[BlueSky: 2887] [ 資料 ]  「原発は対象外」と・・東電の発電所凍結で


[From] "Takashi Goto" [Date] Fri, 9 Feb 2001 23:46:01 +0900

たびたび後藤です。

東京電力の種市副社長がした記者会見の要旨が手に入りました。

H13.2.9 新聞各紙に掲載された新規電源開発の凍結について
            種市副社長記者会見(要旨)
      〜最近の電力需要と新規電源開発の凍結について〜


                           平成13年2月8日
                           東京電力株式会社

 当社は、毎年3月末に次年度の「経営計画」を発表し、その中で今後10年間の
電源や流通設備の開発計画を公表しておりますが、平成13年度についても、現在、
発表に向けて最終的な詰めを行っているところです。
 設備開発計画をつくるうえで最も重要かつ難しいのが、今後の電力需要の見通
しです。当社の夏の最大電力は、平成8年7月以後、4年連続で記録更新をしてい
ませんが、冬についても、電力各社が記録を更新するなか、当社だけが、平成10
年1月以来現在に至るまで3年連続で未更新となっています。こうした最大電力の
長期にわたる低迷は、オイルショック時を含めて過去に1度も経験したことのな
い事態です。

 最大電力の伸び悩みの最も大きな要因は、よく言われるとおり、やはり「景気
と天気」です。バブル景気の頃の最大電力はまさに「うなぎ登り」で、年6%近
い伸びを示していました。しかし、バブル景気崩壊後の至近年の回復局面では、
経済成長の低迷とともに、その伸びも1%台になってしまっています。また、天
気についても、夏の高気温の発生日が休日と重なってしまったり、高気温が短期
間しか続かなかったことなどが影響したのではないかと考えています。

 ただここ数年は、そうした「景気や天気」の影響に加えて、需要構造そのもの
の変化が目に見える形で影響し始めているようで、まだまだ分析の途中ではあり
ますが、例示いたしますと、まずガス冷房の増加があげられます。全国のガス冷
房設備は、毎年50万冷凍トンづつ増加しており、この 10年間で2.7倍にもなって
います。このうち当社営業区域のシェアを3割程度とすると、毎年20万冷凍トン
近い増加があるものと考えられます。20万冷凍トンは電気の設備容量になおすと
ほぼ20万kWに相当するので、ここ4〜5年だけで、大型の発電所1基分がガス冷房
に置き換わっていることになるのです。

 また自家発電設備についても、当社が最大電力を更新しなくなった平成8年頃
から急速な勢いで伸びてきており、平成8年度からの3年間で年平均45万kW、合計
で135万kWも増えていますが、これもやはり大型の発電所1基分にあたる規模です。
 電力需要への影響の定量的な分析はこれからではありますが、これらガス冷房
や自家発の普及増が、ここ数年の最大電力に影響を及ぼしていることは間違いな
いと考えています。

 さらに、家電製品などの省エネルギー化や利用形態の変化も見逃せません。エ
アコンを例にとると、消費電力量はこの10年間で半分以下になっています。こう
した傾向は、平成10年に改正された「省エネ法」なども手伝って今後さらに進ん
でいくものと予想しています。

 また、従来、エアコンの普及率と電力需要の伸びは直結していたわけすが、近
年そうした傾向にも変化の兆しが見られます。当社営業エリア内のエアコン普及
率は、平成2年度に100%を越え、11年度には139%、すなわち一家に2台から3台
というに時代になっています。しかしながら、こうした2台目以降のエアコンは、
主に寝室や子供部屋などに設置され、在宅率の高まる夜間の稼働が中心となるこ
とから、昼の最大電力への影響は従来に比べて小さくなる傾向にあるようです。

 以上のような様々な外的要因に加えて、これまで私どもが取り組んできた負荷
平準化努力の成果も、最近目に見えて現れてきています。ピークシフト量は、平
成8年度から11年度までの4年間で114万kWも増えており、これもまた大型の発電
所1基分に相当する大きさとなっています。
 経済の低成長を背景に需要の増勢が鈍化しているなかで、これまで申し上げた
ような需要抑制要因の影響が顕在化してきているため、結果として、この4年間、
最大電力は更新することはなかったということです。

 しかし一方で、供給力の面からは、横浜火力や千葉火力など10年以上も前から
準備・建設を進めてきた電源が、着実に運転を開始するなど、同じ4年間で500万
kW程度増加しています。
 こうした需給状況を踏まえ、現在詰めている平成13年度の設備計画では、
 ・ 当面の需要増加に対応できるだけの設備は確保できており、現行計画のま
  ま電源開発を進めていけば将来的に大きな過剰設備を抱えることにもなりか
  ねないこと
 ・ 経済の低成長や、先程申し上げた構造的な変化などにより、従来に比べて
  低い需要の伸びとなることが予想されること
 ・ さらに、電力自由化で電力市場の競争が本格化するなか、一層のコスト低
  減をはかるには、設備のさらなるスリム化が必要となっていること
などから、当社は現在計画している新規電源の開発計画を抜本的に見直し、原則
3年〜5年、地点によってはそれ以上、電源開発を凍結する方向で検討することと
いたしました。

 各地点ごとの具体的な凍結期間については、今後詳細を詰めたうえで、3月末
にご報告させていただきたいと考えています。各立地点でご協力いただいている
多くの方々には、直接的、間接的にご迷惑をおかけすることになりますが、私ど
もの苦渋の選択であることをよくご説明してまいりたいと考えています。
 電源設備の建設は、計画から運転開始まで、10年以上、ものによっては20年以
上もかかり、当然のことながら、大幅な需要の急増や、複数の発電所の事故やト
ラブルがあったからといって、あわてて発電所を建設しても間に合わないし、深
刻な場合にはカリフォルニアの電力危機のような事態にもなりかねません。

 今回の新規電源開発の凍結は、こうした短期の需要変動リスクにも弾力的に対
応することを前提に、ここ数年の需給ギャップを調整し、将来的に大きな過剰設
備を抱えないようにするための繰り延べであることを、ぜひご理解いただきたい
と考えています。

                                 以 上










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