[BlueSky: 3062] Re:3053 知識と実感


[From] misonou@mail.yamanashi.ac.jp (MISONOU Taku) [Date] Mon, 5 Mar 2001 12:29:24 +0900

みそのう@山梨 です

At 1:23 AM 01.3.4 -0500, Sato, Kenji wrote:

>ええ!、「今時の子供は荒れている」って言うのは錯覚なのですか?!

[BlueSky: 3054]で佐川さんが指摘しているように
これは一概に決めることはできない問題ですね.
環境が変わっていますから,それに対する反応も当然変わっているわけで.

>って言う人はいなかったので、小学生で授業にならないなんて
>聞いたときビックリしました。

規範が失われているのは確かだと思います.
先生〜学校というものに付与されてきた「権威」がなくなりましたね.
去年話題になったフクヤマ,F.「大崩壊の時代」(早川書房,2000)は,
社会の中の権威・信頼関係・明示されないルールである「社会資本」が
90年代までにいかにして失われてきたかを解析し,その再生への道を探っています.
一言で言うと,彼の結論は
90年代に入って,アメリカ(とヨーロッパ各国)で見られるようになった
社会資本の再生への動きをさらに推し進めるために,
80年代にもてはやされた無制限の個人主義を(ある程度?)排し,
ヒエラルキー構造を(ある程度?)取り入れた社会システムを構築し,
家庭や宗教の価値を見直して,社会の秩序を回復しなければならない.
ということになるでしょう.
#彼は極めつけの共和党員ですね,きっと..レーガンばりの保守主義にはちょっと
げんなり..

80年代にアメリカ・ヨーロッパが通ってきた社会資本の喪失を
バブル崩壊以後の日本が10年遅れで経験しているという気がしています.
彼らは90年代に入って持ち直した(ように見える)のですが,
さて,私たちはどうなるのでしょう.
#だからといって「神の国」なんていうのを受け入れるわけにはいきませんから!

>知り合いの先生たちから聞いた、大学生のレベルが下がっている
>って言うのも錯覚なのでしょうか。昔からの「今時の若者は・・」
>だと嬉しいのですが。

これは錯覚ではありません.
初等・中等教育においてもすでに規範が失われていますから
勉強することが「いいこと」ではなくなっています.
さらに,例の「ゆとり教育」によって
従来の知識伝達型の授業が減らされていますから
「今どきの若者」には,勉強するということがどういうことなのかを
かわいそうにも知らずに大学に来てしまった人がずいぶんいます.
これは目に余るほどの知識不足以上に深刻な問題だと思っていますが,
それにひきずられて,現実の問題として大学も変質していきます.
小子化に伴う入学者減の上に国立大独立行政法人化による大学の生き残りとは,
要するに「今どきの若者」に迎合していかに口当たりよく居心地のよい4年間を彼ら
に与えるか
を切磋琢磨するという,なんともやりきれない面が強いですね..

たしかに,新しい社会の秩序が必要だと思います.
しかし,これは上から与えられるようなものであるべきではないし,
そのようなものでは第一うまくいくはずもないでしょう.

民主主義の基本に立ち返って
「参加と合意」を基本ルールにするのが理想的だと考えますが
我々の社会構造において,直接民主制はうまく機能するのかどうか..
#気分的には世紀末が続いている..
 

----------
みそのう MISONOU Taku
misonou@mail.yamanashi.ac.jp


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。