[BlueSky: 988] 緊急提言とその背景( Re:970 東海村臨界事故の影響は?)


[From] ymizuno@yo.rim.or.jp (水野義之 Y.Mizuno) [Date] Sat, 9 Oct 1999 14:34:59 +0900

水野@京都女子大学です。長文で失礼します。

何度もご覧になる方には、申し訳ありません。おわびします。

***

臨界事故に関して、以下のような提言をまとめていますので、よろしかったら、
ご参照下さい。


以下には、(1)緊急提言と、(2)その基礎になった議論、を紹介
させていただきます。
(1)の提言については、すでにご存じの方もおられれば、申し訳ありません。


(1)緊急提言について
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From: Genro Ochi <gochi@m.ehime-u.ac.jp>
Date: Wed, 06 Oct 1999 12:48:30 +0900
To: himedaruma@imcj.hosp.go.jp
Cc: ngo@center.osaka-u.ac.jp, saigai@2dwww.tmig.or.jp,
masui@anes.med.osaka-u.ac.jp, ml-poison@ipc.hiroshima-u.ac.jp,
mcmq@iijnet.or.jp, jpmed.misc@umin.ac.jp, rcml@falcon.m.ehime-u.ac.jp
Subject:[WNN:11408] =?ISO-2022-JP?B?GyRCIVpOVzMmO3Y4Tjx+SlUbKEI=?=
=?ISO-2022-JP?B?GyRCPTtMMSRON3I5Lz51QlY/ZEIsJEhCUBsoQg==?=
=?ISO-2022-JP?B?GyRCOnYkTiQ/JGEkTjZbNV5EczhAIVsbKEI=?=
X-URL: http://www.center.osaka-u.ac.jp/people/wnn/
X-Ml-Info: write "info" in the body to ngo-request@center.osaka-u.ac.jp


宛先:himedaruma@imcj.hosp.go.jp ngo@center.osaka-u.ac.jp
saigai@2dwww.tmig.or.jp masui@anes.med.osaka-u.ac.jp
ml-poison@ipc.hiroshima-u.ac.jp mcmq@iijnet.or.jp
jpmed.misc@umin.ac.jp rcml@falcon.m.ehime-u.ac.jp

 愛媛大学医学部救急医学の越智元郎でございます。本メールは上記のメ
ーリングリストなどに同報で投稿させていただきます。重複して受信され
る方には誠に申し訳ございません。

 さて、東海村での臨界事故におきましては様々な憂慮すべき問題が明ら
かになっています。私が所属しております救急医療メーリングリスト(eml)
におきましても、核物理学の専門家や救急医療関係者の間で、突っ込んだ
論議がなされてきました。私共の論議の中で特に時期を逃しては達成でき
ないこともあり、このたび2つの提案を骨子とする緊急提言をさせていた
だくことになりました。

 皆様におかれましては、様々な形でわが国の危機管理に関与しておられ
ると拝察しております。私共の提案にぜひお目通しいただきたく、どうぞ
よろしくお願い申し上げます。

 また私共の緊急提言を、関係する機関、組織、部署などにご転送いただ
きたく、どうぞよろしくお願い申し上げます。また可能でしたら、転送の
重複を避けるために、本メーリングリスト上か私宛の個人メール(下記)
で、提言の転送先についてご一報いただければ誠に幸甚と存じます。

 また本提言は公開ホームページ上に掲載されております。皆様の中でホ
ームページをお持ちの方は、是非ともリンクをお願いいたしたく、どうぞ
よろしくお願い申し上げます。
  http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/99/rinkai.htm
  http://ghd.uic.net/99/rinkai.htm

 皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。

〒791-0295,愛媛県温泉郡重信町志津川
            愛媛大学医学部救急医学教室 越智元郎
            TEL 089-960-5710(直通),FAX 089-960-5714
e-mail: gochi@m.ehime-u.ac.jp

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  【臨界事故周辺住民の健康状態推測と対策のための緊急提言】

