大塚です
臨界はおさまったようですね。
核燃料サイクル開発機構の
http://www.jnc.go.jp/ztokai/kankyo/realtime/graph48.html
あたりにγ線量の時系列データがあります。
今回の事故は「高速増殖炉」用の燃料の製造過程で起きた事故なので、核燃
料サイクル開発機構にとって人ごとではない筈ですが、新着情報にもこれに関
するニュースはありませんでした(10:30現在)。
上記のページのグラフではγ線量に2回のピークがあります。
最初のピークが午後ですので、事故発生とは一致していないようです。
2番目のピークで特に顕著ですが事故現場から近い順に線量のピークができて
いるようです。
以下、あえて素人がうろ覚えの知識を元に書きます。詳しい方からの訂正等の
フォロウをお願いします。
昨夜「増加しているので再び臨界が云々」いう文脈で出てきたのは中性子線
です。この中性子はウランの核分裂の際に出てくるものなのでこれの量は核分
裂の量の目安になるのだと思います。中性子線は簡単には止まらないので防護
が難しいと思うのですが、線源が動かなければ距離さえ取っていれば、とりあ
えず心配はないと思います。
ところが、上記のグラフが今回の事故と関係があるとすれば、事故後しばら
く経ってからγ線源となるモノが施設外に出て来るようになったことを意味
するのではないでしょうか。報道(主に新聞と新聞社のHP)だけではここら辺に
ついて、いったいどうなっているのか分かりません。
中性子線に対する対策として「家の中にいて気密性を高める」はあまり役立
たないように思いますが、比較的止まりやすいα線やβ線に対しては有効だと
思います。線源となる物質に触れない、特に体内に取り込まないという意味で
も重要です。
これは想像で書いているのですが、事故から半日も経ってから屋内避難の勧
告が出たのはこの時点で何らかのモノの放出が確認されたからかも知れません
ね。細かな情報提供がなされていないからこのように不信感・不安感からの憶
測が生じるわけですので、詳しくて迅速な情報の把握と提供を望みたいもので
す。
科学技術庁には
http://www.sta.go.jp/genan/jco/jco.html
に東海村ウラン加工施設事故関連情報がありますが、「通達」といった趣で、
期待した細かい情報提供はありませんでした。
このような状態を見ると
http://www.jca.apc.org/cnic/action/release/1999/0930.html
にある原子力資料情報室の厳しい指摘にうなずいてしまいます。
かなり早い段階で現場の作業員の人為ミスが指摘されていますが、チェルノ
ブイリを思い出してしまいます。あれは何年もたってから欠陥原子炉と改善を
怠っていた管理者の責任が重大だったことが明らかになりました。
たしか、原子力開発の安全性の宣伝では安全率を10倍とか100倍に見込
んでいることや幾重ものフェイルセイフが挙げられていたように思います。数
倍の投入で臨界に達する状況で、ミスがあってもそれを止めるシステムがな
かったらしい今回の事故は、これまでの宣伝も信じられなくするものだと思い
ます。
朝日新聞のページ
http://tokyonet.asahi.com/paper/special/tokai/991001a01.html
には
>タンクに入れられたウランは16キロ、うち核分裂性は約3キロ。一方、原
発の燃料にある核分裂性のウランは約3トンで、量が少なく事故の際の規模が
異なる。臨界が続いても、爆発したり施設が破壊されたりするような事態には
ならないと、専門家は言っている。
との記述があります。今回の事故やチェルノブイリで各々どの程度の割合で
放射性物質が外に放出されたかは分かりませんが、元々の量が違うので、周囲
への影響も何桁か小さいだろうという予測(というより想像)は訂正しなくて
も良さそうです。
大塚公雄
東京医科歯科大学
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