[BlueSky: 279] Re:272 Re:小学生に環境問題をどう教えるか?


[From] "Kaz. Yokoyama" [Date] Tue, 03 Aug 1999 17:19:30 +0900

多田さん,陸さん,巖さん,MLのみなん

横山@土壌微生物生態研究室.農環研です。

> ここまでのことをまとめて「安全でおいしい食事の理想」を各人がつくることを5
>年生の最終目的にします。

子供の頃に,真面目に「農」を体験されるころは非常に大切だと思います。
そうすれば,スーパーに並んでいる綺麗な野菜が如何に不自然か,傷一つない
野菜を求めることが如何に不合理かを実感できるでしょう。

これだけでも,食べ物を外見上美しくするために用いられている大量の化学農薬の
削減に繋がります。大規模産地では,白くてシミのない大根を作るために山一つ
塩素や臭素ガスで土壌消毒するんですよ。

現在,農水省と地方自治体の試験研究機関はIPM(総合的有害生物制御技術)確立
に向けた共同研究事業「総合的病害虫管理実証事業」及び「環境付加低減のための
病害虫群高度管理技術の開発」で現在の化学農薬使用を半減するための技術開発を
行っています。

> 農薬も化学肥料も使わないで結構おいしい野菜を作ることができます。子供たちが
>好きな野菜を思い思いに作ってみるのもよいでしょう。また、安全に気を付けて生産
>している方(野菜・肉・魚?)を探して直に購入してみるのもよいかもしれません。
(後略)

その上で,無農薬,有機栽培にどれだけの労力がかかり,それでどれだけの人間の
食料を養うことが出来るか,日本の食卓の豪華さを賄えるかなどを考えて欲しいと
思います。そのためにも,花壇感覚ではなく,食料生産として「農」を実感して欲しいと
希望します。

合わせて,日本には1億2千万人の人が住んでること,農業就業者の4割が「昭和一けた
世代」で占められていて農家の平均年齢が60歳を越えていること,その平均年齢が毎年
高くなっていること(1995年日本農業センサスより)なんかも教えてあげて下さいね。

>★奈良県の川口由一さんは、耕さない、追肥しない、農薬を使わない、という方法で
>農業を営んでおられます。これは、続ければ続けるだけ土地の生産性が高まるのです
>が、最初の3年間ぐらいは収穫が少ないので今回の多田さんの授業には使えないと思
>います。ただ上述のような「食べ物」による学習を今後も続けてゆくお気持ちがある
>ならば、この不耕起農法はお奨めです。この方法の詳しいテクニックについては、個
>人的にお尋ねいただければと思います。

仕事上も有用な情報を有り難うございます。訪ねてみます。
私もこういう農業のプロ(大阪では農の匠として表彰されています)を何人も知っていますが,
彼らの研鑽は凄いものがありますね。本当の有機農法は実は手間とエネルギーがかかって
います(化学農法はそれを短絡しようとしたのでしょうけど持続性に問題が有りすぎましたね)。

→巌さん
追肥はしないが堆肥とかの有機の元肥はたっぷりと言う意味じゃないですか?
時々こういう簡単な収支計算を度外視した魔法のような農法を提唱される方がいますが,
(○○菌で無肥料でも化学肥料の3倍収穫できるとか)これは明らかにオカルトの世界
ですね。

Kazunari Yokoyama, Ph.D.
Soil Microbial Ecology Lab.
National Institute of Agro-Environmental Sciences, Japan
Phone:+81-298-38-8300
Fax:+81-298-38-8199


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