[BlueSky: 2990] ブラックバス討論会 (2) 後半の1 ゾーニングと審判のタックル


[From] Kimio OTSUKA [Date] Mon, 26 Feb 2001 20:59:39 +0900

大塚です

 ブラックバス討論会の2部のテーマはとても広く、21世紀の(バス)
釣りと水辺環境利用とのありかたについてといったものでした。

 ここで背景を追加しますが、ブラックバスを駆除しようという動きが
ある(琵琶湖では駆除が始まっています)一方で、バス釣り客を相手に
した産業が既にかなり大きくなっています。こういったこと(特に後者)
を踏まえて、「ゾーニング」が提案されています。バスを駆除するゾー
ンと駆除せずに積極的に利用するゾーンとを分けようというものです。
 駆除派はゾーニングといってもバスの逃げだしや、違法放流を防ぐ手
だてが示されないままでは分布の拡大を止められず、駆除も失敗してし
まうとして反対の立場を示しています。

 以下、このメイルはほとんど<大塚の感想>です。

 残念ながら、上の問題についてはほとんど議論がなされませんでした。
 討論会の前、私は、コーディネータ(司会)が2名ということで、
サッカーで言えばホーム アンド アウェイ(審判の判定などが地元の
ティームに有利になりがちなので、双方の地元で一試合ずつ行うこと)
のようなものだと思っていたのですが、そうではありませんでした。第
1部の瀬能さんは生物多様性研究会側にたった議事の運営をし、バス釣
りの人たちには不満はあったと思いますが、曲がりなりにも(1)に書いた
ように認識の一致点を見つけることができました。したがってバス駆除
派からみれば地元での試合であったと言えます。
 ところが、第2部の天野さんは「先入観を排するために事前に資料調
べをしてこなかった」そうです。本人は中立な進行を行ったつもりかも
知れませんが、サッカーで言えば審判が突然ボールを抱えて走り始めた
り、プレーヤーにラグビー式のタックルを仕掛けたりするといった事態
になってしまいました。

 まずは、審判のタックルから。

 天野さんは「長良川河口堰に反対する会」事務局長、「公共事業チ
ェックを求めるNGOの会」代表ということです。この肩書きからもわ
かるように、公共事業が生態系に与える悪影響に敏感で実際に行動をな
さっています。今年の秋に滋賀県で開かれる世界湖沼会議で「琵琶湖総
合開発計画の総括」を議題として加えることを提案されたそうですが、
却下されたそうです。一方、外来魚の影響は議題に取り上げられたそう
です。
 このためか、「バスばかりを悪者にして、他の影響が隠されてしまっ
ている」という認識をお持ちのようでした。

 まるで、中井さんらバス駆除派が公共事業の悪影響から視線を逸らす
役割を担っていると言わんばかりでした。「審判のタックル」と書いた
のはそのためです。
 開発や汚染の影響は極めて大きく、その点について両者の見解はすで
に一致を見ているわけです。天野さんに限らず「バスばかりが悪者にさ
れている」という被害者意識はバス釣りの愛好家には広く共有されてい
るようですが、(1) で示したような説明がバス駆除派からなされた後で
こんな事を蒸し返しても意味はないと私は思いました。
 わざわざ「バス問題を考える」として両派が立ち会ったのですから、
その場を生かす議事進行がのぞまれたところです。


 「ゾーニング」については議論がなされなかったので、以下は私の考
えです。
 外来の生物を野外に放ってそれを利用するというのは、動物園よりも
サファリパークに近い形態ですが、バスの釣り場の管理はサファリパー
クよりも大変かも知れません。サファリパークのライオンが全て逃げ出
しても、ライオンが個体群を維持することは極めて困難だと考えられま
す。元々の数が少なくて体が大きいので、発信器を取り付けておけばす
ぐに発見することもできるでしょう。命がけになるので、園からライオ
ンを持ち出して余所に放そうという人もまずいないでしょう。
 ブラックバスは大変です。すぐ増えるし、持ち出すのも簡単だし、大
雨が出ると逃げ出します。きっちりとした管理をしてそのコストを利用
者に転嫁したらかなりな高額になるでしょうし、釣りの後に持ち物検査
されることになれば、利用者数はもっと減るでしょう。
 
 以上から私は「ゾーニング」は事業としては成り立たないのではない
かと思います。ペイしようとして管理がおろそかになり、「バスの有効
利用地」が分布拡大の震源地となり、「バスの有効利用」候補地が増え
続けるのが関の山だと思います。
 
 私が日本釣振興会に期待するのは
http://www.jsafishing.or.jp/fishing/fishing_05_01.html
のような努力目標の類ではなく、上記の疑問に答える具体的な事業モデ
ルです。
 それが示せないから、タックルする審判を連れて来たのかな。

 補足しますが、私は天野さんの司会に悪意を感じたわけではありませ
ん。「先入観の排除」のために対立する両者の主張を読まないで臨むと
いうのは一つの見識かも知れませんが、今回は別の先入観のために重要
な論点がおろそかになってしまったと私は感じました。
 琵琶湖総合開発の問題はとても重要ですから、NGO からでも湖沼会議
で取り上げるべきだと思います。100万人署名に参加された方から平均
100円の援助があれば1億円です。たいていの生態学の研究費とは桁違い
ですのでかなりなことができるのではないでしょうか。私も1つ乗りま
しょう。

大塚公雄
東京医科歯科大学


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