[BlueSky: 2958] アメリカの深層心理・イラク空爆に寄せて 


[From] "akira " [Date] Fri, 23 Feb 2001 17:26:36 +0900

こんにちは、akiraです。

ひとつの見方ですが・・・

ぼくはあるひとまとまりの集団、例えば会社とか、
県レベルの地域集団とか、学校とか、さらには
文化集団、民族集団、そして国家、etc...は、
それぞれ固有の性格もしくは人格、パーソナリティ、
自我意識、を持っていると思います。それは一般には
社風とか校風、精神風土とか国民性とか言われますが、
ここで言いたいのはもう一歩踏み込んだ事柄です。

例えば、我々ひとりひとりの人間が、おぎゃーと生まれて
環境世界に投げ出され、固有の遺伝的資質を前提に
固有の経験を内面化し、固有の人格・パーソナリティ・
自我意識・を形成していくように、様々な集団もその誕生
から固有の背景を前提に固有の経験を積んで、固有の
自我意識を形成していくと思うのです。
そして、例えは悪いけれど犯罪者が犯罪を犯すにいたる
筋道を、心理分析官が解きほぐしていくように、国家の
行動についても、心理分析が必要ではないかと思います。

アメリカという個体は、メイフラワー号によるピルグリム・
ファーザーズの漂着によって誕生しました。彼らは建国の
父と讃えられ、今でもその時期には盛大なフェスティバルが
祝われている言います。

彼らは何物だったのか? それは当時のヨーロッパ世界では
抑圧され、迫害された新興宗教の信者たちでした。現在では
それはプロテスタントと呼ばれ、広く一般化していますが、当時は
現代に当てはめてみれば、言わばオウムのような『異端』の徒、
カルト集団に近いものでした。そして、その宗教的熱狂が、おんぼろ
船で大西洋を横断するという暴挙の、原動力でした。

彼らにとって、アメリカへの移住は、モーゼの出エジプト(?)に等しい、
『約束された地』への旅立ちでした。それは宗教的な強固な信念に
基づいた、『神のミッション』だったのです。

新大陸に漂着した彼らを、当初、その大陸の先住民であるインディ
アンは手厚く遇したと言います。白人たちはそこでは幼児の様に
無力でした。何しろ気候も、作物も、水利も、何もかも、彼らにとって
は未知の世界だったからです。そんな彼らに、インディアンたちは
大陸特有の作物の栽培法などを教えたと言います。

白人はなんとか定着することに成功し、少しずつ着実にその人口を増や
していきました。そして、自分たちの力が十分に備わると、インディアンを
殺戮していったのです。

新大陸アメリカは、神によって彼らに与えられた土地でした。それ
以外の何物でも無い神の恩寵でした。そこにのさばるインディアンは
邪魔者以外の何者でもなかったのです。

これが、『アメリカ』という個体が、オギャーと生まれた時に持っていた、
遺伝的素質です。そして彼は、その成長の過程で、ひたすらにインディアン
を駆逐し、殺戮していくという経験を積んでいきます。彼は常に戦場に
居ました。彼は常に戦っていました。アメリカは銃の国と言い、少年が
父から銃を送られることによって一人前の大人の仲間入りをする、
という文化の背景には、常に駆逐すべきインディアンという敵が存在して
いました。

新大陸という約束された土地で、彼らが神から与えられた使命は、地上の
楽園の建設でした。原罪によってエデンという楽園から追放された罪人は
過酷な労働を神に強いられ、しかしその重荷に耐えて、勤勉に労働する
事によって神の請託に答え、その果実を蓄積し、事業を拡大していくことに
よって富を増し、人工の楽園を築くことによって、神の恩寵の証とする。
これが、ウェーバーによって『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の
精神』として解説された、彼らの精神的支柱でした。

そんな彼らにとって、原始的な狩猟採集に甘んじ、あるいは非効率的な
自給的農耕しか知らず、貨幣経済も知らず、「勤勉」という概念も知らず、
土地の私有も知らないインディアンたちは、神の恩寵からはずれた、い
や、神の意志に反する『シラミ』に等しい者でした。
そこには『プロテスタンティズムの倫理と人種差別の精神』とでも言うべき
ものが確かに存在していました。

『神によって与えられたこの大地を、最大限に資源として活用し、豊
かな人工の楽園を築くことこそ、神の恩寵に答える、唯一の道である』
そして、その障害となるものは、神の名において駆逐される。
これが現代に至るまで、一貫した、アメリカの論理です。
(近代法の幸福の追求権も、実はここに根ざしています)

白人達は、ただ、インディアンを駆逐するために、その食料であった
野生動物たちを殺戮していき、死体の山を築きました。
また、病人が使っていた毛布を親切ごかしてインディアンに与え、
文明的な伝染病に対する免疫の無いインディアンは、バタバタと死ん
で行きました。
それは、理知的な冷酷さに基づいた殺戮戦略、の鍛練の場でした。

