観
というものは、個人差もありますし、時代背景や文化によっても変化するものだ
と思います。

人間がもっているある行動の傾向がもし仮に「淘汰」されるとしても、そのこと
は、それ自体では「いいこと」だとも「わるいこと」だともいえないのではない
でしょうか。

ほかの生物学関係のみなさん、いかがでしょうか?

もっとも、長峰さんのご発言を注意深くよめば、「淘汰される対象と考えていい
のかな?」「淘汰されていくのでしょうけど」と事実についての問いかけをなさ
っているだけで、それ自体をいいとかわるいとかおっしゃっているわけではない
ことがわかります。ですから、わたしも長峰さんに反論しようとしているわけで
はありません。しかし、「淘汰」という言葉は誤解をまねきやすい言葉ですし、
生物学にくわしくない方は誤解されるかもしれない、とちょっと気になったので
わたしなりの理解の仕方をのべてみました。

話が脱線しましたが、わたしも子どもは好きです。今年の5月の連休にベトナム
に旅行にいきました。そのときに、街の路地裏や村の道や小舟が行き来するよう
な小さな水路のなかなどで元気にあそぶ子どもたちの姿をたくさんみました。
もちろん、日本の子どもたちの多くのように物質的にめぐまれているわけでは
ありませんが、でもなぜか、その元気な姿をみているだけでなんともいえない
幸福な気持ちになりました。自分の子どもでもないのに。これが自分の子どもだ
と、またちがったいろいろな感情がわいてくるのでしょうね。

そのときにわたしは、日本では最近こんな生き生きとした子どもをみたことがない、
というよりも、こんなたくさんの子どもたち自体をみたことがない、ということに
気がつきました。子どもの実際の数そのものもそうですが、何というか、空間的に、
社会のひらかれた場所で、子どもたちが親や学校の先生以外のおとなとまじわったり
すれちがったりすること自体が今の日本ではすくなくなっているような気がします。
わたしは、そういう広い意味での大人社会と子ども社会の関係そのものについても、
そろそろ考えなおす必要があるんじゃないかな、という気がしています。

Takeshi SUKA
Nagano Nature Conservation Research Institute (NACRI)
E-mail: suka@nacri.pref.nagano.jp



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