臨界事故に関して周辺住民の今後の健康状態を推測し対策をたてるため、
次の緊急提言を行う。

1.放射線モニターの測定結果に関する詳しい全データ公開とその解釈の
  公開をお願いする。

  原子力安全委員会緊急技術助言組織におかれては、空間放射線量や水、
  土壌等の放射能量の各種データの検討を進めておられることを評価す
  るものであるが、より広く国民的関心に応えつつ周辺住民の今後の健
  康状態を推測し対策をたてるため、その検討は全国の関係分野の専門
  家によっても、並行して検討されることが望ましいと考える。そのた
  め、詳しいデータの全面的公開と現状におけるその解釈の公開をお願
  いする。例えば、(株)JCO周辺線量当量率時系列測定値4(1999.10.3)
  (資料1)には、東海地区のモニタリングポストにおける放射線監視
  状況が公開されているが、その詳細データは判読・利用が著しく困難
  に思われる。あるいは、臨界事故後の東海村舟石川周辺等のγ線検出
  量のデータ(核燃料サイクル開発機構による、資料2)をみると、事
  故が発生したとされる30日午前10時半過ぎにはガンマ線が検出さ
  れておらず、同日夜になってγ線が初めて検出されている。しかしこ
  の点の理解は、同夜の降雨との相関を含め、一見して自明ではない
  (資料3)。これらの疑問に対する理解を深め、広く国民的不安を解
  消しつつ、周辺住民の健康状態を推測し対策を広く検討するため、全
  国の関連分野の専門家有志諸氏の眼力と分析力による広範な検討結果
  を活用することを提案したい。そのために、詳しいデータとその議論
  の全面的公開が必要であり、関係各機関による一層のご努力をお願い
  する。

  資料1: http://www.sta.go.jp/genan/jco/jco91003_4.html
  資料2: http://www.jnc.go.jp/ztokai/kankyo/realtime/graph168.html
  資料3: http://www.m.ehime-u.ac.jp/~mtanaka/nuclear/


2.事故後の住民家屋内での中性子線量の緊急調査をお願いする。
  (その際、家庭の食塩中の24Naや電線中の64Cuの測定が適切である)。

  未解明の問題のうち最大の関心事の一つは、様々な環境条件下で自宅待
  機をされた周辺住民の身体に対してどの程度の中性子線量が吸収された
  かを定量的に見積もることである。これを可及的速やかに明らかにする
  ため、近在地域の家屋内等における環境下において、家庭の食塩などか
  ら 24Na(半減期 14.96時間)、またその測定結果をクロスチェックする
  ため家庭内の電線(銅製)などから 64Cu(半減期 12.70時間)等を測
  定することを緊急提案したい。この調査は上記の生成物質の放射性崩壊
  (資料4)による減少を最小限に止めるため(従って測定精度を上げる
  ため)、できるだけ早期に実施することが望まれる。これを実施するに
  あたっては、最適な測定方法の提案と必要設備の準備、人員、実施期間、
  発生する費用等の見通しを立てることが必要であるが、その評価のため
  にまず、地域内の家屋数ヵ所でサンプル調査を行うなどが有効と考えら
  れる。周辺住民の今後の健康状態を推測し対策をたて、以て住民の不安
  に応えるため、各家屋における中性子被曝量の正確な測定結果とその意
  味の理解が必要不可欠である。この緊急調査の見積もりが出た段階で、
  是非とも前向きに測定に関する検討をされるよう、お願いする。

  資料4: http://ie.lbl.gov/education/isotopes.htm
       http://www.dne.bnl.gov/cgi-bin/CoNquery?nuc=Cu64 など。


   日本救急災害医療情報研究会・有志     平成11年10月5日
   (救急医療メーリングリスト、eml)
    http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/ML/

    水野義之(京都女子大学 宗教・文化研究所、平成12年度より
        同大学現代社会学部/設置認可申請中、日本物理学会委員)
        mizuno@kyoto-wu.ac.jp
        http://www.kyoto-wu.ac.jp/ 
        http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~ymizuno/ 
    越智元郎(愛媛大学 医学部 救急医学)
        gochi@m.ehime-u.ac.jp 
        http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/jp/
    田中健次(電気通信大学 大学院 情報システム学研究科)
        tanaka@is.uec.ac.jp 
        http://www.tanaka.is.uec.ac.jp/

本提案に関するURL:
  http://apollo.m.ehime-u.ac.jp/GHDNet/99/rinkai.htm
  http://ghd.uic.net/99/rinkai.htm

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 愛媛大学医学部救急医学 越智元郎(gochi@m.ehime-u.ac.jp)

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提言は、以上です。


次に、この提言の基礎となった、(私の)議論の部分を、転送します。
ご参考までに。ご批判、ご提言など、お聞かせいただければ、幸いです。






中性子による被曝量を見積もる方法
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Date: Mon, 04 Oct 1999 20:15:07 +0900
To: young-phys@etl.go.jp
From: "水野 義之 (Yoshiyuki MIZUNO)"<mizuno@kyoto-wu.ac.jp>
Subject:[young-phys:14958] Rinkai Jiko

水野@京都女子大です。

民家における(自宅待機中)、中性子による被曝量を見積もる方法を
考えてみました。

どんなもんでしょうか?


