[BlueSky: 1534] Re:1528 人の攻撃行動について


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Tue, 14 Mar 2000 23:00:20 +0900

葛貫さん、こんにちは。小宮です。

>調和のとれた持続可能な資源の利用法を求め、本当のことを知り、
>住みよい社会をつくりたいと願っていたのに、対峙する側とのやり取りの
>中で、何故、ヒトは過激になってしまうのか、ソフィスト(詭弁家)になり、
>アジテーター(煽動者)、ひどい場合はテロリストになってしまうのは、
>何故なのか、その変遷、機構を知りたいなと思います。
>機構がわかれば、チェックポイントを設け、意識的に行動することで、
>独善的になることを避けられる可能性がでてくるのではと思います。

余談になるかもしれませんが、生物学者のエドワード・O・ウィルソンがそ
の著書「人間の本性について」でこのような、人の他者(対立するグループ)
への攻撃行動について言及しています。有名な本なので御存じかもしれませ
んが、僕は非常に感銘を受け、強く影響を受けましたので、あくまでも参考
までに御紹介します(素人の僕が生物学の本を紹介する、というのも失礼だ
と思いますが)。


「人間には、外部からの脅威に対して非合理的な憎悪反応を示し、さらに
その敵意を拡大して脅威の源を打ち倒してしまおうとする、しかも過剰防
衛的なやり方でそうしようとする、強い傾向がある。
           
 事実、我々の脳は、以下に述べる程度までは遺伝的にプログラムされて
いるように見える。まず第一に、ある種の鳥たちがテリトリーソングを学
習したり、あるいは周極星座を基準とした飛行術を学習したりする傾向を
示すのと同じ意味で、人間には、他者を敵と味方に分割してしまう傾向が
あると言える。第二に、人間には、見知らぬ他者の振る舞いを極度に恐れ
る傾向があり、さらに、もめ事を攻撃によって解決しようとする傾向もあ
る。これらの学習規則は過去数十万年にわたる人類進化の過程で進化して
きたものに違いない。これらの規則に最も忠実に従った個体が、生物学上
の利益を得ていたのに違いないのである。
           
以上のような暴力的攻撃行動に関する学習規則は、かなり時代錯誤のしろ
ものである。しかしそれが分かったからといって、それらを廃絶できるわ
けではない。

 我々はそれらの規則をかかえたままで努力するしかないのである。それ
らの規則を眠らせておき、召還せずに済ますためには、意識的な努力が必
要である。暴力を学習してしまうという根深い人間の傾向を制御下におき、
しかもその傾向を弱めるためには、我々は心理学的発達の領域において、
困難でしかもほとんど前人未到の径路を進まねばならないのである。

平和主義を目標として掲げるのなら、学者や政治指導者たちにとって、人
類学や社会心理学の研究を一段と推進し、その専門知識を、政治学や日々
の外交交渉の過程に公然と生かすことは、その目標達成の上できっと役に
立つはずである。平和のためのもっと持続的でしっかりした基盤を築くに
は、政治的・文化的交流を促進して、人々の忠誠心の糸を諸集団の間に交
叉させてしまい、忠誠の対象を混乱させてしまうのが一つの手かもしれな
い。」

 「人間の本性について」ーちくま学芸文庫(一部変更)

実際、かなり自分を省みても思い当たることがありました。もしこのように、
対立グループに対する非理性的な憎悪、敵対心というのが我々にプログラム
されているものであるのなら、対立を避けるにはお互いにそのことを自覚し
あい、より意識的に相手を理解し、歩み寄る努力を交わさなければならない
のでしょう。ウィルソンが述べるように、政治的・文化的交流を促進して、
我々自身の遺伝的プログラムに打ち勝つ必要があると思います。MLがその
役割に大きく貢献できればいいですね。


#佐川さん、“脱線”の後押し、ありがとうございました(^^)
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小宮 祐一郎
メールアドレス:can32960@pop07.odn.ne.jp


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