[BlueSky: 1451] Re:1417 循環型社会基本法市民案試案


[From] "一ノ瀬 威" [Date] Tue, 29 Feb 2000 00:26:53 +0900

一ノ瀬(尼崎市)です。

 法律というものが苦手な上に、長文の大作なので、読むのに時間がかかって
しまいました。
 いくつか気になった点についてコメントします。


1.”国”の関与が強すぎないか?

・試案を呼んで、まず気付いたことは、国の関与が非常に濃厚であることで、
「許認可行政」の弊害が危惧されます。
「国民および事業者に対し必要な指導又は助言を行う」(11条3号)と言っ
たって、それが果たして適切な助言であり得るのかどうか。
 国の関与や監視は最低限にとどめて、出来る限り民間機関(営利、非営利と
も)の活動を利用した方が、良い結果が得られるのではないでしょうか?

・15条にあるような、財政支援についても、あまり賛成できません。私が国
に期待するとしたら、リサイクルが民間の経済活動の一環として回っていける
ようにするための仕組みづくりであって、金を出すことではありません。
 また、現状の国債発行残高を考えれば、そう遠くない将来に、日本の公的部
門の財政は破綻しかねません。財政支援を前提にした仕組みは、財政の破綻と
共に停止してしまいます。

・数値目標を、社会全体の廃棄物削減や焼却量の削減といったような、広範な
社会活動に関わるような事柄について定めること(31、71条)については
、強く反対します。
 数値目標を掲げて、それを国家権力で強制すれば実現されるような単純な問
題とは、思われないからです。そのような強引なやり方は、必ず別の歪みを生
んで、もっと悪い結果をもたらすに違いありません。


2.廃棄物の持ち込み・持ち出しを禁じることに対する疑問
 (2,19,20,33条)

・廃棄物問題は、国内問題である一方で、地球環境問題でもあるはずです。例
えば、発展途上国では処理の難しい廃棄物が発生した場合に、先進国の技術で
処分せざるを得ない場合が出てくるはずです。

・また、廃棄物の輸出を禁ずるためには、国内に十分な廃棄物の処理能力がな
ければなりません。処理能力の裏付け無しに、単に禁止するだけでは、不法投
棄や密輸出が増えるだけではないでしょうか?

・廃棄物の処分は、国民の責務(18条)というよりは、「人類の一員として
の責務」だと考えています。本来、国境を云々すべき問題とは思われません。

・更にいえば、日本は、日々、大量の製品と天然資源を輸入しています。製品
の形で輸出され、あるいは、燃焼などの形で消滅するのは、そのごく一部に過
ぎません。
 物質の流れを考えるならば、最終処分を国内に限定(33条)し、流出を否
定することは、”循環”とは相容れないやり方と言えるとも思います。


3.”環境負荷ゼロ”の不合理性

・”環境への負荷ゼロ”(26条)あるいは”有害化学物質ゼロ”(16,
32,37,77条等)と言った記述が目に付きますが、文字通りゼロを要求
するとするならば、ムチャです。
 極端な話、我々がこうして生きて呼吸しているだけでも、地球温暖化ガス=
二酸化炭素、を排出しますし、女性の尿は、河川に住む魚の女性化の原因とも
指摘されています。ましてや、工業製品のリサイクルに対して、”環境負荷ゼ
ロ”を要求すれば、それは、リサイクルの厳禁と同じ意味になってしまいます。

・「科学的な調査に基づいて定められた環境基準値を満足させる」というよう
な記述が妥当だと思います。


4.非科学的記述

・第40条の、”ダイオキシンフリー建築”という話ですが、二重の意味で理
解に苦しみます。
 第一に、塩化ビを排除したところで、木材にも塩素が含まれている以上、不
適切な条件で燃焼させればダイオキシンの発生は避けられません。塩ビ排除は
無駄です。
 第二に、31条で「焼却の段階的廃止」謳っている以上、これから建設され
る住宅が、50年以上使用されるとするならば、解体時に焼却される筈はあり
ません。燃やさなければダイオキシンは発生しないのですから、塩ビ排除など
を云々するよりも、家屋の寿命を延ばすことを考えるべきです。
 この辺り、理解に苦しみます。

・環境ホルモンに対する記述が目に付きますが(37,90,91,92条な
ど)、環境ホルモンのみを特別扱いする理由が理解できません。人体や環境に
悪影響を及ぼす濃度以下に規制する必要があるという点では、他の一般有害物
質と何等差異はありません。徒に条文を増やし、法律を複雑にしているしか思
われません。

・疑わしきは罰するの”予防原則”を主張する30条第2項については、全面
的に撤回されることを希望します。十分に科学的な調査も行わずに、思いつき
と思いこみだけで強制的な措置を実施することには、あまりにも大きな危険が
伴います。
 横浜国大の中西教授が指摘している通り、水俣病に対してこの予防原則を適
用したならば、真の対策はより一層遅れたに違いありません
( http://env.kan.ynu.ac.jp/~nakanisi/zak16_20.html#zakkan16 )。

以上。


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