[BlueSky: 315] Re:308 過当競争による農業破壊


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Fri, 6 Aug 1999 07:21:34 +0900

小宮です。後藤さん、僕が言いたいことをフォローして下さって
ありがとうございました。

◯後藤さん
>戦後の国内農業破壊は、アメリカにおける過剰小麦の圧力から始った、というよ
>うなことを昔、読んだことあります。この関係は、戦後一貫して変わりませんね。
>おかげで、農村から人口が「金の卵」として流出し、過疎化が進行しただけでな
>く、都市近郊の田園も破壊されてしまいました。
>
>農業を含む地場産業の保護・振興は、環境問題を含みつつ、なおそれだけでもな
>い、重要な課題であると思います。
>
>・・・それが、綺麗な海や山を取り壊すような形で進行してしまうことは是非と
> も避けて欲しい。
>
> 僕の郷里は都市近郊ですがベッドタウン化が強力に進行した結果、美しかっ
> た自然がどんどん失われていきました。
>
>戦後の経済復興・高度経済成長が、アメリカ農業を頼りに、国内農業を切り捨て
>る形で急速に進行していった結果が、現在の状態であろうと思います。

アメリカのフランシス・ムーア・ラッペは「小さな惑星のための食事」
で、地球上に飢えと貧困を拡大させていっているものとして、次の要因
をあげています。

「ごく少数のものが、農地をコントロールしている」
第三世界のほとんどの国では、およそ80%の農地が平均して3%の土地
所有者によってコントロールされている。そしてこの土地所有者は、
土地を誤って使っているか、価値以下に使っている。つまり有効に使っ
ていないし、多数者のために使っていないのだ。

「基本の食品を生産するための農業の発展が無視されている一方で、
輸出用の産物の生産は増えつづけている」
第三世界のほとんどの国では、権限を持つ少数の人たちは、多数者の
利益になる地方の発展よりも、都市の産業化のほうを採っている。
71の開発途上国を対象とした1970年代の調査では、その3/4の国は、
中央政府の歳出の10%以下しか農業に予算を割いていなかった。さら
に多数の人達がより一層貧しくなっていくにつれて、基本の食品のた
めの国内市場は縮小していく。それで食品の生産は、より儲かる外国
市場と、少数の都市階級の嗜好にあったものに向かうことになる。
現在行われている農業のごくわずかな投資は、ほとんどが輸出用の
産物のための個人による投資である。

「基本の穀類が、ますます多く飼料に向けられていっている」
貧しい人と豊かな人のギャップが開くに連れて、第三世界では、多数
者の飢餓が深刻になっているその目の前で、穀類はより一層家畜に
回されるようになっている。穀類が動物の飼料に回されるようになる
だけでなく、しばしば輸出のために、基本の穀類が生産できる農地を、
牧場に変えてしまうというようなことまで行われている。

「米国政府の意図的な"市場開発"戦略が、米国の穀類への他国の依存
を高めている」
輸出される米国の農産物は、工業国に送られており、全輸出農産物の
2/3は飼料にされている。穀類や大豆を飼料として輸出することで、
米国の農産物の輸出高は、1960年代以降10年で2倍になるという急
成長を示した。それは輸入国の畜産のあり方を変え、米国の穀類に依
存する構造をつくっていった。農産物の"外国市場の開発"を積極的に
押し進めたのは、FASと称される米国農務省の国外農業部だが、FAS
の戦略は、世界中の家畜を穀類と大豆で育てることによって、穀類と
大豆の輸出を拡大するというものだった。この戦略に巻き込まれた国
が、米国の穀類への依存を高めていけばいくほど、飢餓人口に回る
穀類が微々たるものになっていくのは自明のことである。

FASの戦略は、飢餓を深刻化させる力の一つになっているだけでなく、
世界中の食事を変えさせる力となり、しかも、農業に過当な競争をも
たらしている。その過当な競争は、小さな惑星である地球の、限られた
資源を食い付くすかたちで進行しているのだ。

            「何を食べるべきか」丸元淑生著 より


確かに、農業の過当競争は、深刻な環境破壊を押し進め、世界にます
ます飢えと貧困を広げていくでしょう。収穫率を上げるために広大な
土地に単一作物が植えられ、除草の手間を省くため飛行機から農薬が
散布される。それまでは、自国内でみんなのんびりと楽しく暮らして
いたかもしれないのに、経済の自由の旗の下に、国内の農業のスタイル
を変えさせられていく。これは僕にとってはまったく「余計なお世話」
でしかありません。

>いずれにせよ、地方が人口を引き付ける、老幼青年男女誰もが魅力を抱くような
>町や村に戻ることが地方が生きる道であることは、(言葉の定義上からも)明ら
>かだし、都市近郊の環境問題の解決にも繋がるだろうと思います。問題は、どの
>ようにしてそれが可能か、ということだと思います。
>
>・・・ただ、小宮さんの気持ちはよく分かります。都会のジャングルの中で働い
> ているのだから、せめて、休養する時は美しい海に潜りたい。

まあ、僕はどちらかと言うと、どんなに人間にとって不便であっても、もう経済
発展を重視して自然を破壊していくのはそろそろやめようじゃないか、と思った
のです。例え過疎になったとしても、海の中のサンゴは喜ぶかもしれない。もう
いい加減、他地域との競争にあおられて発展発展というよりも、周りに取り残さ
れてもいいから、のんびり暮らせるような街を目指すような所があってもいいん
じゃないか、と。

> 「美しい海」
> を残すような「開発」というか、地場産業の振興というか、、、そういう
> かたちで進めていって欲しい、と思います。陸さん御提案の農業・漁業の
> 復興もそのひとつになるか、と。
>
>みなさん、何かいいアイディアはありませんか?

ここら当たりは難しい問題ですね。実際に地域発展に携わっている方の
話をいろいろ伺いたいと思います。

◯喜多さん
>私はアメリカ,西欧が「何でも良い」或いは「何でも悪い」
>と言う見方でなく(とかく日本人は,特に若い人はアメリカ
>崇拝者,と言うより何でも肯定者が多いのですが柔軟な思考
>を,と思うだけです。

これはあるかもしれませんね。僕はアメリカや先進諸国の政府が、特に
コソボ紛争の空爆を行ってから、まったく信用できなくなりました。
ダイオキシンが他国の肉に見つかったから、といって輸入を禁止したり
している癖に、自分達は空爆で多量の化学物質、重油を流出させ、劣化
ウラン弾でバルカン地域を放射能汚染の危機にさらしておきながらケロリ
としている。それで「正義」だ、「人権」だ、なんて、とんだお笑いぐさ
です。マスコミも「かわいそうなコソボ難民」を報道するだけで、NATO
側の非道な行為はほとんど報道しない。あれ以来、本当に先進国の政府、
マスコミは勝手なものだと思うようになりましたね。

あ、別に僕はアメリカを嫌っているわけではないですよ。それどころか、
アメリカの文化と、他国の人種を笑って仲間に入れてくれる寛容な一人
一人の国民は、大好きです。でも、それなのになんで政治になるとああ
も押し付けがましくなってしまうんでしょうかねえ…。

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yuichiro komiya (小宮祐一郎)
e-mail:can32960@pop07.odn.ne.jp


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