[BlueSky: 847] 起承転結のない話 Re:820 「理解する」ことと「感じる」こと


[From] Ken Goto [Date] Thu, 09 Sep 1999 21:18:47 +0900

青空MLの皆さん

                   後藤@帯畜大です。

このメールは、【734】の推奨にしたがい、一行を全角32字で書
いています。

 ※ 飯田さん、このメール末尾に【845】に触れます。

さて、池田さん【743】から始った【「理解する」ことと「感じる」
こと】スレッドですが、気にかかっていた点をつれづれなるままに申
し上げたいと思います。

まず第一に、この二つの過程は互いに拮抗する関係にはないのではな
いか、という点です。

・・もちろん、例えば触感のような「原始的な(?)肉感」では、理
解することと感じることとはお互いに無関係な側面が強いことで
しょう。でも、この場合でさえ、触れ(られ)る相手の人間なり
動物なり植物なりに対する「理解」のあり方によって、触感が異
なってくるのではありませんか?

このスレッドで問題にされていたのはより高級で「芸術的な」感覚で
した。そこでの論旨を敷延すれば、西洋には芸術が育たない、という
矛盾した結論が出てきてしまいます。

日本にも西洋にもそれぞれに特有な芸術文化が培養されてきた。これ
が事実です。つまり、理解することと感じることとを対立的に論じて
も不毛なのではないか、ということです。そうではなく、森羅万象を
どのような方法と態度で理解するか、という点に彼我の違いがあるの
だ、と思うわけです。

・・・日本芸術においても、芸術家は彼(彼女)に固有な視点で自然
を「深く」理解している。それは、なるほど科学的理解とは異
なるかもしれないけれど、「理解の一形態」であることに違い
はありません。その理解がなければ、感動的な芸術を産むこと
はできないかもしれない。ま、僕は芸術家ではないので、曖昧
に表現しておきますが。

中澤さん【772】:
> (件名:[BlueSky: 743] 「理解する」ことと「感じる」こと Re:732 に於て)
> Fri, 3 Sep 1999 16:18:53 +0200頃,Noriaki Ikedaさん:
> > これは、「理解する」ということを重視してきた西欧の文化と、「感じる」という
> > ことを重視してきた日本の文化の違いが表れているのでは、と私は思います。
> この違いの根本には,世界観の違いがあるように思います。
> 鈴木秀夫さんという地理学者の書いた「森林の思考・砂漠の思考」
> NHKブックス,1978年という本に,いろいろ例を引いて2つの
> 世界観の違いを述べています。

より先駆的な論考は梅棹忠夫「文明の生態史観」(中公文庫)かな?
世界観の違いという点だけで言うなら【186】で引用した「我が輩
は猫」の一節にも明快に述べられていますね。

でも、風土なり生態学的環境なりが世界観形成に与える影響は、少な
くとも近現代では微々たるもの、と言ってもよいかもしれませんね。
例えば↓

このスレッドで「ドイツ人は節約家」という話が出ましたが、今の
(少なくとも西洋系)アメリカ人だって、今の日本人に比べれば余程
の節約家でしょう。

・・・何故、日本人は「倹約が美徳」観をこうもあっさり捨てること
ができたのか?これに対し、西洋系の人々は、むしろ彼らの
生活スタイルを固持し続けてきたようにみえるが、それは何故
なのか。

「理解」したいなぁ。

で、とりあえずの仮説:

西洋人は、彼らの伝統的な生活スタイルの中で、西洋テクノロ
ジーを産み育て、世界征服・侵略を果たした。西洋テクノロジー
は彼らにとってのノームだから、、、なんというか、、、彼ら
の伝統的生活スタイルそのもの、というか・・・

これに対し、日本人にとって、西洋テクノロジーは「よそいき」
である。日本人の伝統的生活スタイルを捨てることによって
(「のみ」かどうかは知らないけれど)受容できる代物であっ
た。「倹約が美徳」まで捨てる必要はなかったけど、、、ほら、
「おのぼりさん」とか「成り金」とか、、、「金の使い方」を
知らないから、滅多やたらに買いまくるでしょう。あれと似た
ような「感じ!」で、捨ててしまった。

