[BlueSky: 104] 食べる機械になった牛96


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Fri, 16 Jul 1999 00:24:42 +0900

よこやまさん、初めまして。兵庫県在住の小宮です。

よこやまさんwrote;
>試しに,身近にある環境問題をML参加者から募集し,実名がまずければ仮名にする
>なりして具体的に各人の意見を聞いてみたら如何でしょうか?その上で,このMLでの
>結論を出してみるのです。
>
>NPO「青空環境問題(勝手に)シンクタンク」構想なんて面白いと思いますが・・・・

面白い御提案ですねー。僕は人間の倫理と環境問題というところに
関心があります(全然詳しくなくて、全くの素人ですけど…)。最近
読んだ本でちょっと興味深かった話があるので、みなさんに御参考
程度に紹介してみたいと思います。

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インディアナのロチェスターにピーチャー・アーリンダ・エレンという
名の乳牛がいるのだが、彼女は305日の測定期間中に7万1641キロ
グラムの乳を出した。年間にすれば8万5734キロである。エレンは
まさに乳牛の女王で、所有者のハロルド・L・ピーチャーに大きな利益を
もたらしている。

企業や科学者たちの関心はいまこの乳牛に向かっている。米国のいくつか
の企業は以前から、エレンの子牛の争奪戦をくり広げてきたのだが、
科学者たちが研究しているのはエレンの卵子の移植の技術と、遺伝子操作
によってエレンを複製するクローン技術である。

それらの技術の専売特許がとられた場合には、利益はその企業に独占される
ことになる。そして、農民はむろん他の企業も完全に競争力を失うことに
なるだろう。その結果、一企業が牛乳の生産に決定的な力を持つ事になるに
違いない。

そうなるともう農業ではなく工業で、酪農という言葉も死語になってしまう
だろうが、そこでは牛は食べる機会であり、食べたものを乳に変える装置
である。

現在でもエレンはほとんど食べる機械のようなもので、ぶらぶら遊ぶことも、
いねむりすることも、子牛と追いかけっこすることもなくなっている。
何かの理由で食欲を満たすことができなくなった彼女は、ただひたすら食べる
のみの存在になっているのだ。乳量が多いときの彼女が一日に食べる量は、
穀類が27キロ、アルファルファの干し草が31.5キロ、水240リットル
である。

彼女は起きている時間の全てを費やしてそれを食べる。そして乳に変える
のだが、遺伝子操作によって科学者たちは、エレンの複製をより完全な
「機械」につくりかえていくだろう。
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       「何を食べるべきか」丸本淑生著 講談社+α文庫

この本では、科学技術が農業にもたらす弊害の例としてこの話を載せて
いるのですが、弊害はともかくとして、僕もなにかこの話を聞いて
嫌な気がしました。人間というものは、経済的発展のためならこうも
自然の姿を歪めてしまえるものなのでしょうか?それとも、そんな気持ち
は僕の、ただの感傷にすぎないのでしょうか。

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yuichiro komiya (小宮祐一郎)
e-mail:can32960@pop07.odn.ne.jp


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