[BlueSky: 1189] I SO14000 シリーズについて


[From] "Takashi Goto" [Date] Sat, 18 Dec 1999 00:17:21 +0900

葛貫さん、皆さん

環境NPO研究会@後藤です。

葛貫さん。
朝日の記事は今日読めなかったので助かりました。
この仕組みは別ルートで聞いたことがありましたが、こんなに
早く出てくるとは思いませんでした。市民団体レベルで、東京
都を中心になんらかの動きがあるかもしれません。

お礼に、ISO14000シリーズについて一般的なお話をしましょう。
ただ、ぼくも基本的には素人なので、より詳しい質問などは、
各地の環境カウンセラーや審査登録機関に聞くか、通産省など
のHPを見るといいでしょう。

基本的には、地球サミットの時に企業の環境への取り組みを増
進させるため、「自主的取り組み」の形で企業が環境に取り組む
際の国際的な規格をつくろうということで、ISOという国際機関に
委託されたという筋だと思います。ISO(国際標準化機構)は、19
47年に設立された世界共通の基準・規格づくりのための機関で、
日本からは日本工業標準調査会が永久構成員になっています。

もともとISO9000シリーズという、製品の品質に関する国際規格
が先にあって、それを下敷きに14000シリーズが作られました。
流れとしては、英国のBS9900というキビシイ独自規格があって、
ヨーロッパにはEMASというやはりキビシイ規格があって、アメリカ
はややゆるい規格を主張していて、それらがISO14000シリーズ
に統合された経緯があったと思います。

ISO14000シリーズの実際的なところは、ISOの専門委員会(TC)
、小委員会(SC)、作業グループ(WG)で策定されています。140
00シリーズについては、その207版目の専門委員会TC207で審
議されています。
そして、環境マネジメントに関する一連の国際規格の中で最も中心
にあるのがISO14001(環境マネジメントシステム)です。

ISO14001には、企業活動、製品及びサービスの環境負荷などの環
境パフォーマンスの改善を実施する仕組みが継続的に改善されるシ
ステム(環境マネジメントシステム=EMS=Environmental Manage
ment System)を構築する要求事項が規定されています。

具体的には、当該組織の最高経営層が環境方針を立てて、その方針
の実現のため計画(Plan)をし、それを実施・運用(Do)して、その結果
を点検(Check)して、問題があれば見直し(Act)する流れが基本です。
これをP−D−C−Aサイクルといいます。

ISO14000シリーズは、よく何をどこまで誰が規格化し、どう運用されて
、対象がどこまでか分かりにくいと聞きます。この答えは、先述したTC20
7の規格の内容を見ればお分かりになると思います。どこにエコラベルが
出てくるか、いろいろな環境関連のキーワードがどこに織りこまれているか
に気をつけて読めば、そう難しい内容ではないです。

◆SC1=環境マネジメントシステム(EMS=Environmental Manageme
      nt System)・・・ISO14001(仕様及び利用の手引)
      環境マネジメントシステムを構築するために要求される規格
      ISO14004(原則、システム及び支援技法の一般指針)
      ・・・ISO14001に基づき環境マネジメントシステムを構築する
        際の参考事例等を示したガイド
      ISO14002・・・検討中

◆SC2=環境監査指針(EA=Environmental Audit)
      ISO14010(環境監査の一般原則)
      ・・・組織、監査員及びその依頼者に対し、環境監査の実施に共通
      の一般原則に関する指針を示すことを意図した規格
      ISO14011(監査手順−環境マネジメントシステムの監査)
      ・・・環境マネジメントシステム監査基準との適合性を判定するための
      環境マネジメントシステム監査の計画及び実施に関する監査手順に
      ついての規格
      ISO14012(環境監査員のための資格基準)
      ・・・環境監査員及び主任環境監査員のための資格基準に関する手引。
      内部監査員及び外部監査員の両方に適用可能な規格

      ISO14015(サイトアセスメント)
      ・・・事業所が立地している土地に関わる環境影響負荷(土壌汚染、地
      下水汚染等)の監査を示した規格

◆SC3=環境ラベルと宣言(EL=Environmental labelling)
      ISO14020(一般原則)
      ・・・全ての環境ラベルに関する一般原則を規定しており、国際貿易の
      障害とならないこと、LCAを考慮すること、透明性を確保すること等を記
      した規格
      ISO14021(自己宣言による環境主張)〔タイプ2ラベル〕
      ・・・製造者自らが製品やサービスの環境への配慮を主張するもので、リ
      サイクル可能、リサイクル材料、省エネルギー等12の主張項目を規定し
      た規格
      ISO14024(第三者認証による原則と実施方法)〔タイプ1ラベル〕
      ・・・第3者機関が独自の基準に基づいて環境に配慮した製品の認証を
      行い、ラベル貼付するために基準の設定方法や認証方法を規定した規格

      ISO14025(環境に関する定量情報表示)〔タイプ3ラベル〕
      ・・・資源消費量、大気汚染量、有害物質使用量等の製品の各環境負荷
      を定量的に表示し製品に貼付する手法を規定しているた提示する規格
     (検討中)

◆SC4=環境パフォーマンス評価(EPE=Environmental Performance Evaluation)

      ISO14031(環境パフォーマンス評価)
      ・・・組織の環境行動、実績を定性的・定量的パラメーターを使って評価する
      手法に関する規格
      ・・・ここが環境報告書につながってきます。 
 
◆SC5=ライフサイクルアセスメント(LCA=Life Cycle Assessment)
      ISO14040(一般原則)
      ・・・製品の環境負荷を、原料調達段階から廃棄に至るまで各段階毎に分析し
     、製品の生涯に渡る環境負荷を求める手法を規定した規格
      ISO14041(インベントリ分析、一般)
      ・・・LCA手法のうち、インベントリ分析手法について規定した規格
      TRインベントリ分析(タイプ3)
      ・・・ISO14041に基づく手法を具体例を提示して説明している標準情報
      ISO14042(LCA−影響評価)
      ・・・LCA手法のうち、影響評価手法について規定した規格
      ISO14043(解釈)
      ・・・LCA手法のうち、解釈について規定した規格

◆SC6=用語及び定義(T&D=Terms and Definition)
      ISO14050(用語と定義)
      ・・・TC207の各規格で用いられる用語と定義を規定した規格
 
◆WG1=ISOガイド64/製品規格の環境側面(EAPS=Environmental Aspects in
      Product Standards)
      ・・・製品規格を作る際に環境への配慮を盛り込む手法を規定したガイド

◆WG2=森林(FOREST)
      TR14061=森林(タイプ3)
      ・・・森林関係者がISO14001に基づく環境マネジメントシステムを構築する
        際に有効となる情報をとりまとめた標準情報
        WWFが頑張っている分野

大体こんなところです。
こうした国際的な動きが日本に下りてくると、日本工業標準調査会
(JISC)が窓口になって、JIS化されるわけです。日本の企業は、ISO
9000の時「自主的な規格なんて」となめていたら、国際的に輸出ができ
なくなって、しかも国内に審査機関がなかったため、海外に委託して取得
したので大損こいたのです。だから、環境ISOの時は電気業界を皮切りに
専門的審査登録機関がいっぱいできて、企業はわれさきに取得して、つい
に今では世界一の取得大国になりました。
でも、だからこそ形骸化や、ポーズで取得することへの反省、さらには審査
員のモラルなどが問われ始めているのです。

ではまた。今度は本業の環境NPOのことを書きたいな。

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後 藤   隆 [ Takashi Goto ]
[mailto:takapi-@sf6.so-net.ne.jp]
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