[BlueSky: 1918] Re:1699 中山間地農業 農薬空中散布


[From] fnemoto@agri-exp.pref.fukushima.jp [Date] Fri, 28 Apr 2000 10:44:08 +0900

はじめて、メールします。

根本と申します。

農薬の航空散布の問題について
議論になっているようなので、
(といってももう2週間近く前のようですが)
あえて書かせていただきます。

> 秋山豊寛さんは、福島県は阿武隈鍾乳洞のある滝根町で有機栽培や低農薬
> 栽培で農業を営む人たちとサークルを作って、積極的に環境保全型農業に
> チャレンジしています。≪ちなみに、私はここから50km南に住んでいます
> その秋山さんが、農薬の空中散布をめぐって奮闘しております。
> 低農薬栽培をしている水田に誤って農薬を空中散布されたとして、地元の
> 農家が町に対して損害賠償を求めています。
> 県の指針では一度農薬を撒布すると3年間は減農薬有機米として販売でき
> ないために、損害を被ったとして町に対して慰謝料を請求したのです。
> #この農家は、「賠償金が目的ではない。水を汚染する農薬の空中散布
> #は、環境保全型農業に反する」と主張しています。
>
とありますが、農薬関係の仕事に携わっているものとして一言。
農薬は、悪者だ!というような意識がある方もなかにはおられるようですが、

減農薬栽培、低農薬栽培というのを行うことに反論はありません。
ただし、立地条件など、考えるべき問題、解決すべき問題が、まだまだあると言
うことです。
ちなみに、福島県では、航空散布では、現在、いもち病という病気に対する殺菌
剤散布のみで、殺虫剤は散布していません。
いもち病という病気は、空気伝染性で、どこかで一度発生すると稲作にとって大
きな被害となります。平成5年の大冷害は記憶に新しいところです。
いもち病を効果的に防ぎ、被害を経済的許容レベル(これは農家によって違うか
もしれませんが)以下に抑えることが防除の基本だと考えています。
で、阿武隈山間ですが、ここは、いもち病の常発地で、冷害の年など大きな被害
を受けます。ここ3,4年は大きな冷害もなく過ごしているので、病害の発生を
過小評価して「もう、農薬はいらないんじゃないか」という人もいるかもしれま
せんが、この異常気象ですからどうなるかわかりません。
有機減農薬あるいは低農薬で農業を行っている方々については、私は、誤散布等
の問題を言う前に、そのような場所から遠く離れた地域で集団で栽培すべきだと
思います。航空散布を環境負荷が大きいと言うことで批判される方もいますが農
林水産航空協会では、空気中の浮遊濃度などを計測していますし、粒剤について
も水質への影響などは、調査しています。
中山間では、三ちゃん農業(じいちゃん、ばあちゃん、かあっちゃん)が多く、
労働力も必要最小限で農業を行わなくてはなりません。
減農薬、有機低農薬で農業をするとなると、非常に手間がかかります。
そのような、手間がかかる農業のみを農業というわけにはいかないし、三ちゃん
農業も守っていかなくてはなりません。
このような方々が安定した収益をあげるためには、農薬は必要な道具だと考えて
います。まあ、飛び道具ですから、使い方は慎重にするひつようがありますが。
話をもどして、いもち病という病気は、たとえば、一件の農家が一生懸命防除し
ても周りの農家で多発生させるとせっかく防除した農家でも発生してしまい、防
除経費が無駄になってしまいます。逆に、広域的に防除が行われているといもち
病菌の密度が低くなって、その中で防除していない農家の田圃があっても、あま
り病気は発生しないと言うことがあります。
いずれにしても、なんらかの対策を打たなくては大きな被害になる病気です。
で、対策ですが、航空防除をもしやめたとしたら、防除はここの農家任せになる
可能性があります。こうなると、道具がないとか、田圃にはいるのが面倒だとか
で防除がおろそかになり、大発生して大きな被害になる場合があります。
したがって、航空防除を中止するならそれでもいいのですが、代替案ときちんと
出して、病害の発生を事前に防ぐ技術の導入、発生したらきちんと防除できる体
制を作ることが大事だと思います。
これがなかったら、防除は、昭和40年代に逆戻り。しかも、いま、良食味とい
われる品種は、いもち病には強くないですから。
中山間で、減農薬でイネを作るなら、良食味を無視して、そこが適地になってい
るいもち病に強い品種を作ることが大切です。まず、病気に強い品種を選定して
過剰な防除を抑えること。・・・・ただし、これらの品種は、コシヒカリやひと
めぼれなどよりネームバリューが低いですから、価格も安くなります。
減農薬、有機農業を実践している方々も、そのような現状を踏まえて、信念論や
思いこみなどではなく本当に中山間で農業を続けるために必要なことは何かを考
えてほしいと思います。農家といえど、お金が必要ですから。21世紀の農業を
考えるとき、農家所得が若者にとって魅力あるものにしたいものです。

p.s
佐川さんの
 #有機栽培農家は浮いた存在になりがちなので、半ば嫌がらせ
 #として農薬をまかれたのではないかと推測(邪推?)・・
は、本当に邪推だと思います。

 



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