[BlueSky: 776] Re:720 遺伝子操作で賢いマウス誕生!


[From] Minato Nakazawa [Date] Mon, 06 Sep 1999 13:36:04 +0900

中澤@東京大学人類生態です。
なんか,あまりに舌足らず過ぎるコメントだったと思うので,
もうちょっとフォローします。

(件名:[BlueSky: 720] Re:719 遺伝子操作で賢いマウス誕生!に於て)
Thu, 02 Sep 1999 13:26:46 +0900頃,Minato Nakazawa:
> (件名:[BlueSky: 719] 遺伝子操作で賢いマウス誕生!に於て)
> Thu, 2 Sep 1999 12:05:55 +0900頃,yuichiro komiyaさん:
> > 以前、ダニエル・キイスの「アルジャーノンに花束を」という
> > 小説を読んだことがあります。この小説は、外科手術によって
> > マウスの知能を増幅させる技術が開発され、それが人間に適用
> > されて、知的障害者が天才になる、という話なのですが、小説
> > と同じことが起こる世の中になったんですね。
> アルジャーノンもそうですが,Natureの元論文にざっと目を通し
> てみたらNMDAレセプターの過剰発現だったので,「BRAIN VALLEY」
> の方が近いように思います。
Brain Valleyというのは,瀬名秀明さんの小説で,先進国共同の
脳科学の巨大プロジェクトを通じて脳とは何か,人間とは何か,
神とは何か,と問いかける傑作SFです。作中,プロジェクトの
アイディアの一部として,NMDAレセプターを過剰発現させたマウス
の知能が向上し,感情を通わせ合うとかいう場面が出てくるのです。
NMDAの中でも違うレセプターではありますが,実によく似ています。
小宮さんのおっしゃる通り,現実が小説に追いついたかのような
印象を受けました。

著者たちが,論文の最後に「この研究はまた,知性や記憶を強化した
遺伝子組換え哺乳動物を作るための前途有望な戦略を明らかにした」
などと言っているのが,ちょっと怖かったです。脳の病気の治療に
使うという大義名分のもとに,人体に応用されるのも時間の問題かと
思われますが,人間の客体化を進めることになり,ますます自己を
失うような気がするので,ぼくは反対です。

なお,Natureの元記事は,
http://www.nature.com/server-java/Propub/nature/401025A0.abs_frameset
http://www.nature.com/server-java/Propub/nature/401063A0.abs_frameset
たぶん,フリーアクセスと思うのですが,上記URLから読めます。

=====
Minato Nakazawa, Ph.D. <minato@sv3.humeco.m.u-tokyo.ac.jp>
Department of Human Ecology, Univ. Tokyo


▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。