[BlueSky: 120] Re:食べ物やタバコからのダイオキシンリスク


[From] "OZAWA AKIHISA" [Date] Fri, 16 Jul 1999 18:17:40 +0900

●初めまして小澤@一橋大学院環境経済学です。

> 中澤@東京大学人類生態です。
>
> 環境汚染物質のリスクアセスメントというと
> 中西準子さんの「中西準子の個人ページ」
> http://env.kan.ynu.ac.jp/~nakanisi/
> と安井至さんの「市民のための環境学ガイド」
> http://plaza13.mbn.or.jp/~yasui_it/
> がお薦めサイトだと思いますが,後者の昨日付けの記事「ダイオキシン
> サマリー(摂取量編)」を読んで感心したので紹介します。
●リスクアセスメントは一面で環境政策の退化であると警戒しております。すなわ
ち、
リスクの算出方法も近年はいろいろと発達してきましたが、結局は「被害数÷母数」
に行き着く。結局リスクを数字の上で比較する際には「少数被害の切り捨て」が生じ
ることになります。
●これは「最大多数の最大幸福」という考え方から、例え少数であっても「基本的人
権の尊重」をするという、特に公害問題などを通じて市民が勝ち取ってきた権利をな
いがしろにするものです。
●簡単に言えばリスク論は「被害者は少数である」ことを「リスクが小さい」と言葉
を換えて、国策及び国民的意識の中で少数切り捨てを容易ならしめようとする作用が
あります。
●さらに中西・安井両氏は社会(全体)的リスクとは異なる地域的リスクにほとんど言
及しておらず、両氏のリスク論を安易に個人、地域に適用すると、ミクロ的なリスク
マネジメントとしては間違った解をもたらします。魚を多く食べる人にとっては魚の
リスクが高く、タバコについても同様、ゴミ焼却場の近くに住めば、焼却場及び焼却
灰の輸送からもたらされる各種汚染物質によるリスクが大きいわけです。
●したがってタバコや焼却場で困っている人が、嫌煙権を主張したり、汚染実態調査
を自治体に求めることは、(本当は)リスク論的にも正しいのです。

> 先頃ダイオキシンの1日当たりの許容摂取量(TDI)が改訂されましたが,
> そこで元にした資料について,安井さんのサイトには次のようなデータが
> あります。
>
> 1日当たりのダイオキシン摂取量(TEQとして)は,魚介類からが1.506 pg/kg
> (食べる人の体重1 kg当たり1.506 pg[ピコグラム=1/1000000000000グラム]),
> 肉・卵からが0.417 pg/kg,乳・乳製品からが0.188 pg/kgで,他の食品群からは
> それ以下です。飲料水からは0.0004 pg/kgだそうです。大気からは0.165 pg/kg,
> 土壌からは子どもで0.22 pg/kg,大人で0.044 pg/kgとなっています。合計すると
> 約2.6 pg/kg/dayとなります。
>
> 一方,TDIは,体内に蓄積されたダイオキシンが86 ng/kg(体重1 kg当たり86 ng
> [ナノグラム=1/1000000000グラム])という体内負荷量を超えると何らかの異常
> がでるとして,これだけの体内蓄積量になるには43 pg/kg/dayの一日摂取量が
> 必要であることを根拠に,安全係数(安井さんによれば不確実係数が正式との
> こと)を10として4 pg/kg/dayと計算されています。
●日本のダイオキシン測定においては「定量下限値」未満のデータの切り捨てが行
われており、切り捨てではなく50%採用、100%採用のWHO、EPA(米国
環境保護庁)、より低い値が出ます。安井さんはまだ御存じないのかも知れません。
●詳しくは
株式会社環境総合研究所内、
"http://www.eri.co.jp/"
所沢市が実施した血液中のダイオキシン実測データの処理方法について
"http://www.bekkoame.ne.jp/~t-aoyama/dxn-blood-19990304.html"
定量下限値以下の実測値処理について
"http://www.bekkoame.ne.jp/~t-aoyama/dxn-nd-19920226.html"

>
> 2.6は4より低いからまあ安全だというわけです。この辺の計算については,
> 安井さんのサイトに懇切丁寧に書いてありますが,仮定はいろいろあるものの
> 現状ではかなり合理的な算定だと思いました。
>
> 安井さんは,昨日の記事で,TDI評価に使われなかったデータとして,タバコ
> からのダイオキシンを指摘し,吸収率が25%と仮定しても1日20本吸う人では
> 4 pg/kg/day取り込むことになると推定しています。
>
> しかし考えてみればタバコなど,トレス海峡諸島民や南米インディオなど
> 何千年も吸ってきています。それでも彼らは絶滅しなかったわけです。
> ということは,自然界にもともと存在するものを燃やして発生する程度の
> ダイオキシンなら,それほど危険ではない,ということにならないでしょうか。
●絶滅をもって危険性の証明とするおつもりなのでしょうか?安井さんにしては考
えられない論理展開ですね。ただ、安井さんのサイトでは、確定的にはっきりとし
たデータの中にはっきりしないデータを紛れ込ませて同様の信憑性を読者に与える。
また、論理的に誤っている、雑誌などの記事を多く引用して批評してみせるという
特徴があり、論文を読み慣れていると、読後感に比較して客観的に信じてよい事実は
少ない感じを受けます。

> ゴミ焼却場からとか,除草剤からのダイオキシンのような,桁違いの高濃度
> のダイオキシンは危険だとしても,直接汚染されていない食物やタバコなどは
> 気にしなくても良いように思います。母乳も同じだと思うのですが。
●タバコは汚染されているのではなくてダイオキシンを発生するのです。タバコ
による日本の超過死者数は年間10万人を越えるとも言われ、危険因子はダイオ
キシンに限らないのですから大いに気にするべきです。また、リスク論としても
タバコにおけるダイオキシン被害だけを分離して安全性を論ずることは、実際上
無意味でもあります。

> ま,実は安井さんもその辺は書いていて,(生殖毒性はわからないので)
> 妊婦以外は食物やタバコを気にする必要はないだろうと提言しています。
>
> 大事なことは,危険だ危険だと騒ぐことではなく,正確なデータを元にして
> リスクアセスメントをすることだと思います。皆さんは,どう思いますか?
●7/15の安井さんの記事はこれまでの中でもっとも信憑性の低い記事ではない
でしょうか?とくに「400年にわたる人体実験」、「吸収率25%」など根
拠に乏しい数字が用いられ、冷静に読めば今回はタバコの害を否定する方向で
のデータ利用・論理展開であることが見て取れると思いました。

●実際にはタバコを環境汚染財として捉えてみると、データの充実、タバコ税
を通じての環境税の効果の実証、タバコ健康被害における経済外部性の研究、
広告規制による消費削減効果、タバコメーカーを巡る情報公開の問題など、魅
力的な題材の多い分野ではあります。

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一橋大学経済学研究科寺西ゼミ(環境経済学)博士?年小澤明寿(十五夜ノボル)
メール:[jugoya@hk.airnet.ne.jp]
H P:4コマ&ジョークで環境問題を斬る!20XX年からの手紙
    [http://www.hk.airnet.ne.jp/~jugoya/index.html]
    WEEKLY環境学
    [http://www.hk.airnet.ne.jp/~jugoya/new/Weekly_EE.HTML]
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