[BlueSky: 103] Re:91 Re84, 90 Re60:議論の3つの水準


[From] can32960@pop07.odn.ne.jp (yuichiro) [Date] Fri, 16 Jul 1999 00:24:25 +0900

ながみつさん、後藤さん、みなさんはじめまして。新規に入会させて
いただきました小宮といいます。みなさんが考えられている研究と
自然保護、というテーマについて、僕も少し考えてみました。

ながみつさんwrote;
>「土地利用についてその土地の関係者が合意するために、研究者は貢献できるか」

ということですが、まったくの素人からの意見を述べたいと思います。
いろいろ誤認している点等あるかもしれませんが、そのような時は
御指摘下さい。

>たとえば、後藤さんの「vs型」の定式化だと、
>ことなる主義や価値にもとづいた2つの利用法が対立しています。
>つまり、土地利用の意志決定で紛争がおこっています。
>この紛争を解決し、関係者が合意するために、研究者に何ができるでしょうか:
>というかなり具体的問題が私の関心事です。
>
>人間中心の文明的な人工能力による利用法に対抗する「つよい」論理とデータを
>非人間中心で文化的自然の自然能力による利用法に提供して、
>一挙に紛争を解決し、関係者を合意にみちびくことができるでしょうか。
>(この反対のケース:前者に寄与する「御用学者」も可能です)
>ぎゃくに、研究者の介入は、紛争を拡大し泥沼化させ、関係者の人間関係に
>ふかい傷をのこすことになるのでしょうか。
>(推進派と反対派で村がまっぷたつ、両派はそれぞれの学識者で権威づけする)
>あるいは、研究者には紛争を解決する力などなく、
>疑問をもちつつも紛争をおこせなかった人々に
>異議申立をおこす勇気をあたえるだけなのでしょうか。
>(あるいは研究者自身が紛争をおこす)

僕自身の感想でいえば、このような自然環境に関わる土地利用の問題に
おいては、まずは倫理的問題を第一に考えるべきであって、人間に利益を
もたらすかどうかというものを論理やデータによって推し量るべきでは
ないと思います(ここで使っている「倫理」という言葉は、人間の幸福追求
の為、というながみつさんが[90]で使われている広い意味ではなく、
もっと狭い、人が道徳的に生きる道、という意味です)。確かに自然が
もたらす利便性のデータにより、自然保護を唱える事もできますが、
それと同様に、データによって環境破壊を促進する事も可能だからです。
むしろ、今では研究による科学的データが「経済的発展が第一」という
価値観と結びつき、自然を壊す方向の助けとなる場合のほうが多い
のではないでしょうか?

>倫理的規制あり
>(1)特定の機能を利用する方法が倫理的にきまる場合
> 多様な生物のすみかとして利用
> (合意の根拠:環境保護倫理)
>倫理的規制なし
>(2)複数の機能を利用するそれぞれの方法を関係者の自由意志で選択する場合
> 多様な生物のすみかまたは道路用地の機能を利用する案のどちらかを選択
> (合意の根拠:2つの機能を共通の尺度で比較)
>(3)特定の機能を利用するいくつかの方法を関係者の自由意志で選択する場合
> 汚水浄化の機能を干潟または下水処理場で利用する案のどちらかを選択
> (合意の根拠:2つの利用を共通の尺度で比較)

例えば、先の例では、倫理的規制のない(2),(3)の場合では、研究者が
機能面、利便性の面で、道路用地や下水処理場建設に伴う莫大な利益を
データとして提出すれば、やはり干潟を埋め立てたほうがいい、という
ことになってしまいます。しかし、本当にそれでいいのでしょうか?
単にアサリの浄化能力よりも人工の下水処理場の方が勝っている、という
データのみで干潟を埋め立てるべきなのでしょうか?

同じ事が森林の保護等でも言えると思います。データ的に森林よりも
価値のある物を作るためならば森林破壊をしていいものなのでしょうか?
どんなに経済的に価値があっても行ってはならない行為というものが
あるのではないでしょうか?

このような理由で、倫理観の伴わない研究データ、科学技術は、簡単に
経済発展と結びつくのでかえって危険だと思います。自然保護に研究者が
貢献するのであれば、まず、自然環境の保護を考える倫理観を研究者が
持つことが第一で、それから[92]で後藤さんが言われているように
「複合的自然能力を一つ一つ発見」、又、自然破壊によりもたらされる
弊害を発見し、その知識を正しく世間一般に広めることが大事だと思い
ます。

実際に研究されている方に向かって、だいぶ失礼な事をいったかもしれ
ませんが…もし間違っていると思われる点があったらみなさん教えて
下さいね(^^)

------------------------------
yuichiro komiya (小宮祐一郎)
e-mail:can32960@pop07.odn.ne.jp


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。