[BlueSky: 899] Re:885 還元論、生命倫理


[From] "K.Iida" () [Date] Mon, 13 Sep 1999 17:55:07 +0900 (JST)


後藤さま 広木さま 青空MLのみなさま

 「もっと実行に近いところの話し合いを」の飯田です。
  (言えなくなってきたな...)

私も広木さん同様、還元主義者ではないつもりですが、少し意見を述べ
させて下さい。

[841]後藤さん
> 一卵性双生児等価論は、したり顔でこの還元論的見地を普及すること
> によって「恐怖感」なり「嫌悪感」を払拭しようとする試みでしょう。
> 臭いものには蓋、です。

これは、広木さんもおっしゃる通り、詐欺でしかないです。生命の人為
操作と言う経過が重要なのに、結果に着目させることで(しかも結果を
自然と等価だとして)、目を逸らさせているのですから。還元論とは関
係ないように思います。むしろ、一卵性双生児等価論は、遺伝子還元論
的見地を隠すことで、クローン人間への嫌悪感を弱めているのだと思い
ます。

> ただ、全体を再構築したか、再構築する姿勢を見せた還元論を、僕は見
> 聞したことがありません。

還元は方法でしかないですから、全体を正しく把握する目的は、持って
いないはずはないと思います。私は、科学も一種の還元だと思っていま
す。物や現象をより単純なものに還元し、デジタル化することで、言葉
では伝わりにくい情報を共有することができるようになります。例えフ
ラスコの中の物理現象であっても、全体を正しく数値に還元することは
できません。が、ある程度定量的な現象の予測は可能となります。これ
からも、人間が何かを理解し、その情報を共有しようとする限り、還元
の試行は阻めるものではないと思います。還元することへの批判は、還
元の仕方への監視に替えられた方が建設的と思います。

[846]後藤さん
還元論では、部分同士の「線形的」結合を全体とみなす、という点です。
部分同士の結合のあり方が線形的であることが前提されているために、
「再構築」過程が事実上行われていない、というのが、還元論に対する
僕の見方です。

これはその分野での科学が未熟だからだと思います。問題なのは、未熟
な科学が、未熟と認識されずに力を持ってしまうことです。この場合、
後藤さんのおっしゃる線形的結合が、他のファクターを無視して絶対的
な真理として認識されることが問題であって(単純な線的結合は情報と
しての伝達が容易な分、余計にその危険は大きい訳ですが)、還元しよ
うとすること自体ではないと思います。線が全体を再構築できないのは、
パラメータの不足など方法に原因があると思います。自然環境の中で人
間以外の生物も生を満たしていると感じることで人間の中に生じる満足
感(価値を共有しようとするなら人間にはこう言う捉え方しかできない
と思います)も、一つのパラメータに加えられれば、反発は多少軽減さ
れるのでは?(余計にダメかな) 私はゲンゴロウさんのおっしゃるよ
うな超心理の存在も強く感じていますが、言葉や数字と言う媒体なしの
人間同士のつながりに、今のところ再現性がない限り、現在の科学でや
って行くしかないと思っています。

ただ、環境問題など、理想と現実が大きく離れていて、原因も明確な場
合は、取りあえず動くことが必要に思います。目的地と現地点が遠いほ
ど、漠然とした方向さえあれば、それが実は南南東でも南南西でも、取
りあえず、南へ行くことに異議はないでしょうから。消費を望む企業も
人間の集団です。経済的なリスクをなくしてもらえれば、環境汚染は望
まないはずです。後は政治の問題。銀行が倒産すれば預金が戻ってこな
いのは中学生でも知っていることなんですから、不良債権の処理にまわ
すぐらいなら、製造と消費のあり方が変換しても、体力のない中小企業
がつぶれたりしないよう計らうなど、税金は、環境保護のために使って
欲しいです。

広木さん
> では、熟成させたものを:
> 『クローン人間生産は、ある特定個人のゲノムを増加させるので、
> これは人間集団の遺伝子頻度を人為的にdriftさせるものである。
> したがって、容認することはできない。』
> これだと、「遺伝子頻度変化」ということを却下の根拠としていま
> すから、循環論法と言う、奸言論の基準を満たすものになります。

遺伝子頻度に人為を持ち込むことがダメだと言う前提があってこその理
論ですが、結婚して子供を産むのも人為と言えるかも知れません(意地
悪ですみません)。どこまでを人為をするか、個人的な意見でもお伺い
できるとうれしいです。生殖を経由しない、と言うところ辺りでしょう
か。


Iida






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