・・・西洋人からは戦後の日本人はエコノミックアニマルとし
て軽蔑されるわけですが、、、江戸以前(もしくは明治
以前)なら、むしろ尊敬されていたと思います。

あっと、池田さんのおっしゃる「起承転結」を配慮することなく、つ
れづれなるままに書いてしまいましたが、お許しあれ。

さて、このスレッドではまた、虫の鳴き声や風の音が西洋人には「雑
音」として聞こえる、というような話も出ました。

昔、角田忠信(東京医科歯科大教授)さんは、「日本人の脳」(大修
館書店、1978)で、面白い研究を紹介していました。

日本人は、虫の鳴き声や風の音を左脳(言語優位脳)で聴くが、その
他の国の人々は中国人や韓国人を含め右脳で聴く。西洋音楽はどの国
の人々も右脳で処理されている。日本人と共通の「使い分け」をして
いるのは、何と、中国人や韓国人ではなく、ポリネシア人だ、と。

日本人とポリネシア人に共通で、その他の国の人々と違う点は、母音
の使い方なんだそうで。幼児期をこの母音環境で育つと、人種に関わ
りなく上述の「使い分け」パターンになるそうな。

田村さん【644】:
> 1)サンパウロ市内の地下鉄の駅名は、ポルトガル語(例えば、Brigadeiro Luis
> Antonioというような)とインディオ語にその由来を持つ駅名があります。ex
> Jabaquara のように、必ず子音と母音が交互に来るような言葉です(他、駅名ではな
> いですが参考に Itapetininga、Boituva、Sorocaba、Piracicabaなどなど、、)。
> 黙って乗っていると、シンガポールの地下鉄を思い出します。私はマレー語はわかり
> ませんが、あのような母音と子音が交互に来る、そういう音の構成になっている、と
> 素人の耳に聞こえます。
>
> 2)インディオは、どんぐり目に団子鼻が特徴。顔も丸い。
> 彼らは、相撲を思い起こさせるような男性の儀式をしたり、稲束を思い起こすような
> 何かの植物を束ねておいたりしているし、顔、身体に刺青をしています。
これ(↑の二つ)、まさしく、ポリネシア人の特徴ですよね?

ポリネシア諸島の人々が、いつのことか知りませんが、船に乗ってか
たや日本に、かたや南米に旅し、日本人やインディオになっていった
というシナリオはありえないのでしょうか?

===>中澤さんはじめ、詳しい方々。


以上、今回は、このスレッドを拝読してきた限りでの残像(印象)を
手がかりに思い付くまま、引用を十分に行うことなく雑駁に書いてし
まいました。ごめんなさい。

***************************************************

なお、
飯田さん【845】:
> > > 主に「共有地の悲劇」を拝読してます。
>
> > 恥ずかしい。。ことです。
>
> 何か言われるかな、と思ったのですが、
> 全部読まないのはやっぱり失礼でしょうか。

いやぁぁぁ、これ、飯田さんの完全な誤解ですよ!
ゲンゴロウさんは、「共有地の悲劇」スレッドで御自分のメールが読
まれていることに対して、「恥ずかしい」と照れたのですよ、きっと。
ですから、飯田さんに対するお叱りでも何でもないです。

ですので、飯田さんの↓の御発言は↑の御発言とは切り離します。

> そうしますと、自分なりに何か考えを持っても、
> 「発言はできないな」と思う人が増えてしまうような...。
> 「これまでの議論の要旨」なんて言うものまで用意されているのは、
> 私のような脆弱者でも発言させてやろうじゃないか、と言う、
> こちらのML管理者さんの暖かいお心遣いのように思ったのですが、
> 違いますでしょうか。

いや、まぁ、「脆弱者」を特に意識したわけでもないと思いますが。
脆弱者を自覚される方が、件のページでもって発言の勇気を得られる
とすれば、望外の喜びです。

青空MLの趣旨文から抜書きしておきますね(以下の三つの●)。

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由に語りあい、ともに学びあうためのメーリングリストです。

●そこで、そんな願いをもったさまざまなひとびとが出会い、ともに学び、知恵
を自由に出しあえる広場となるよう「環境自由大学 青空メーリングリスト」
をつくりました。

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い思いつきまで、幅広い話題を歓迎します。だれかがあることを発言して、そ
れにこたえるひとがいれば、それが本MLでの話題になります。ぜひ、御気軽
に発言してみてください。

***********

ですので、御気軽に御発言ください。


後藤 健
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