[BlueSky: 2224] Re:2223 自然の価値


[From] yuichiro komiya [Date] Thu, 17 Aug 2000 18:57:11 +0900

こんにちは、須賀さん。小宮です。


> 人間中心の世界観か、それとも非人間中心の世界観か。たしかに、
> 進化論や生態学の発展は、近代に発達した人間中心の世界観を徐々
> にきりくずしてきました。でもこれは、ものごとがこう「である」
> という科学的な事実の認識のレベルの話です。それに対しものごと
> をこうする「べき」であるという話は、価値観がはいってくるので、
> 人間社会の問題になり、社会的な対立や調整、合意形成などの話に
> ならざるをえないところがあります。そのような問題である以上、
> 「人間にとっての自然」という前提での議論がメインになるのは
> さけがたいことだろうと思います。


これは僕の偏見なのかもしれませんが、「人間にとっての自然」と
いう考え方は比較的最近出てきたものなのではないでしょうか。
昔は自然そのものに価値を認め、人間の利益にならなくとも自然
は守らなければならない、という考え方が主流だったと思います。
それが今のような人間の利益を第一優先させる、環境問題にベネ
フィットという価値観を用いる、という風に変わってきたのは、ダー
ウィンの進化論の影響が大きいと思います。

ダーウィンの進化論より生じた社会ダーウィニズムは、自然淘汰
、弱肉強食という概念によって社会的に強者がなにをしてもそれは
自然なことだという価値観を広めたのではないでしょうか(もちろん
当のダーウィンはそういう意図はまったくなかったでしょうが)。環境
問題もその影響を受け、自然自体に価値があることを認めるという
立場が弱くなっている気がします。自然においては弱者が淘汰され
ることは当たり前のこと、自然の摂理なので、人間が環境破壊して、
種を絶滅させてもそれはなんら自然なことだと。そういう考え方に
おいては、自然保護を考える場合は人間の利益のための自然保
護、という見方しかできません。しかし、僕は本来環境を守るという
意識は、そういうベネフィットの理論で語られるものから生まれてく
るものとは思(価値観の違う人との話し合いにおいてのものさしには
なるのでしょうが)。人間は他の動物にない高い共感能力を持って
いるので、他の動物と異なり、血縁関係にない人や他の生命に対
しても利他行動をとることができます(と僕は思います)。本来、自
然を守る、絶滅種を保護する、というのは、この人間の共感能力か
らくる、他の生命をいとおしむという、人間の本質的な性質なのでは
ないでしょうか。ですから、害虫を保護しないということに疑問を持た
れた学生さんも、そういう人間に不利益になる種は保護しない、とい
う人間の利益中心の考え方に疑問を持たれたのではないかと思い
ます(実際はそのような観点から害虫が外されたのではないみたい
ですが)。


> ところで、人間の価値と自然の価値のどちらに重きをおくかという
> 「べき」の話にも、実は2つの異なった議論が混在しているのでは
> ないでしょうか。人間の命の重さと虫の命の重さを同等にあつかう
> という価値観を(個人の想念や美学のレベルではともかく)社会の
> ルールとして確立するのはたぶん不可能にちかいでしょう。しかし
> 「人間が意図的にこしらえたもの」と「自然界にもともとあるもの」
> のどちらが人間にとって価値あるものか、という話になると、議論
> はぜんぜんちがってくるはずです。

自然の価値の判断というのも難しい問題なのですね。実際様々な
公共事業や開発において、自然の価値というものは日本では低く
見積もられがちなのかもしれません。

そういえば、僕が以前読んだ本にこういう例が載っていました。

飛行機が遭難して、ある旅行者が無人島に漂着する。その無人島
には絶滅種である美味のペリカンと、栄養はあるが不味いバナナし
か食物にするものはない。さて、漂流者はどのような行動をとるか?

(1)絶滅種のペリカンを食べて生き延びる
(2)バナナを食べて生き延びるが、バナナがつきた場合のみペリカ
ンを食べてもよい
(3)バナナがなくなっても、ペリカンを食べてはいけない

(1)は人間の生活の質の向上のためには種を絶滅させるのもしか
たないという立場。(2)は個人の人命のためには種を絶滅させるの
もしかたないという立場。(3)は種の保存は個人の人名に優先する
という立場(上記例では(3)の食べないで飢え死にとういのはあまり
にも非現実的ですけど、本当はもっとうまい例を使われています)。

まあ、この場合でもうまく全てのケースに対応できるわけではない
でしょうけどね




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