[BlueSky: 2407] Re:2397 永田農法について ( 長文)


[From] "yukio/sanae ikema" [Date] Wed, 27 Sep 2000 23:41:00 +0900

こんにちは。
沖縄県は宮古島在住の池間です。
職業は農業改良普及員です。

中澤様 wrote:
> 中澤@東京大学人類生態です。
>
> 先日,飯田辰彦「蘇るおいしい野菜」(宝島社新書)という本を読
> んで,永田農法という農法を知りました。
(以下省略させていただきます)

申し訳ないのですが永田農法については
不勉強でして、どういう内容か知りません。
さっそく本を読んでみたいと思います。

元メールとは、かけ離れてしまいますが
持続可能な農法について
私見と当地の取り組みを書きます。

結論から申しますと
環境負荷が少ない持続可能な農法というのは
その地域の伝統的な農法を
取り入れられる部分については
復活させることではないかと思っています。
伝統農法が廃れたのはそれなりの理由があるので
丸ごと礼賛はできませんが。

というのは農業者の皆さんが無理なく
継続的に行えるのでなければ
いかに環境負荷が少なく良質の生産物ができる
農法であってもみんなが真似できないと思うからです。

以下は現在当地で行っています取り組みで
かなり長くなりますので
興味のない方はどうか割愛して下さい。
 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  * 
沖縄の農業は畑作中心で
基幹作物はさとうきびです。
県農業試験場の経営研究室で試算したところ
運輸や雇用等の波及経済効果を
約3倍と算定していました。

さとうきび作におlける問題の一つに
作付けされていない期間の
耕土の流亡があげられます。

例えば宮古島における
さとうきびの作付けが行われるのは
収穫面積のほぼ9割方が
夏植えと言って8月〜11月に行われ
その年の冬を越し翌年の冬
1月〜5月頃に製糖期になります。

こうして見ると
収穫後の3月から次回の植え付けまでの
期間は畑が空くことになります。
緑肥作物栽培したり
後作に野菜を作っている方もいますが
裸地のまま放置する方もおります。

沖縄本島では2月〜3月植付の春植えが多く
収穫後は耕起せずそのまま株出しをして
再度収穫するケースが多いものの
梅雨時の土壌流出による
海域汚染が問題となっています。

その背景には
県では「赤土流出防止条例」を制定して
建設業者には公共工事における対策を課しましたが
コストに反映できない農業者は取り残される形となりました。
農業による環境破壊がクローズアップされてきたのです。

ちなみに
県内で農業以外に従事している方々に
「赤土流出防止について、農業者だけでは負担しきれないが
いくらなら赤土対策に出費しても良いか」という
アンケートをとった方が居るのですが
年間3,000円程度なら可能という回答が
多かったそうです。

宮古島は痩せ地であるため
以前は食糧及び家畜の飼料確保の目的で
さとうきびの後作に大豆や下大豆、富貴豆等の
マメ科植物を植える習慣がありました。
収穫後は畑に鍬込みを行っていたので
マメ科植物による窒素固定や緑肥鍬込みによる
有機物還元を経験的に知っていた
先人の知恵といえる事例がありました。

豆の収穫は大変なのですが
このたびある地区で展示的に
さとうきび収穫後に大豆を輪作してもらう畑を設け
地区の中核的な農業者には
有機物還元及び雨期の土壌保全になるという
良い点を見てもらい
高齢者や女性のグループには
地域の材料にこだわった
味噌造りに取り組んでもらおうという
計画を立てています。

その味噌を商業ベースに乗せるためには
地元の材料だけ使っていたのでは
引き合わないことは目に見えていますが
他からの材料の配分を変えて
価格に反映させるのも一手かと思っています。
 *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  
一寸話を変えまして
病害虫防除についてですが
耕種的防除法が意外な効果を上げることもあります。

またまた
さとうきびの話で恐縮ですが
宮古島では例年
土壌中に生息するコガネムシ類の幼虫が
根を食害して深刻な立ち枯れ被害を起こしているのですが
農業試験場の調査によると
さとうきびの収穫後なるべく早いうちにロータリーで砕土すると
害虫密度を75%も低減できることが分かり
地域に呼びかけましたところ
食害の発生したほ場や
収穫後の後作をするほ場を優先的に刈り取るなど
製糖工場、農協等関係団体からも大きな協力が得られました。
環境負荷の少ない農業についての模索が
少しずつ行われ始めているところです。

めちゃくちゃ長くなってしまいました。
すみません。
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沖縄県宮古農業改良普及センター
   総合普及課    池間 早苗
yikema@cosmos.ne.jp



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