ヴェトナム戦争で、アメリカはただ憎きヴェトコンを炙りだすためだけに
枯葉剤を大量に散布して、豊かな熱帯雨林を殺戮していきました。
東京大空襲では、アメリカは風向きまで計算して、いかに効率よく住民
(非戦闘員)を殺戮できるか、を計算し尽くして、焼夷弾を落としました。
広島・長崎では、戦後いち早く救護班ではなく研究員を送り込み、核兵
器が人体に及ぼす実際の影響のデータを収集していきました。
それはその後の核の時代の幕開けでした。

アメリカの歴代大統領は、その就任演説で必ず聖書に手を置いて宣誓します。
戦後の日本に厳格な政教分離を強いたアメリカが、実はれっきとした宗教
国家であることは余り意識されていません。

ピルグリム・ファーザーズにとっての『神の意志』とは、まず第一に自分たちの
欲望が満たされ、自分たちが豊かになり、自分たちが幸せになることでした。
その障害になる者は、一言『悪魔』として神の名によって駆逐されていきました。
インディアンはただ幸せに平和に暮らしていただけです。ただ彼らの住んでいた
場所が、白人によって『約束された地』と呼ばれただけでした。

湾岸戦争の時、父ブッシュは聖書を引用しながら、そして神に祈りながら、イラク
へ宣戦しました。フセインはアメリカにとって悪魔の親玉であり、その国民は
悪魔のしもべに過ぎません。イラクを爆撃することは、神のミッションであり、
神の恩寵に答える聖戦なのでしょう。

アメリカが世界を舞台に軍事行動を起こすと、よく『世界の警察』という言葉が
使われますが、これは根本的な事実誤認です。警察とは社会全体の秩序を
維持するために、公益のために機能するものです。アメリカが考えているのは
常に自分とその仲間にとっての利益です。言わば、世界を舞台に自分たちの
利益を守るために、騎兵隊としてインディアンを討伐に行く。これがアメリカの
軍事行動の本質です。

三つ子の魂百まで、と言います。ひたすら殺し続け、奪い続けることによって
成長し続けてきたアメリカには、常に攻撃すべき『敵・悪魔』が必要なのです。
だれが悪魔に幸せな日常生活があるなんて考えるでしょう?

アメリカというひとつの人格、その奥底にはカルト的盲目的熱狂が存在します。
それは極めて利己的な狂信です。

これは理屈以前に厳として存在する無意識の衝動、魂の原風景です。

子ブッシュが大統領になって、湾岸戦争時代の体制が完全に復活しています。
彼は石油メジャーの走狗らしいですね。
現在の市場経済・グローバリズムの進展はもちろん『人工の楽園』の建設プロ
セスそのものです。その楽園とはもちろんアメリカ自身にとっての楽園です。
エコロジストなんぞは、アメリカの意思決定をするマジョリティにとっては『悪魔』
そのものですよ。

軍事と環境、ブッシュ政権が何をするか、見物です。

参考文献⇒『アメリカ・インディアン悲史』 朝日新聞社(でした)
        涙なくしては読めない、アメリカの裏面史です。

akira

追・
ぼくのアメリカについての発言は、過激な印象をもたれるかも知れません。
このような認識はすべて沖縄での生活によって生まれました。
うちなんちゅーは現在も、『悲しいインディアン』としての生を強いられています。

米軍キャンプのフェンスの内側は豊かな白人の都市であり、外側はインディアン
居留地である、と考えると、その本質が分かりやすい。その証拠に平らな一等地
が広大なキャンプとして占有され、坂の多い使い勝手の悪い丘陵地にごみごみと
住宅が密集し、うちなんちゅーがそこに押し込められています。
ただ、本土との兼ね合いで居留地の方が豊かになってしまった。さぞかしアメリカ
のエゴは深層で傷ついているでしょうね。そのストレスが、様々な『事件』の根底
にはある気がします。

もうひとつ蛇足ですが、なぜ沖縄でだけ地上戦が行われ、本土では行われなかった
か。その根底には、アメリカが日本人と沖縄人を明確に区別していた形跡がある。
『勤勉・産業・資本・技術』に基づいて『人工の楽園』を建設する能力において、
日本人と沖縄人とでは雲泥の差があった(と判断された)。日本人は『15才』の人間
扱いをされ、沖縄人は『土人』あつかいされた、という見方も可能でしょう。
その落差が、戦後の占領政策において、本土と沖縄では大きく明暗を分けました。
15才の半おとな、には自治を、土人には支配を、ということでしょうか。

そういえば、イラクの上空に勝手に飛行禁止区域を設定し、経済制裁で兵糧攻め
にする、という戦略は、インディアンを不毛の居留地に無理やり押し込め、ゆるやか

自滅を待つ、という伝統的戦略に、どこか似ていますね。

書き出すと止まらないので、このへんで・・・



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