BlueSkyMLの皆さん,お久しぶりです。星野です。
私は仕事柄,害虫の防除試験もやっていますが,BT剤は試験したことは
ありません。トアローCTは発売されてすぐにコナガの防除に使われましたが,
数年で抵抗性系統が出現しました。
"IWAO, Keisuke" <iwao@andrew.ac.jp> さんは書きました:
>Q:BT剤というのは生きた菌?
>
>A:shootさんはゴルフ場やハウス用に生菌が使われていると書かれましたが、
>ほんとですか? 自己増殖可能な生きた菌を広範囲にばらまくというのは、き
>わめて大きな生態系への影響が予測されることであり、あまりありそうにない
>ことだと思うのですが。それに、消滅しかかっているとは言え養蚕業は昔の重
>要産業であり、その養蚕に影響のある生菌散布を農水省が認めるでしょうか。
>さらにいえば、生菌を散布可能な形で流通するのは難しくないでしょうか。
>
> 一般に流通しているいわゆる「BT剤」は、菌体ではなく、菌が産出した毒
>素たんぱくの結晶です。手元に東亜合成化学工業の「トアローCT」という製
>品がありますが、他の化学農薬とまったく変わりのない粉剤で、水に溶いて使
>います。タンパク質ですから、水に溶いてから長くはもちません。
BT水和剤には,
ダイポール水和剤
バチルス・チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素10.0%
トアローCT水和剤
バチルス・チューリンゲンシス菌の結晶毒素7.0%
チューリサイド水和剤
バチルス・チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素10.0%
デルフィン水和剤
バチルス・チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素10.0%
ゼンターリ顆粒水和剤
バチルス・チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素10.0%
バイオッシュフロアブル
バチルス・チューリンゲンシス菌の生芽胞及び産生結晶毒素10.0%
などがありますが,どの剤も似たり寄ったりのようです。
BTの生菌が人体にはいると下痢をするというので以前は登録されていませんで
したが,下痢をしないことがわかったので,生菌も認められるようになりました。
広島県では,「養に対する毒性があるので,養蚕地帯及び養蚕農家,共同飼育場
などの周辺で使用しない」という注意書きをつけて,広島県病害虫防除基準に
掲載しています。
使用上の注意としては,同一の剤の連用は抵抗性系統を出現させる恐れがあるの
で使用回数を1〜2回程度に押さえる。しかしながら,将来的には,コナガ等の難
防除害虫は抵抗性を獲得するにちがいないと思います。
植物体内でBTの毒素を生成できても抵抗性系統が出現する可能性は否定できない
でしょう。
広島県立農業技術センター
環境研究部 星野 滋
739-0151東広島市八本松町原6869
TEL 0824-29-0521
FAX 0824-29-0551
hoshino@arc.pref.hiroshima.jp
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