[BlueSky: 123] Re:120


[From] Minato Nakazawa [Date] Fri, 16 Jul 1999 19:19:45 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

小澤さん,コメントありがとうございます。うーん,厳しいご意見だ。

> ●簡単に言えばリスク論は「被害者は少数である」ことを「リスクが小さい」と言葉
> を換えて、国策及び国民的意識の中で少数切り捨てを容易ならしめようとする作用が
> あります。
そういう使われ方をしてしまう可能性もあるのですね。
それは気にしておかなければなりませんね。

> ●さらに中西・安井両氏は社会(全体)的リスクとは異なる地域的リスクにほとんど言
> 及しておらず、両氏のリスク論を安易に個人、地域に適用すると、ミクロ的なリスク
> マネジメントとしては間違った解をもたらします。魚を多く食べる人にとっては魚の
> リスクが高く、タバコについても同様、ゴミ焼却場の近くに住めば、焼却場及び焼却
> 灰の輸送からもたらされる各種汚染物質によるリスクが大きいわけです。
それはわかります。ただ,両氏は,「安易に個人,地域に適用する」ことは
意図していないと思います。言及していないのは,適用範囲外だからでしょう。
中西さんは,もともと「公害原論」の宇井純さんの学生だったと記憶していますが,
アマゾンのガリンペイロの肺からの水銀曝露の問題など,地域特異性,個人の
リスクの多様性は十分考慮して調査されていると思います。

> ●絶滅をもって危険性の証明とするおつもりなのでしょうか?安井さんにしては考
> えられない論理展開ですね。ただ、安井さんのサイトでは、確定的にはっきりとし
> たデータの中にはっきりしないデータを紛れ込ませて同様の信憑性を読者に与える。
> また、論理的に誤っている、雑誌などの記事を多く引用して批評してみせるという
> 特徴があり、論文を読み慣れていると、読後感に比較して客観的に信じてよい事実は
> 少ない感じを受けます。
誤解無きよういっておきますと,この段は安井さんの論そのものではなく,
ぼくの印象です。ぼくは,個人的にはタバコは大嫌いですが,それでも
100世代以上続いてきた習慣であるならば,価値観次第では許容可能な
危険と考えます。絶滅するならば,どんな価値観であっても許容不可能
です。

安井さんのサイトの文章は,はっきりしないデータははっきりしない
と留保して書いてあると思いましたが。

> ●タバコは汚染されているのではなくてダイオキシンを発生するのです。タバコ
> による日本の超過死者数は年間10万人を越えるとも言われ、危険因子はダイオ
> キシンに限らないのですから大いに気にするべきです。また、リスク論としても
> タバコにおけるダイオキシン被害だけを分離して安全性を論ずることは、実際上
> 無意味でもあります。
タバコの発癌性は疫学的に確定していますから,健康リスクとしては
気にするべきですが,ダイオキシン源として気にするべきか,という
ことを問題にしたのでした。まあ,たしかにそれだけを分離すること
はリスク論として無意味といわれればそれまでですが。

> ●実際にはタバコを環境汚染財として捉えてみると、データの充実、タバコ税
> を通じての環境税の効果の実証、タバコ健康被害における経済外部性の研究、
> 広告規制による消費削減効果、タバコメーカーを巡る情報公開の問題など、魅
> 力的な題材の多い分野ではあります。
これはその通りですね。
おいおいやっていきましょう。
今後ともよろしくお願いします。

> 一橋大学経済学研究科寺西ゼミ(環境経済学)博士?年小澤明寿(十五夜ノボル)
「環境経済学」でWEBサイトを検索すると,
http://member.nifty.ne.jp/kkuri/
http://rachel.econ.kobe-u.ac.jp/washida/
などが見つかりますが,かなりいろいろなことをやってますよね。
例えば,CVMとかは,ぼくが[107]の最後の方で触れた住民の意思を
定量化する方法と思っていいのでしょうか。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo


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