[BlueSky: 2291] 農林水産業の多面的公益機能 Re:2286 青刈り


[From] "SUKA, Takeshi" [Date] Wed, 30 Aug 2000 21:46:50 +0900

みなさん
     須賀です。

葛貫さん:
> 机上の空論という言葉がありますが、現場を知らないで、理屈こねて
> ごめんなさい。

わたしもよく机上の空論をもてあそびますが(笑)、実際の社会もことば
のやりとりでかたちづくられた現実の理解のしかた(机上の空論になりや
すい)を「現実そのもの」と勘違いして動いていくことがよくあるような
気がします。それを現実にひきもどすためにも、ことばのやりとりを重ね、
認識をあらため、きたえあっていかなければならない。矛盾してますが、
しょうがないですよね。

葛貫さん:
> 様々な立場の人がいるのですから、佐川さんが【2020】で書いていらした
> > 私にとっての「普通」、貴方にとっての「普通」を提示し合うことで私たちの
> > 社会がどのような姿をしているのかが、よりハッキリと見えてくるのではな
> > いかと、私は考えているわけです。
> という働きができ、それぞれが自分の場を見直す契機になれば、それで、
> よしなのでは、とも思えました。

そうですね。現代の環境問題のように複雑にものごとがからみあって
当事者の立場がいろいろ錯綜してくると、自分のことを考えるのにも、
ほかのひとたちのことをいろいろ知らなければならなくなってきてし
まいます。めんどくさいですね(笑)。

葛貫さん:
> 理想主義者だと笑われるかも知れませんが、自分の足場がよくわかっ
> た状態で、意識的に負担するようになった方がいいのでは、と思います。
> 「農林水産業の多面的公益機能」は、須賀さんが【2239】で仰しゃっていた
> 「民族生物学的多様性」とも関係があるように思われました。

そうですね。でも問題のとらえ方が的を得ていて、問題解決を本気で考える
なら、理想主義者だと笑われる態度をひきうけることが現実問題として必要
になってきてしまうのではないでしょうか。まあ、それをひきうけるかどう
かは好き好きという面も大いにありそうですが(笑)。

しかし自分で紹介しておきながら日本語で「民族生物学的多様性」という
単語だけをみるとドキッとしてしまいますね。もっとも葛貫さんは誤解なく
つかっていらっしゃると思いますし、(「人種」ではなく)文化の多様性
を尊重しあおうという流れの議論を紹介するなかでつかわれていた英語を
直訳したものですから、偏狭な民族主義を叫ぶために提唱されている概念
ではないのですが。わたしたちの意図とは別に、民族とか文化といったも
のが潜在的にはらんでいる対立のあやうさを思いがけないかたちで感じさ
せられた気がします。

市場経済主導ですすむグローバル化に反対する動きが最近注目をあつめる
ようになりました。国際政治の舞台でグローバル化が大きな問題として
浮上してきたのは冷戦の終結とふかい関係がある、と国際開発援助にくわ
しいある方にききました。その方は、市場主導のグローバル化がもたらす
弊害に対抗するものとして、もうひとつのグローバル化(政治・経済グロ
ーバリゼーション)の役割を重視しておられました。環境、人権、社会開
発、人口、女性、食糧安全保障などがその主なテーマです。主要な担い手
は、NGO、国連機関、世界銀行、二国間援助機関(日本のJICAなど)、
多くの途上国政府など、だそうです。グローバル化反対の動きにくわえて、
ふたつのグローバル化の対抗関係という視点をいれて考えると、このへん
の力関係もいっそう興味深いものとしてみえてくる気がします。

「農林水産業の多面的公益機能」の維持という主張も、グローバル化
反対という立場だけでなく、市場のグローバル化に対抗するもうひとつ
のグローバル化という立場につながってくると、思いがけない展開が
でてくるんじゃなかな、と思ったりします。というのは、日本では、
農村はグローバル化反対、都市住民は市場グローバル化に適応せよ!
という対立構造になっているような気がしますので(単純化しすぎ
です、ハイ)。何がいいたいのかというと、日本の環境を考えるとき、
地球のほかのさまざまな地域の環境を考えることとどうつながって
いけばいいんだろう、というようなことです。

またまた思いっきり空論をもてあそんでしまいました。
だれか現実にひきもどしてください(笑)。





Takeshi SUKA
Nagano Nature Conservation Research Institute (NACRI)
E-mail: suka@nacri.pref.nagano.jp


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。