[BlueSky: 1368] Re:1366 科学・技術と社会


[From] Shigeru Hoshino [Date] Thu, 03 Feb 2000 08:25:28 +0900

須賀さん,MLのみなさんおはようございます。星野です。

"SUKA, Takeshi" <suka@nacri.pref.nagano.jp> さんは書きました:
>須賀です。
>
>evolveという進化生物学のメーリングリストがあります。そこで科学と
>社会の関係をどう考えるかというテーマについての議論がおこりました。
>そこにわたしも投稿したところ、それを読んだ中澤さんから、BlueSky
>でもとりあげましょうとそそのかされました。
 
実は私も入っていて,傍観しておりました。



>このやりとりを一般化しすぎることは危険かもしれません。けれども好き
>かきらいかは別として、科学があきらかにする自然界や人間の姿を理解し
>たい、それは現在の世界に生きることにとって知的に重要な課題であるに
>ちがいない、と考えているひとびとは少なくないのではないか、とわたし
>は推測しています。実際、それは重要な課題です。
 


>わたしは、仕事の必要もあって、保全生物学という学問を勉強しています。
>保全生物学とは、生物圏に対する人間活動の影響を研究し、そうした生物
>環境を保全する実際的な方法を開発するための学際的科学です。わたしは、
>保全生物学にもまた、うえにのべたような社会の知的要求にこたえざるを
>えない側面があると考えています。保全生物学にもとめられているのは、
>単なる技術的な解決だけではなく、自然と人間の関係のありかたの理解の
>ような領域をふくんだ、より総合的な解決の見通しの提示ではないでしょ
>うか。もちろん、それが一律に生物学的(ダーウィン的)世界観を異文化
>におしつけるようなことになっていはいけませんし、そのようなローカル
>なとりくみにおいては、固有の文化的背景を尊重し、そのひとたちが自分
>で自分たちの将来を選択できるようにするためのさまざまな知恵が必要に
>なると思います。しかしそのことをみたしたうえでも、人間と自然界、
>人間と環境の関係のあり方について、「世界観」の領域ではたらきかけを
>おこなう側面がでてくるという認識は必要だと思います。
>
>このように考えれば、科学・技術と社会の関係には、産業の役にたたない
>純粋な科学と産業にむすびついた技術、といった区別だけではとらえきれ
>ない問題の大きなひろがりがのこされているのではないでしょうか。
 
 私の仕事は害虫を退治する方法を開発することです。
 農薬という技術を科学的な農業と称し,これを農民に”指導”すること
によって,することによって,農政は維持されてきました。これは,「減
農薬の稲作り」の宇根豊氏が指摘してきたところです。農業という産業の
中での「科学」は実は「技術」であってし,遺伝子組み替え種子も科学で
はなく技術です。農業の中での科学は未だに無いのかもしれません。
 農業関係の若手の研究者でもこの認識はないと思います。
「生態系の中で人間がどう調和していくか。」これは大きな問題だと思い
ます。農業の中にもこの命題を解決する糸口はあると思いますが,技術一
辺倒ではなにも出てきません。個体群生態学者の高橋史樹氏は「基礎こそ
最大の応用である。」が口癖でした。「現象の中にある原理を発見するこ
とが大切だ」との教えでした。だから,技術に流されてはいけないと思っ
ています。須賀さんが押しつけになったらいけないと書いたダーウィン的
な考えが,農業分野にもっと反映したらいい分野だと思います。
 保全生物学や景観生態学の分野の成果は多く出されていますが,農業や
農村には全く活かされていません。行政も認識していません。
 やはり,技術中毒やお金にならないからやっても無駄という考えが蔓延
しているせいでしょうか。農林水産省農業環境技術研究所で生物多様性の
シンポジウムなどは開かれるようになりましたが・・・。

広島県立農業技術センター
                       環境研究部 星野 滋
                       739-0151東広島市八本松町原6869
                       TEL 0824-29-0521
                       FAX 0824-29-0551                       

hoshino@arc.pref.hiroshima.jp


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