[BlueSky: 2860] Re:2845 電力自由化


[From] 兼平 裕子 [Date] Wed, 7 Feb 2001 17:27:50 +0900


小宮さん、伊東さん、澤口さん、みなさん、こんにちは。兼平です。電力自由化につ
いてメールがとびかっていてどれに返事をかけばいいかわからないので、とりあえ
ず、小宮さんのメールに対し、雑記を。もしかしたら偉〜い人がいらっしゃって、粗
相があったとしたら相済みません。


> ただ、少し疑問に思う点もありました。まず、兼平さんが言われているように
> 炭素税の導入が簡単にできるか?ということです。電力に炭素税をかけると、
> それは企業の負担になるだけではなく、消費者の負担にもなります。税が
> かかった分、負担の一部が電気料金に転化されるからです。つまり、炭素
> 税は電気料金を引き上げ、自由化のメリットを打ち消す方向に働くのでは
> ないでしょうか?どのくらいの炭素税をかけるか、クリーン電源の効率化が
> どの程度進むかでまた変わってくると思いますが、基本的には景気回復を
> 妨げる日常必需品への税の導入が、そう簡単にいくとは思えません。
>
私が環境に興味をもつようになったきっかけの一つが炭素税です。5年くらい前から
考えはじめて1年がかりで「エネルギー政策の転換を促すための租税制度の再検討−
炭素税の導入をめぐる法的問題の検討−」という論文をかきました。昨年、日税研究
賞(懸賞金めあてです)に入賞しましたが、話題にはなりませんでした(当然か)。

炭素税も税金ですから政府税調での議論にならないと導入は難しいと問いますが、租
税法学者さんはあまり興味がないようです。でも、石弘光さんが税調の会長になられ
たので少しはかわるかなとも思います。ガソリン代も電気代も税金でがんじがらめ、
そのうえ、特別会計に組み込まれているので圧力団体等の存在もありエネルギー税制
をかえるのは難しいでしょうね。でも何とかしなくっちゃ京都議定書の国際公約は絶
対遵守できないだろうと思います。

> 第二に、仮に炭素税が導入できても、電力会社が税によって利益が思うよ
> うに挙げられないことから、市場へ参入しにくくなるのではないでしょうか。
> カリフォルニアの例でも、自由化された後でも、厳しい環境規制などから
> 企業が市場に参入してこず、結果的に電力不足になったと聞きます。安定
> 供給という面からはマイナスになるのでは?
>
炭素税は電源に対して課税するのですから、たとえば、スェーデンのように炭素税に
よってバイオマスの方が化石燃料源より有利となるくらいじゃないと本来のピグー税
として効果は期待できず、単なる増税になってしまいますね。ですから、単に炭素税
導入なんて簡単なものではなく、ガソリン税をどうするか、電源開発促進税をどうす
るかエネルギー税制全体で考える必要があると思います。

> 第三に、電力が自由化された時に、今回のカリフォルニアのような、急な電
> 気の需要に対応できるのでしょうか。自由化のもとでは企業は利益最優先
> なので、むだな電力を生み出している発電所は閉鎖させて、経営の効率化
> を図ると思われます。通常はそれでもかまわないのですが、いざ景気が回
> 復して電気の需要が増えたときに、供給が足りず、電気料金が高騰するの
> ではないでしょうか。

これは供給責任をどうするかってことですよね。電力の公益性を無視した自由化とい
うのは電気という生活に必要な財に対する規制緩和の方法ではないと思います。10
0%自由化となると現在電力会社に課せられている供給責任ははずすべきだと思いま
す。
自由化は、例えば離島とか山のうえのぽつんと存在する山小屋への供給は切り捨て
るってことですよね。効率性追求は、要するに、弱者切り捨てってことです。このよ
うなところへの供給は政府の責任にしないと、民間企業に効率性も公益性も押しつけ
ては両立は不可能だと思います。マイクロガスタービンとか燃料電池が実用化される
とこれらの面で役に立つと思いますが。分散型エネルギー源の普及で自由化の方法も
ずいぶんかわると思います。

> 第四に、炭素税が課せられると、原子力発電の開発が進むようになるので
> は?まあ、これはいいことか悪いことかははっきりとは分かりませんが(ご
> 紹介の資料ではいいこととして書かれてあったように思います)。
>
原子力は50年後にはなくなっていてほしい。でも30年後には無理かな。というの
が私の考えです。原子力は火を使い始めてからの文明の当然の帰着であったのかもし
れませんが、パンドラの箱だったような気がします。
私は基本的には、自然エネルギー推進論者かつ電力自由化賛成論ですが、政策として
原子力があと数十年は不可欠との合意に達するなら自由化の範囲は6000ボルト以
上に限定するなどの方法が必要と思います。

でも、自由化だけを論じて「電気事業法」の改正だけを考えるのではなく、1992
年のアメリカのEnergy Policy ActやEU指令のような「エネルギー基本法」「エネル
ギー政策法」が必要だと考えています。エネルギー政策を考えずに、いまのような長
期エネルギー需給計画で必要な量を満たすために積み上げていくという方法を採った
まま、いくら自由化を唱えても失敗するだろうと思います。

> 市場効果がうまく働かずに、電力供給が不安定になるのではないか、そ
> うすれば、環境問題を後回しにしてでも発電所の乱立が進むのではないか、
> と少し心配です。
>
京都議定書の批准問題が身近になり、原油価格が高騰し、水素エネルギーの実用化が
すすめば違ってくるのではないでしょうか。(それを願っていますし、環境と両立す
るような自由化の方法をもっときちんと探る必要があると思います)

> #アメリカでは、カリフォルニアの電力危機が、他州に波及する可能性が
> でてきたそうです。
>
カリフォルニアに住む翻訳業をしている先輩がひやひやもんだと連絡してきました。
1日中パソコンにむかっている仕事だそうなので。計画停電が突然の停電になった
ら、入力分が消えてしまって泣くに泣けませんね。

kanehirah@kgw.enjoy.ne.jp 兼平 裕子





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