[BlueSky: 2989] ブラックバス討論会 (1) 生物多様性


[From] Kimio OTSUKA [Date] Mon, 26 Feb 2001 20:51:45 +0900

大塚です

[BlueSky: 2769]で紹介されたブラックバス討論会に行って来ました。

 はじめにお断りしますが、私はパス駆除派です。報告はその視点から
のものになることは避けられません。釣りは自然を愛する傾向のあるス
ポーツだと思いますので、釣りを愛する方からの報告もお待ちします。


 ブラックバスは、小魚、昆虫、はたまた同種の小さな個体まで補食す
る外来(確かアメリカ大陸原産)の肉食魚です。擬似餌にもよく食いつ
くため、バス釣りが流行しているそうです。この何でも食ってどんどん
増える特性と、釣り人などによる放流(現在は違法)のため、近年国内
での分布が広がると共に、各地で在来の魚やその他の小動物の個体数減
少を招いているとして問題になっています。
 バスの分布は現在も拡大中です。


 ブラックバスなどの外来魚が生態系に与える影響を憂慮し、バス駆除
を訴える人たちからなる「生物多様性研究会」とブラックバスの有効利
用を唱え、公認バス釣り場の開設をもとめる100万人署名をあつめた
「日本釣振興会」の2者の公開討論でした。

 500人ほどが入る会場が用意されたのですが、1000人ほどの人が集まり、
急遽別室を用意して収容し、そこにも討論が中継されました。

 討論会は3部からなり、第1部が生物多様性研究会推薦の瀬能宏氏の
司会による生物多様性に関するパネリストの議論、第2部が日本釣振興
会推薦の天野礼子氏の司会による21世紀の釣り、水辺利用に関するパネ
リストによる討論、第3部が会場からの声も交えた総合討論で各々約1
時間ほどの時間が配分されました。

 パネリストは以下のような方々です。

  ◎パネリスト
日本釣振興会推薦
 清水國明(タレント/自然暮らしの会代表)
 高宮俊諦(財団法人・日本釣振興会常務理事)
 水口憲哉(東京水産大学助教授)

生物多様性研究会推薦         
 秋月岩魚(写真家)
 かくまつとむ(ネイチャー・ジャーナリスト)
 中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館主任研究員)

 第1部は「生物の多様性」についての討論で、もっぱら中井さんと水
口さんの討論になりました。
 ブラックバスの侵入は既存の在来種からなる生態系の構成を変えてし
まうインパクトがあるという点、琵琶湖などでみられる生物の種構成
(どんな種類の生物が各々どれぐらいの数生息しているか)の変化−在
来種の衰退−には、開発や汚染などの様々な要因が絡んでいるが、ブ
ラックバスによる捕食もその一つであるという点について一致がみられ
ました。
 水口さんからは、琵琶湖の種構成についてまともな研究例がなく、議
論はもっぱら漁業統計に基づいていることが指摘されました。ブラック
バスの影響に関する科学的な証明は不完全であるということです。 

 <大塚の感想>
 釣り人の雑誌には、「バスもバカじゃないから餌を食い尽くさない程
度の数で自然に増殖をやめる」などというトンデモな意見が出ていたり
すると聞いていたので、どうなることか、と思っていたのですが、上述
のようにかなりまともで冷静な議論でした。 
 水口さんの「バスばかりが強調されている」という指摘に、中井さん
が「開発や汚染などの様々な問題で弱っている在来の多くの生物にはバ
スの捕食が最後の一撃となりかねないので問題にしている」と答えたこ
とで基本的な見方での一致がなされたと感じました。
 小さなため池のようなところでは、ブラックバスが他の魚を食い尽く
してしまってついには自滅に至るという点も含め、意外なほどに水口さ
んと中井さんの間には対立点が少なかったように思います。
 水口さんが指摘したように科学的な研究が少ないのはその通りですが、
バスがどのような影響を与えているかに関する科学的な調査は、薬の副
作用と同様バス釣りを広めようとする側がすべきことではないかと思い
ました。
 

大塚公雄
東京医科歯科大学


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