[BlueSky: 2595] Re:2586 COP6


[From] "ICHINOSE,Takeshi" [Date] Sun, 17 Dec 2000 01:21:48 +0900

一ノ瀬@尼崎市です。またまた、RESが遅れてしまいました。しかも長文。

小宮さん<
後、いくらか思いついたことを。
1発電技術の効率の基準を決めるときに、原子力発電をどのような
 扱いにするか?
2技術が進んだ国ほど何もしなくてもいいということになるが、そ
 れで多くの国が納得するか?
3途上国にとっては、公平というのは現在の排出量のみのことでは
 なく、過去の排出量すべてを換算した提案のことではないのか?
4他国への省エネルギー技術の無償提供ができるか?(技術の提供
 にお金がかかるようであれば、発展途上国が合意するとは思えな
 い)
5各国の利害関係を乗り越えて、世界レベルで協力しあうことが可
 能か?

 温暖化ガス排出削減は、それ自体が非常に利害が複雑に絡み合って
実現困難になりがちな課題です。温暖化ガス排出削減以外の要素は、
出来るだけ取り込まないようにすべきです。
 別の課題は、別の場を設けて、そこで議論すればいい。
 これが、私の基本的な立場です。

 上の、1から5の指摘について、以下、コメントします。

1:電力は最も難しいと、私も思います。3通りの案を提示できます。

a)火力発電に限定して、その効率に達成目標を設ける。
b)発電方法を区別せずに、効率達成の目標値を定める。達成方法は、
各国がその国の実状にあった方法で進める。水力発電の好適地が多
い国は水力発電所を増設し、原子力利用を国是としている国は、原発
の増設で達成する。原発廃止の方針で、しかも自然エネルギーの利
用が限られている国は、炭酸ガス排出が少ない方法で発電された電
力を他国から買ってくることで、目標を達成する。
c)火力、水力、原子力、その他、の発電に伴って発生する様々の(温
暖化ガス排出以外の)環境負荷を、共通の尺度になるよう数値化して
、その総量に対して規制を書ける。炭酸ガス以外の環境負荷因子も
考慮できるが、この方法自体が、炭酸ガス排出削減の抜け穴になっ
てしまう恐れがある。
 
 個人的には、b)案か、その修正版が良いと思います。
 原子力発電について言えば、廃止すべきだという合理的な理由を、
私は見つけられません。
 ドイツなどは、原子力発電所の新設を止めるそうですが、私は余り
評価していません。結局の所、迷惑施設であるから”止めよう”という
動きになっているわけで、NIMBY的な意志を感じます。原子力を停
止して、その幾分かでも火力で補って炭酸ガスの排出が増えるとし
ても、地元では痛くも痒くもないのですから。


2:「省エネ技術が進んだ国ほど何もしなくてもいい」というのは、当た
り前のことで、何もしてこなかった国がペナルティを負う仕組みにしな
ければ、わざわざ苦労して省エネ技術を広める国はなくなってしまい
ます。
 また、例えば1兆円分のカネとモノを投じて省エネ技術を導入する
場合、省エネ技術が進んだ国よりも、導入が遅れている国に使った
方が、より多くの排出を削減出来るのは自明のことで、世界レベル
での資金と資源の効率的な利用という面から考えても、合理的です。


3:過去の排出量については、COPでは一切議論すべきではありま
せん。歴史論議に拘泥する事が、直面する当面課題の解決について
、如何に不毛なものであるか、今更指摘するまでも無いことだと思い
ますがいかがでしょうか。仮に、一部途上国が問題にした場合、過
去の排出の結果として蓄積されたところの資金と技術の提供は、一
切拒否すればよろしい。
 更に言えば、過去の排出は今の先進国の責任が大ですが、21世
紀は発展途上国が大部分を排出することになるでしょう。途上国に
おける人口の爆発的な増加を考えれば、最終的に温暖化にトドメを
刺すのは、現在の発展途上国になる可能性が大です。本来は、途
上国の側からも「我々は(排出量は増やすかも知れないが)この程度
までに抑制して、温暖化を回避する積もりだ」というような方針が示さ
れてもおかしくはない。むしろ途上国は、他人の「過去」をあげつらう
ことで、自らの「未来」に対する責任を回避しているように思われます。
 根本的な話として、「過去の排出量」の話を途上国が持ち出すのは、
「1990年を基準にして削減」という圧倒的に途上国に対して不利な
ルールに対する反発に大きな原因があります。もしもこんなルールを、
将来途上国に対して適用されたら大変なことになると、不安に思うの
が当然です。「効率」を基準にするならば、わざわざ途上国が「過去
の排出量」を持ち出して反対する必要性は薄まります。


4:例えば、先進国が炭素税の一部を供出することで基金を作り、そ
こから特許使用料等を支払わせるようにすればよいと思います。炭
素税の供出は、ゆくゆくは全ての国に広げるべきでしょう。
 「排出権取引」などという、極めて怪しげなものに対してすら、どん
欲そのものの先進国の企業がカネを払おうとしています。ルールさ
え明確にしておけば、カネは出てきます。


5:利害関係を乗り越えるためには、出来る限り公平なルールを打ち
立てることが、最も重要です。「各国の利害関係」が今のCOPで問
題になっているということは、”公平なルールを打ち立てられていない
”事を示しています。


以上


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。