いわお@桃山です。
Minato Nakazawaさんが00.6.27 2:55 AMに書きました:
>しかし,Lancetの報告の骨子は,導入前のポテトとGNAを同時に与
>えた場合と,GNA遺伝子を導入したポテトを与えた場合を比較して,
>小腸粘膜などで統計的に有意な差を検出したという点にあり,実質
>的同等性に抵触するだけでなく,GNA単独の効果では予測されえな
>かった副作用が出たことが問題なのだと思います。
このLancetの遺伝子組換えポテトの論文に関しては、かなりの批判がでてい
るようです。Science Vol. 286 22 October 1999 p.656 にこの論文に関する
記事がでています。これを読んだだけでは、どのへんがひときわ問題なのかよ
くわからないのですが、
・組換えと関係ない、ポテト自身の栄養の差で生じたかも知れない。
・サンプルサイズが6匹であり、少なすぎる。
・タンパク質のない食事を続けた状態はこういう実験に不適当。
などの批判があるそうで、「こんないい加減な論文がLancetに載るなんて信じ
られない。売名行為ではないか。」という論調です。
むろん、Scienceは一貫して遺伝子組換え技術を肯定的に載せ続けている雑
誌ですから、そういうバイアスがある可能性も考慮しなければなりません。
もともとこの論文の著者のPusztaiは、論文が発表される1年前に、遺伝子
組換えポテトがラットの成長を抑え免疫系を阻害する、ということをテレビで
発言したことで注目と非難を受けたのでした。論文でその成長や免疫のことは
触れていない所を見ると、その時点で確固たる科学的証拠はなかったのでしょ
う。そういう前科があるために、この論文もキワモノ扱いを受けているのです。
なにしろ、厳密な実験をもっともっとやってもらいたいものです。ただし、
絶対に安全であるということは証明できないのであり、どこまでやって問題が
なければ許容するか、という上限のようなものがあるべきだ、とも思います。
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