[BlueSky: 2594] Re:2591 金銭コストとカロリーコスト


[From] Akira・M  [Date] Sun, 17 Dec 2000 00:39:58 +0900

こんにちは、akiraです。

葛貫さんwrote:
> 輸出入等により、疾病が短時間で広範囲に広がり、収拾がつかなくなって
> しまう。経済性とリスクとの擦り合わせで決まることになるんでしょうが、
> ものの流れの収支決算は、なるべく狭い範囲でつける方が無難な気が
> します。何で、地球規模で物を動かさなければならないか、誰が得をする
> のか、よくわからないです。

よく使われる言い方に、「コストで太刀打ちできない」というのがありますね。
曰く、中国は人件費が安いから、生産コストではとてもかなわない、とか。
この場合のコストとはもちろん金銭コストを意味します。葛貫さんが言われる
経済性も、この貨幣経済における効率性でしょう。

でも、よく考えてみると、この貨幣経済とか、為替レートとかって、極めて曖昧な
根拠の怪しい代物で、それは、例えば東京で大地震でも起こって日本経済が
破綻すれば、諭吉さんは世界中で単なる紙切れになってしまう、と言う事を考え
れば、よく分かります。
つまり、貨幣経済とか、貨幣価値とかいうのは、人間社会のある任意の場所と
時間において、恣意的に決められた、ひとつの仮想にすぎないという事です。
中国人が藁を集めたって、日本人が藁を集めたって、労働量はたいして
変わらないはずです。それが、「貨幣価値」という尺度で計ってしまうと、
雲泥の違いが表れる。
どこか、おかしいですね。

これは、以前誰かが言っていた様な気もするのですが、貨幣経済コストに代わって、
消費カロリーコストで物事を計ってみると面白いと思います。
一束の藁束が酪農家の手元に届くまでに、どれほどのカロリーコストがかかっている
のか、中国から輸入する場合と、日本で地域的に自給する場合について計算して
みるのです。
これは、例えば、100gの蕪が消費者の手元に届くまでに、どれだけのカロリー
コストがかかっているかを、江戸時代と現代とで比べてみたりするのも
面白いですね。これをやってみると、現代の農産物は石油化学工業製品だとい
うことがよく分かります。

いわゆる、自然生態系には、貨幣経済論理などというものは存在しません。
彼らは基本的にカロリーコスト、つまり、植物によって同化吸収された太陽エネル
ギーをいかに浪費しないで蓄え、地域内で循環させ、個々の活動を維持
していくか、という論理で動いています。

為替レートにしてもそうですが、いわゆるグローバリゼーション経済というものは、
基本的にアメリカを中心とした先進国が、いかに快適に消費にふける事ができるか、
というのをモチベーションとして構築されています。
そこを支配しているドグマは、「人は消費すればするほど幸せになれる。浪費すれば
するほど豊かになれる」というなんとも非論理的なものです。
「浪費すればするほど、豊かになれる」これって日本語としておかしくないですか?
正しくは、浪費すればするほど貧しくなる、のはずですね。
こんなことは小学生でさえ分かりそうなものですが・・・ 

日本の田んぼでせっかくの稲藁をただ燃やしてしまって、中国から輸入する。
これは、貨幣価値で考えるから経済的だけど、カロリーコストで考えたら、
極めて不経済です。

繰り返しますが、自然生態系はカロリーコストの収支によって成り立っています。
貨幣経済コストなどというものは、人間社会の内部でだけ通用する仮想であって、
それは、自然生態系の論理と真っ向から対立する、というより、その存在を完全に
否定すらしかねないものです。

そういう視点から環境問題について改めて考えてみると、面白いかも知れません。
原発とか、温暖化対策とか、自然に優しいテクノロジーとか、まず、
カロリーコストで考えて見るのです。

それでは。









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