[BlueSky: 961] Re:945 「買ってはいけない」の反響


[From] Toshihiro Maeda [Date] Thu, 30 Sep 1999 07:42:52 +0900

前田@アースバグ号です。

みなさん早速のコメントありがとうございます。とても参考になりました。

佐藤光之進さんのコメントを読んでいて、科学者などの専門家と市民の間の溝について考
えたことを書きます。




佐藤光之進さん
> こういう、何か怪しいジャーナリスト?研究家?活動家?が
> 出てくるのが嫌いです。たいてい科学とは縁の無い人なんですよね〜

怪しいことが嫌だというのは理解できます。しかし科学に縁がないと何もコメントできな
いというのも、ちょっとひどい話です。

素人は口を出すなといわれてしまうと、大部分の人は何も言えません。学識者の言葉を黙っ
て聞くしかありません。

・・・

専門家は「建前のことば」しか言ってくれません。
でも実は、難しいケースに直面して悩みを抱えていたり、人間的な葛藤を抱えていたり、
それぞれの持ち場で模索されたりしていると思います。

正確な科学データ、科学的に正確な記述...、こうしたことは非常に大事なのですが、専
門家以外には敷居が高いし、不十分だと思います。

現場で研究している人は、いったい本当は何を考えながら仕事をしているのか。どんな悩
みをもっているのか。建前の裏にはどんな本音が隠されているのか。自分たちの科学技術
をほんとうに信頼しているのか。そういうことを、もっと一般の人々に見せていっていい
と思うのです。

もちろん、本音を出したり、悩みを出すということは、できればやりたくないことだと思
います。でも、本音や悩みを表に出していくことで、「ああ、自分たちと同じひとりの人
間なんだ」ということに、人々が気づくかもしれない。「そういう本音と建て前のぶつか
り合いのなかから出てきた研究結果、実験結果だったんだ」、そういうことをはじめて気
づくかもしれない。それが、とても大事なことだと思うのです。

普通の人は、専門家を前にすると、ほんとうに自分の言いたいことが言えなくなります。
思わずことばを飲み込んでしまったり、感情を押し殺したり、偽ったりします。なぜかと
いうと、専門家に対して話をしようとすると、専門的なものの言い方が必要なのに、そう
した言い方ができないからです。

で、そういう声なき声のようなものは、ほとんど専門家には伝わりません。

こうしたズレが、怪しいジャーナリスト?研究家?活動家?がでてくる土壌になっている
のではないでしょうか。(今月の「噂の真相」誌によると、船瀬俊介は本当に怪しいらし
い。)

科学的根拠のないことを批判することは大事なのですが、なぜエセ科学のような本が売れ
るのかもっと考える必要があります。科学的に正しい情報を知りたいという要求は、昔と
くらべれば相当あがったと思います。環境に不安がある世の中だから当然です。できれば
本当のことを知りたいんです。

「買ってはいけない」は、確かに嘘や誇張の多い文章ですが、専門家よりではなく市民よ
りの文章で、高みからものを言うような感じではないように思います。
「カップラーメンを食べると腹の調子が悪くなる...」とか、実感が感じられるわけです。

今まで専門家の建前的な意見を黙って聞くなかで、少なくない不幸な事件もあったように
思います。これでは、専門家の正しいけど建前的な意見よりも、「合成化学物質すべて拒
否、天然物礼讃」のようなものにひかれるのもしょうがないのではないかと思います。



以上の文は、森岡正博さんの循環器病センター講演の文章をもとに書きました。(ほとん
どパクり)これは医者と患者の関係についての話題なのですが、私は科学技術全体に通じ
る大きな問題点だと考えてるので、一度読んでほしいと思います。


森岡正博の生命学ホームページ
http://member.nifty.ne.jp/lifestudies/


それではまた。


:Ω:
Toshihiro Maeda (q-psyche@air.linkclub.or.jp)


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