[BlueSky: 2556] Re:2549 人間の quality


[From] "akira " [Date] Wed, 6 Dec 2000 10:29:24 +0900

こんにちは、akiraです。

葛貫さんwrote:
> エネルギーを費やして整理整頓しなければエントロピーが増大してしまう
> ように、動機となるユートピアのヴィジョンを与え続けなければ「人間の
> 劣化」は進んでしまうものなのでしょうか。
> #「ユートビア像を与える」という言い方は、如何にも調教っぽい教育の
> #方法のようで、ちょっと違う、と思うのですが・・・・・。

人間とは何か、という問いに対して、様々な答えがありました。
考える葦であるとか、道具を使う人であるとか、二重に賢い人とか・・・・
そんな中で変わり種は、人間、特に文明人は自己家畜化する動物である。
というのがあります。
つまり、自分の周りにひたすら心地よい飼育舎を構築していく、その、巨大な
zooが都市文明だというのです。

ブタはイノシシを家畜化したものだといいます。家畜化されることによって、
剛毛や鋭い牙、突き出た顎などは退化してしまい、あのつるんとしたブタに
なりました。が、ひとたびそのブタが野生化すると、わずか一世代、つまり
子供の代には、イノシシの特徴を取り戻すといいます。

生物が適応するという事はある意味すごく合理的な事で、ブタでいても
生きていられるからブタになるのでしょう。
ということは、優秀でいる必要がないから、人間も劣化するのかも知れません。
その、鮮やかな実例が阪神大震災でした。日頃評価の低い「今時の若者」達が
目の覚める様な働きをしました。つまり、潜在的には何かやりたいし、できるので
す。けれども、日常的にはあまりにも周りの環境が恵まれすぎている為に、
その可能性の芽が摘まれてしまっているのでしょう。
それが、「非常時」に直面して、見事に有能な「先祖返り?」、をしました(笑)
ナスの剪定をすると、勢いのいい新芽が吹き出して来ますが、これは、負荷を
与えて安眠を覚ます事によって、生命力を活性化させる、常套手段です。
何か、非常時という形ではなく、我々にも適切な負荷が必要なのかも知れませんね。

ここでまた仮想現実に戻るのですが、
「代償行為」としての仮想体験、と言う視点も考える必要があります。
最近、20代後半から30代の高学歴高収入と言われる独身男性の間で、
このまま優雅なシングル生活をエンジョイし、セックスはAVで十分だという
傾向が強まっているそうです。
この、バーチャル・セックスの進化・普及による、リアル・セックスの衰退という現
象は、これからますます大きな社会問題になっていくでしょうし、非常に示唆的
だと思います。

というのは、
テレビゲームの中で、ひとつの代償行為として、様々な困難をクリアしていく、
それに慣れて、それに適応してしまうと、現実に対する関心が磨滅して、
現実世界の中で困難を受け止め、それを乗り越えていくという意欲と能力が
減退してしまうのではないか? という恐れです。

もっと端的に言うと、AVオタクのオナニストが生身の女性に対して意欲をなくす様
にRPGなどの自慰的な仮想世界に溺れて、人生そのもののオナニストになって
しまった子供たちが、様々な困難や苦痛、試練に満ちた生身の「生」に対して、
去勢されてしまうのではないか、ということです。

推定100万人とも言われる「ひきこもり」もそうですが、人生そのものに去勢され
てしまうというこの現象は、これから、決して無視できない社会の病理として、
問題になっていくと思われます。
仮想現実の過剰な進歩と普及には、そんな危険性もあると認識すべきでしょう。

また単語の選択で叱られそうですね(笑)
ですが、一見過激な言葉の奥に、どのような意味があるのか、何を言わんとしている
のか、深く見つめていただけば、ぼくの真意が理解されると思います。

それから、
佐川さんwrote:
>TVなどで、アマゾンやイリアンジャヤの原住民の生活が紹介され
>ます。それらの放送を見れば解るのですが、彼らの生活に占める
>「生産」の時間は我々が思うほど多くはなく、以外と暇にしてい
>るんですよね。
テレビというバーチャルな窓口を通じて、瞬間的に彼らの生活を覗き見するという
「経験」によって得た佐川さんの「意外と暇」という認識はとても示唆的です。
彼らの生活の実感は、彼らの一員として実際に主体的に生きて見なければ、
経験、も、理解、も、できないと思いますよ。
おそらく、彼らのボキャブラリーの中には、「暇」という単語も、「生産」という単
語も存在しないでしょう。ひょっとしたら、文明的な「時間」という観念も・・・・

それでは。






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