[BlueSky: 1828] 浄水器 


[From] samaki@hs.p.u-tokyo.ac.jp (左巻  [Date] Thu, 20 Apr 2000 12:49:03 +0900

 左巻健男@東大附属です。
 いま、ちょうど水の本を書いているところです。
 世にはびこる怪しげな水を検討しようと思っています。
 7月か8月発行予定です(日本実業出版社)。
 その磁化水の第一次原稿を紹介します。
 「もっと、ここをつっこめ」とかの意見などを期待します。


 磁化水とは、磁気処理をした水です。通常、永久磁石のN極とS極のある間をある流速以上で通した
水を指します。
 とくにロシアで硬度の高い水の水あか防止に効果があるとされるデータがあります(ヴェ・イ・ク
ラッセン『水の磁気処理』)。しかし、その効果もデータのばらつきが大きく、再現性がよくないとい
う面があります。
 その磁化水が、磁気の何らかの作用で水のクラスターが細分化されるなどした水ということで、活性
水の一種だと一部では宣伝されています。水道管に取り付ける磁化装置などが販売されています。
 ここで注意すべきは、「水のクラスターが小さい」ということで、「水がおいしい」「健康によい
水」ということは、インチキな説明だということです。これは、磁化水に限らず、「この水は本当に健
康によいか」を考えるときの着目すべき事柄になります。怪しげな水ほど、「水のクラスターは小さい
とおいしい、健康によい」という説明にすがるからです。
 水は、磁石の間を通るとき、何らかの作用を受けるでしょうか。
 水は強力な磁石を近づけると反発します。反磁性という性質をもっているのです。しかし、この磁気
に対する性質は非常に小さいので、水そのものが磁気に影響されるということはないと考えられます。
水分子は熱運動をしていますが、1T(=10^4G)という強力な磁石で水を磁化しても、その磁場エ
ネルギーは、常温における熱運動のエネルギーと比べて、3桁も小さく無視できるレベルです。
 また、強い磁石でほんの少し水を磁化しても磁石を取り去れば磁化は消えてしまいます。
 磁場(磁界)の中でコイルが動かすと電気がおきます。これは発電機の原理です。発電所では、高温
高圧の水蒸気でタービンを回し、発電機のコイルを回して発電しています。身近なものでは、自転車の
発電機もその仕組みです。
 ふつうの水には電気を帯びた粒子(イオン)がふくまれています。ふつうの水は、そのため電流を流
します。この水が磁場の中を通れば電気がおきます。この電気の作用で水が何らかの質の変化を受けて
いるとも考えられます。磁気処理が水あか防止に有効な場合があるのは、このためではないかという考
えがあります。
 健康によい水かどうかについて、アルカリイオン水の場合には賛否両方のデータがあります。しか
し、磁化水の場合には電気がわずかおきるところまでは科学的でも、その後の健康によいかどうかなど
は怪しげな説明はあってもきちんとしたデータはありません。

■左巻健男(SAMAKI TAKEO)
■東京大学教育学部附属中等教育学校:化学・理科
■〒164-8654中野区南台1-15-1 電話 03-5351-9050(代)
■電話 03-5351-9659(教官室直通)FAX 03-3377-3415 
■E-MAIL:samaki@hs.p.u-tokyo.ac.jp
■法政大学工学部兼任講師(理科教育)


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