[BlueSky: 970] 東海村臨界事故の影響は?


[From] HIROKI Masato [Date] Sun, 3 Oct 1999 18:48:21 +0000

青空ML、evolve、jeconetの皆様

広木@茨城県民です。

本日、事故現場より半径12km位の所から戻って参
りました。なんと私の実家です。知らずに所用で木
曜の夜に帰ったら、とんでもない状況になっている
のにびっくりしました。しかしその時点(2330ぐ
らい)では、まだ常磐高速は通行可であったのには
あきれました。この点では関係機関の対応が遅かっ
たのでは?

いつかは起きるであろう事故が、ついに起きた訳で
す。今まで日本では原発以外の場所では臨界事故が
ありませんでしたから、各方面の対応にいろいろ手
落ちがあったようです。しかし、東海村の、住民非
難勧告の対応は適正であったと思います。

また、今回の事故で最も知りたかった情報、すなわ
ち、放射性同位体の漏洩が合ったのかないのか、と
いう点については、なかなか報道がなく、その点が
非常にイライラする所でした(体内被爆はイヤよ〜
ん)。

しかし、よくパニックがおきなかったといまだに不
思議に思っています。これは茨城県民の県民性なの
だろうか。私だったら事故現場近くにすんでいたら
速攻で逃げ出します。それどころか、水戸の繁華街
は、事故当日の木曜日の夜も大変なにぎわいで、臨
界事故などどこ吹く風、と言った風情でした。みん
な、無神経だなあ、って、お前さんはそこで何をし
ていたのじゃって?はは、それはないしょ。

とにかく、今回の事故では環境中に出た放射性同位
体はほとんどないようなので、周辺環境に対する影
響というのはあまりないようで一安心です。ただ、
今後のモニタリングでどのような結果が出るかまだ
分からないので、どうなのでしょうか?

チェルノブイリの原発事故とは事故の規模がケタが
違いますから、それと同列視するのは杞憂かもしれ
ませんが、いちおう、生態学関連で事故後の追跡を
行なったものを参考に挙げておきます。いずれも
Moller の仕事で、Fluctuating Assymmetry(ま
たかよ、って言わないで)を測定することにより、
個体の生存能力を推定しています(注)。

1:Moller, A. P. Oikos (1998) 81: 444-448
Developmental instability of plants and radiation from Chernobyl.
植物の花のFAが、事故現場に近づくにつれ大きくな
ることを示している。

2:Shykoff, J.A. Moller, A.P. Oikos (1999) 86: 152-
Fitness and asymmetry under different environmental conditions in the barn
swallow.
ウクライナのツバメのFAを測定し、事故前に捕獲さ
れた博物館収蔵品と比較することにより、事故後FA
の増加が見られることを示している。

今回の東海村の事故では動物はほとんど影響はない
かもしれませんが、移動性の低い植物などは今後の
推移を見る必要があるのかもしれません。

(青空MLの方への注)Fluctuating assymmetry とは:
多くの動植物では左右相称性が見られますが、細かく
測定すると、ごく僅かな左右の大きさのずれと言うの
が観察されます。このずれは発生過程での偶発的な要
因によって、左右の器官の成長が同調しないことによ
って引き起こされると考えられ、また、正常発生可能
かどうかという、個体の遺伝的質を示すと考えられて
います。

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広木眞達(HIROKI, Masato)
国際基督教大学生物学教室加藤研究室
〒181-8585 三鷹市大沢3-10-2
TEL 0422-33-3269 (加藤研究室)
email address:hiroki@icu.ac.jp.
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