[BlueSky: 1848] Re:1803  緑化


[From] "SUKA, Takeshi" [Date] Mon, 24 Apr 2000 18:57:18 +0900

みなさん、こんにちは。

   須賀です。

水崎さん(1803):
> 最後に、某教授がこんな事を書いていました。
>
> 潜在自然植生を、目標に緑化する場合があるが、存在しない植生を
> 推定した結果の植生は、果たして正しいのか?
> また、そのような植生を目標に緑化することが、ホントに善なのか?

潜在自然植生を目標にするのがいいかどうかは、その場所の立地条件
や緑化の目的にもよるのではないでしょうか。日本の人里に近いとこ
ろの森林はだいたい歴史的に人手がはいることによって里山などのか
たちで維持されてきたわけですから、在来の植生の復元イコール潜在
自然植生の復元、には確かになりませんね。

でも昔のように里山に人の手をくわえる生活上の必要性がなくなった
今では、最初から潜在自然植生の樹種を植えた方が相対的に管理は楽
ですよね。それに外来種をむやみに植えるよりはいいと思います。
ただ、これもちゃんと議論しようとすれば自然に対する社会の価値観
の問題をおさえなくてはなりませんので、その教授が指摘されている
通り、見かけほど簡単な問題ではないのでしょうね。

葛貫さん(1846):
> 高校、中学、小学校へ通っている4人の子供の反応をみて、「へ〜、
> 国粋主義者っぽいところがあるんだ。」とか、

帰化植物の問題にふれると国粋主義とまちがわれる、というのは、
確かに悩ましい問題です。本当は地球規模でみた生物相の画一化、
(多様性の喪失)という現象の一部分なんですけどね。ものの本
によると、侵入生物の影響が大きくなったのは大航海時代以降の
ことで、やはり人間の行為がまねいた結果です。

もともと生物の進化は地域性をもったもので、人間の文化もそれ
と密接に関わって発展してきました。日本の国土は島々なので、
そういう地理的な条件のなかで生物相も進化的・文化的な歴史を
たどってきました。

長野県と岐阜県の県境にある乗鞍岳は、高山帯の2700mのところ
まで自動車道路がのびていて、夏には観光バスや自家用車でいっぱ
いになります。その駐車場からすぐのところに高山植物の花々が
さくお花畑があるのですが、そのすみにセイヨウタンポポが咲いて
いるのをみつけました。さいわいほかの植物を駆逐するようなこと
にはなっていないようですが。

「日本に外国の生物が入ってくる」ことがいけないのではなくて、
もともとの自然環境で生物間に成り立っていた微妙な関係が大きく
撹乱されることが問題なわけですよね。


Takeshi SUKA
Nagano Nature Conservation Research Institute (NACRI)
E-mail: suka@nacri.pref.nagano.jp


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