[BlueSky: 1477] Re:1475 遺伝子操作と農薬


[From] "SUKA, Takeshi" [Date] Tue, 7 Mar 2000 18:45:58 +0900

山崎さん、みなさん
          須賀です。
山崎さん:
> 以前、「アフリカで起きていた環境破壊に対し、欧米の環境保護団体が
> 大きく反対活動をしたが、そこで暮らす人々の生活はまったく無視されていた。」
> という 話しを聞いたことがありますが、まさにそういうことですね。
> GMはともかくとして、少数の企業が力を持ち、世界の農業が支配されるような
> ことになってはならないと思いますが、それで貧困から抜け出せるかもしれない
> と考える人もいるかもしれませんね。

そうですね。途上国の行政官で国民の食糧問題の解決をせまられる立場だったら、
わたしもそう思うかも知れません。でも、この問題は、先進国と途上国という
対立だけではとらえきれない複雑な面をもつ場合もあると思います。

たとえば、熱帯雨林で伝統的な文化をまもって生活してきたひとびとは、熱帯雨林
を守ることなしに自分たちの文化を守ることもまたできないと考えるでしょう。
そういうひとびとの運動は東南アジアにもアマゾンにもありますし、そういう
ひとびとを支援する欧米のひとびともいると思います。けれどもそうした地域には、
他の場所からもひとびとが流れ込んできます。それが食べていくのが精いっぱい
のまずしいひとびとであれば、たとえ破壊的なやりかたで森林をきりひらいたり
したとしても、それを先進国のひとびとが非難しても説得力をもちにくいと思い
ます。けれどもそこでは、伝統的な生活をしてきたひとびとと新しく流入してきた
ひとびとのあいだにも緊張や対立がうまれるわけで、それがむずかしいところです。

新しくひとびとが流れ込んでくる背景のすくなくとも一部には、急激な人口の増加
があり、また貧困の増加があるのだろうと思います。つまり増加する人口を養うこと
と自然環境を保全することのあいだには両立しにくい面があるわけです。このジレン
マをとくには、耕地面積あたりの収量をふやさなくてはならない、とあるひとびとは
考えるし、あるひとびとは、いや、分配の不平等をなくすことが先決だ、と考えます。
わたし自身をふくめて、考えたり言ったりするのは簡単ですが、実際に解決しなけれ
ば、悲劇が拡大します。

国際政治の舞台では、持続可能な発展がキーワードになっていて、単なるお題目と
ひややかにみることもできるかもしれませんが、このことばがつかわれる背後には
そういうきびしい現実が横たわっているわけですよね。これに変わるいいことばが
みつかるでしょうか。遺伝子組み替え作物の是非をめぐる議論は、ひとつにはおそ
らくこういう背景のなかにおかれているのではないでしょうか。












Takeshi SUKA
Nagano Nature Conservation Research Institute (NACRI)
E-mail: suka@nacri.pref.nagano.jp


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