[BlueSky: 153] 安全性?判断基準 Re:124


[From] Minato Nakazawa [Date] Thu, 22 Jul 1999 14:10:48 +0900

中澤です。

小澤さん:
> ([123] by 中澤)
> > 100世代以上続いてきた習慣であるならば,価値観次第では許容可能な
> > 危険と考えます。絶滅するならば,どんな価値観であっても許容不可能
> > です。
> ●安井さんの主張ではなかったのですね。失礼いたしました。私の主張と
> しては絶滅しないから安全というのは暴論であるというものです。これで
> はほとんどの有害物質は人類を絶滅させたことがなく、が安全となってし
> まいます。
たしかに「絶滅しないから安全」といっては暴論ですが,
ぼくはそんな暴論は主張していません。

ぼくは「100世代以上」とか「何千年も」と期間を限って
います。多くの人工の有害物質は産業革命以後に作られた
もので,せいぜい200年以内の影響しかわからないので,
この基準には引っ掛かりません。間違っても安全だなんて
思っていません。

しかも,何千年もヒトを絶滅させなかった物質についても,
安全といっているのではなく,「価値観次第では」許容
可能な危険であるといっていることにご留意ください。

何らかの物質が安全であるという判断は原理的に不可能
と思います。逆にお聞きしたいのですが,許容可能か
どうかの判断基準として,数千年の集団の生存以外には
何がありますか? もちろん,例えば,いま現在の快・
不快や健康状態といった生活の質に関する尺度は重要
ですが,そういったことは価値観(あるいは倫理)の
問題に帰着するのではありませんか?

反論をお待ちしていますので,よろしくお願いします。

> ●安井さんの書き方はあまり中立的ではないと思いますよ。さらにA,
> B,C3氏の討論という形式は読者に過剰な客観性を与えるもので、良心
> 的な手法とは言えません、新聞の社説などでこのような手法がとられると
> 憤慨ものです。
ぼくは,素人的なB氏と先鋭的なA氏を配してC先生が
まとめるという手法は,「市民」が読むときにB氏の
立場なら読みやすいだろうという配慮と感じました。

> ●焼却炉のリスクについても同様のことが言えます。焼却炉のリスクにおけるダイオ
> キシンの寄与率は僅かなものですから。
紙などを燃やす場合は,如何に低温だろうとダイオキシン
発生はたかがしれていると思いますが,産廃焼却ではダイオ
キシン類の寄与は大きいと思います。

焼却炉が問題になった場所として有名な所沢のくぬぎ山周辺
では,土壌中ダイオキシン類濃度は,コプラナーPCBを除い
ても1 gあたり約100 pg TEQ(TEQはダイオキシン類の中で
最も毒性が強いと言われている2,3,7,8-TCDD濃度に換算した
値を示す「毒性当量」)ですが,産廃の焼却残灰は,1 g
あたり2075-4287 pg TEQという高濃度だったことから,
これを調査した摂南大の宮田教授は,「土壌汚染の排出源は
一般廃棄物焼却施設ではなく,この付近の産廃焼却施設と
考えられる」としているそうです。
(出典:綿貫礼子[編]環境ホルモンとは何か II 【日本
列島の汚染をつかむ】,藤原書店,1998)

ですから,同様ではないと思います。

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Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
Phone:+81-3-5841-3486, FAX: +81-3-5841-3395
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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