[BlueSky: 911] Re:900 還元論


[From] "K.Iida" () [Date] Tue, 14 Sep 1999 15:41:45 +0900 (JST)


後藤さま 青空MLのみなさま


「もっと実行に近いところの話し合いを」、から外れて、飯田です。


還元論について、私は専門家ではないし、正しい説明ができないかも知
れません。ただ、知っていることを何とか述べます。


> 生命を理解するためには、少なくとも、生命のしくみ(メカニズム)と、
> そのしくみが進化するにいたった歴史的要因の二つを理解する必要があ
> ります。利己的遺伝子「論」は、生命の「進化的要因」を理解するとい
> う点では重要ですが、生命のしくみ(メカニズム)に対する理解におい
> ては無力です。

生命のしくみが利己的遺伝子論に乗っ取って進化したもの(形成されて
きたもの)なら、利己的遺伝子論が、生命のしくみに対する理解に、無
力であるはずはないです。なんらかの痕跡を残しているはずです。


しかし、利己的遺伝子「論」は、少なくともその啓蒙段
> 階では、「生命は利己的遺伝子の乗り物」という表現に端的に象徴され
> るように、「生命のすべて」を説明できる理論として普及されていると
> 思います。

普及のされ方が悪いですね。一番の問題です。後藤さんも、ここ、青空
MLで誤った普及をしてしまったと思います。(広木さん以外、誰も異
議を唱えなかったのは、遺伝子還元主義的立場の専門家がいらっしゃら
ないからだと思います。私も適任ではありません。どなたか代わって欲
しいです。)

利己的遺伝子論は、行く行くは生命現象の多くを説明できるようになる
だろう、とは言っていますが、すべてとは言っていません。遺伝子で
「ある程度」決定される「領域はある」、つまり、決定されない領域が
ある、それは認めています。特に、思考ですね。反対に、血液型や目の
色なんて、かなり線形的に扱っても問題のない現象です。


> 自然を経済的資源と等価におく作用も、同じ意味で「還元」と言えると
> 思います。

環境を金銭的価値に置き換えるには、広木さんもおっしゃるように、価
値の変換が起きます。便宜的なものであって、そんなやり方で自然環境
の真価を定めてしまおうと言うのではないし、あまり目くじらを立てな
くても、と思います。抜け駆けを防ぐ手段とおっしゃっていたと思いま
す。


> 僕の捉え方では、全体を一部の部分、またはその線形的な結合に置き換
> えることが「還元」です。全体から一部を切り出し(抽出し)、、、と
> いう方法は「分析」です。この分析結果を総合する段階で、「本質」的
> な部分であれそうでない部分であれを「全体」とするか、その線形的結
> 合を「全体」とする立場を、還元論といっていることになります。

「後藤さんの捉え方」だと、還元の未熟も含めての還元論です。この定
義では、自分を還元主義者と言う人はいないと思います。線形的結合を
全体としてしまうのは、それら同士の絡みの解析を放棄することです。
未熟な結果から演繹してしまう傲慢です。わざわざ誤ることは、還元主
義の目的ではないはずです。


> いること、条件を理想化していること、といった限定条件下での「振る
> 舞い」であることを科学者は自覚しています。この自覚を喪失した時、
> 科学者は還元論者になるのでしょう。

やっぱり、この「自覚を喪失」と言う点が問題なんですよね。むしろ、
還元主義者の方が、単純な結合をされることに敏感で、嫌がっているし、
うんざりしています。


> 原子ー分子ー細胞ー個体ー個体群・・・という様々な階層(次元)
> 毎に固有な法則性を認めず、例えば、個体現象を細胞現象の単純
> 和(線形的結合)で理解できる、という科学(学問)における独
> 特の立場を還元論、というのだと僕は思っているわけです。いわ
> ゆる物理帝国主義の路線上のものです。

「と僕は思っている」と勝手に思われても、これは誤解ですね。「固有
な法則を認めず」は還元主義者の立場ではありません。遺伝子還元主義
者と呼ばれている人たちは、人文学の独立性と必要性はちゃんと認めて
います。人文系に貢献できることになるだろう、とは言っていますが。


>広木さん
せっかく、新しい捉え方定義を提案して歩み寄られたのに、
邪魔して、すみません。


Iida







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