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市民が受けた中性子線量を見積もるために、どの家にもあるはずの銅にある
銅64(半減期約12.7 時間)を測定すべき、という提案をします。


身の回りにある物質で、中性子で放射化した場合に、半減期が数10分から
数時間程度になる物質は、以下のようです。

アイソトープ 半減期 
60m1Co 10.467 m 2+ %IT=99.76 3, %B-=0.24 3
55Cr 3.497 m 3/2- %B-=100
64Cu 12.700 h 1+ %EC+%B+=61.0 3, %B-=39.0 3
66Cu 5.120 m 1+ %B-=100
56Mn 2.5785 h 3+ %B-=100
51Ti 5.76 m 3/2- %B-=100
52V 3.743 m 3+ %B-=100
69Zn 56.4 m 1/2- %B-=100

これらは、すべて、自然界に、ある程度以上の量、
存在するものだけを、選んでピックアップしてあります。
参考資料は、
http://ie.lbl.gov/education/isotopes.htm

広島原爆での中性子線量の再評価に、最近も、銅(当時、放射化された
もの)を現在、はかって、やっていたりしますから、おそらく、銅64を測る
のが、賢明でしょう。半減期が12.7時間で、ちょうど測りやすい程度です。

銅は、銅の電線など、身の回りに、それこそ、いくらでもあります。

これを測れば、各、市民の皆さんが、ご自宅で、それくらいの中性子線量
をあびたか、たちどころにわかることでしょう。

誰か、やるべきであると、確信します。

測定方法は、いくつかありますが、どれも実現可能で、やれます。

微量であっても、測れます(微量の場合には、ちょうど広島原爆当時の
ものが今でも測れるのですが、その方法を使います。それには、AMS
=加速器質量分析法、というのでやります。それには、近くであれば、
筑波大学のタンデム加速器センターでそういう測定が出来ます)。



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補足しておきます。

1)天然の銅は、銅63と銅65が、7:3くらいの割合で、まざっています。
そのうちの銅63が中性子を吸収して放射化したものが、銅64です。
従って、まず、十分の量が、身の回りに存在することがわかります。

2)銅64の半減期は、12.700 時間 です。

3)崩壊のしかたには、2通りあって、
Mode of decay: Electron capture to Ni-64
Branch ratio: 61.00 %
Decay energy: 1.675 MeV

Mode of decay: Beta to Zn-64
Branch ratio: 39.00 %
Decay energy: 0.579 MeV

つまり、61%の確率で、Ni64になりますが、これは測定が難しいので、
採用しないことにします。しかし、
39%の確率でベータ崩壊をしてZn64(亜鉛64)になり、その時、
0.579 MeV のベータ線を出します。これが使えます。そのエネルギーは、
もうちょっと正確には、578.725 +- 0.854 keV 、よくわかっているわけですね。

4)これくらいのベータ線は、非常に測定が容易ですので、その問題
もないでしょう。

5)問題は、おそらく、ごく微量でしょうから、その問題があります。
そういう意味で、測定が難しい。

やはり、筑波大学のAMS を使って、がんがんやるのがいいかもしれません。

市民に持ってきてもらう資料としては、銅の電線の切れはしよりも、
10円玉がいいでしょう。事故現場との方向性の違いによるばらつき
を平均するために、50円(5枚)くらい、持ってきてもらうといいでしょう。

後で、返却できない、と、ひとこと、了解をもらうべきでしょう(笑)。

なお、測定方法については、どういう方法で正確に測れるのか、
ちょっとやってみないと、わからないです。



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At 06:14 1999.10.03 +0900, 水野 義之 Y.Mizuno wrote:
>1)天然の銅は、銅63と銅65が、7:3くらいの割合で、まざっています。
>そのうちの銅63が中性子を吸収して放射化したものが、銅64です。
>従って、まず、十分の量が、身の回りに存在することがわかります。

このあたりは、
http://www.webelements.com/webelements/elements/text/isot/Cu.html
を見てください。

>
>2)銅64の半減期は、12.700 時間 です。
>
>3)崩壊のしかたには、2通りあって、

このあたりは、
http://www.dne.bnl.gov/cgi-bin/CoNquery?nuc=Cu64
です。


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At 06:14 1999.10.03 +0900, 水野 義之 Y.Mizuno wrote:
>>市民の全員から、自宅から銅の...放射化された銅64(半減期約12.7 時間)
>>の残留放射能を測定することによって、市民が受けた中性子線量がわかります。

この提案の問題としては、希望者だけだとしても、量的に大量なサンプルの
処理能力のある施設が、どれだけ存在するか、ということでしょう。

>なお、測定方法については、どういう方法で正確に測れるのか、
>ちょっとやってみないと、わからないです。

アイデアはあっても、実用的に実施するのは無理、という問題、がありえます。

残留放射線の強度の推定(評価、予測)をちゃんと、計算してみないと、
なんともいえないです。

強ければ、簡単に測れます。

そこまで含めて、ちょっとみてみないと、わからないでしょう。

当初は、どこか近隣の民家での)サンプルを、調べてみることが
適当でしょう。

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以上です。長文、まことに失礼しました。





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Yoshiyuki MIZUNO 水野 義之(大阪府 茨木市) ymizuno@yo.rim.or.jp
 Office: mizuno@kyoto-wu.ac.jp Tel/fax 075-531-7104 (京都女子大学)


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