[BlueSky: 2118] Re:2117 ウイルス進化論


[From] Akifumi Murase [Date] Mon, 03 Jul 2000 13:13:59 +0900

邑瀬です。

葛貫さん:
> 薬剤耐性もプラスミド経由で獲得されることがあるそうです。
> 学生の頃、同じ研究室の仲間が、難分解性物質の分解菌からプラスミド
> を取って、分解能を持たない菌に移植する実験をしていたのを思い出し
> ました。そんなに難しい操作ではなかったような・・・・・。

実験室では、細菌を人為的に形質転換を行いうる細胞(competent cell)にす
るので、自然界でもまったく同じ機構で遺伝子のやりとりが行われているかど
うか分かりませんが、自然界では我々が想像している以上に頻繁に遺伝子の水
平伝播が行われているようです。

そうすると、細菌の種という概念自体が(バイオリアクターなどごく狭い範囲
内を除いては)あまり意味がないことになります。かつては生化学的な性質も
とに行われていた細菌の分類は、最近では rRNA の配列による分類に変わりつ
つあります。(塩基配列が確か80%同一であれば同じ種とみなしていたと記憶
しています。)この分類法は rRNA(rDNA) は水平伝播しないということを前提
にしています。ところが、分類上まったく別の rRNA を人為的に移植しても問
題なく機能するという実験結果があります。つまり、rRNA(=分類の指標)が
水平伝播したとしても見た目には分からないということを意味します。

したがって、自然環境というマクロなレベルで論じる場合、どういう分類の細
菌がどれだけいるという捉え方には限界があると思います。様々な機能をコー
ドした遺伝子プールが存在し、細菌(細胞)はそれらを包むカプセルに過ぎな
いという捉え方を私はしています。つまり、遺伝子プール内において遺伝子の
種類自体は変わらず、環境条件によってどの遺伝子が台頭してくるかが違うだ
けで、その他の遺伝子は環境が変化したときの予備軍として密かに受け継がれ
ているのではと思います。


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