[BlueSky: 1833] 水のクラスター (re: 浄水器)


[From] samaki@hs.p.u-tokyo.ac.jp (左巻  [Date] Fri, 21 Apr 2000 16:38:36 +0900

 左巻健男@水の本執筆中 です。
 水の液体構造については「従来から混合モデル、割り込み分子モデル、歪んだ
水素結合モデル、乱れた網目構造などが考えられてきた」(高岡京@武蔵工大)
といいます。
 IRなどの分光学的研究、コンピュータシミュレーション研究は、混合モデルを
目的として行われてきており、その結果による水の液体構造の描像は次のような
ものです(荒川泓@北大)。
 任意の水分子に着目すると、H2O分子はある瞬間には5個が水素結合でネット
ワーク化し、10の-12乗秒程度でその構造は壊れて1個になり、次のその時間程
度でまた新しいネットワークができる、平均としての一定の平衡比率(25℃で
85%)をもって、四面体構造の五量体が形成・存在しているということです。
 
 ですから、水のクラスターなるものは、10の-12乗秒という短時間で生成消滅
している非常に動的なものです。

 「活性水」の業界が、水のクラスターを言い出したのは、NMRの半値幅とクラス
ターが関係があるとして、健康にいい水、おいしい水はクラスターが小さい、と
言い出した松下さん@生命の水研究所 のデータからです。しかし、確か富永さん
の「水商売ウォッチング」でも指摘されていたと思いますが、その前提になる解
釈が科学的に間違っています。しかし、水のクラスターが小さい→体内に吸収さ
れやすい→代謝が速やか…など連想イメージがしやすいので、何の科学的根拠も
ない「活性水」は、クラスターを出してきます。これが出ていたらインチキとし
てよいという指標になっています。
 
 本当にその水がクラスターが小さく(ここはインチキ)吸収されやすいとした
ら、医学的には大きな問題になります(幸か不幸か実際は問題になりませんが)。
生体のホメオスタシスをおかしくするからです。

■左巻健男(SAMAKI TAKEO)
■東京大学教育学部附属中等教育学校:化学・理科
■〒164-8654中野区南台1-15-1 電話 03-5351-9050(代)
■電話 03-5351-9659(教官室直通)FAX 03-3377-3415 
■E-MAIL:samaki@hs.p.u-tokyo.ac.jp
■法政大学工学部兼任講師(理科教育)


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