[BlueSky: 1111] Re:1094 屋久島から情報発信します!


[From] Minato Nakazawa [Date] Fri, 19 Nov 1999 11:07:22 +0900

中澤@東京大学人類生態です。

(件名:[BlueSky: 1094] 屋久島から情報発信します!に於て)
Fri, 12 Nov 1999 22:41:55 +0900頃,山内耕治さん:
> やはり同じ白谷雲水峡で、屋久杉の土埋木が
> 盗伐されたというのです。現在屋久杉は、まった
> く切り出していません。工芸品などは、昔伐採
> されたものの残りが土の中に埋まっています
> (土埋木)、これを森林管理所(営林署?)が
> 運び出しこれを払い下げて利用して作られて
> います。この一部が悪質な者によって、盗伐
> されたのです。
うーん,それは残念なことですね。
どの程度の被害なのかわかりませんが,盗伐というからには大規模
だったんでしょうね。いや,少々だったら,してはいけないという
ことを知らなかったということもありえそうですから(その場合は,
悪質とまではいえないような気がします)。自然とのつきあいでは,
無知が引き起こす問題が往々にしてあります。では,どうしたらい
いのでしょうか?

昭和堂から出ている「エコソフィア」の最新号で,エコミュージア
ムの特集がされているのですが,安渓遊地さんが屋久島オープンフ
ィールド博物館の夢というのを語られています。安渓さん自身は凄
いディープエコロジストなので(屎尿の再利用のためにトイレを改
造していて,来客にも協力して貰っているという話を聞いたことが
あります),彼の生き方の真似はなかなかできませんが,屋久島オ
ープンフィールド博物館構想そのものは,もうちょっと柔らかくて,
地元住民が中心になって屋久島の自然と文化のすばらしさに学ぶこ
とができるような屋久島とのつきあい方を訪問客にもしてもらおう
という取り組みらしいです。
# ある意味では,地元住民の需要に相応する研究を進めることに
# もなるので,[BlueSky: 92]あたりから論じられてきた研究者の
# 存在価値にも関わることですし,[BlueSky: 1083]や[BlueSky:
# 1097]で書いたアイディアを,既に実現しつつある人たちがいる
# ということです。凄いと思いました。

これが実現すると,訪問客は島についていきなり山に登ったり海に
潜ったりはできず,まずは地元のガイドについて屋久島の自然との
つきあい方について学び,エコツアー・ガイド協会から許可されて
から出発できることになるそうです。そうすれば,屋久島を訪れる
人ばかりでなく,地元住民の環境リテラシーも必然的に向上するの
で,盗伐のようなことは起こりにくくなると思います。これは,一
つの答えではないでしょうか?

この運動の関連WEBサイトは,
http://www.dab.hi-ho.ne.jp/yakuofm/
です。

なお,「エコソフィア」最新号では,民博の秋道さん(共有地の悲
劇スレッドで引用した「なわばりの文化史」の著者)が司会となっ
て行われた,梅棹忠夫さんと山極寿一さんの対談も目を開かされる
ことが多くありました。屋久島の営林署が,林業が立ちゆかなくな
ったときにトビウオ漁をして生計を支えていたことから,森だけで
はなくて海も含めて,地域全体をひっくるめて考えねばならないと
いう点には共感しました。ただ,トビウオは獲りつくしてしまった
からもう獲れないというのは言い過ぎかと思いました。下記WEBサ
イトの人みたいに,脱サラしてトビウオ猟師をやっている人もいる
くらいですし。
http://www.interq.or.jp/bass/hiro5228/


=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo
[WEB] http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/index-j.htm


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