[BlueSky:06815] Re: COP10/MOP5開催地住民からのアピールへのご賛同のお願い


[From] "SUKA Takeshi" [Date] Fri, 8 Oct 2010 05:16:02 +0900

今枝さん

「COP10/MOP5開催地住民からのアピール」についてのご投稿に一部文字化けがありま
したので、{環伊勢湾原体験]MLに投稿されたものを代理で再投稿させていただきま
す。

                      須賀 丈

-----Original Message-----
---
今枝です

18日より始まる生物多様性条約開催にあたり地元名古屋
あるいは中部地方あるいは伊勢・三河湾流域圏の住民が
生物多様性の根源から考えぬいた一つの結論をまとめ
ました。

かなり難解な表現が続きますが熟読すればかなり理解できます。
ご賛同いただける方は下記までご連絡ください

1.個人の場合   個人名(必須)所属(任意)
 2.団体の場合   団体名(必須)

賛同連絡先  CBD市民ネット事務局  村瀬
連絡先メールアドレス
  apple-bear@nifty.com

皆様

 CBD市民ネット生命流域部会と中部ESD拠点推進会議では、
COP10/MOP5開催にあたり、「開催地住民からアピール」を作成しました。
今後、会議期間中にかけて多くの賛同者を得、会場内で会議参加者及び
国内外に向けて発信します。

また、会期末には次回開催地へのNGO引き継ぎにあたりアピール文書を託します。

アピールに賛同頂ける皆様を広く募ります。
下記まで、個人名あるいは所属先併記のどちらかでご連絡をお願いします。
また、団体としてご賛同頂ける場合は、団体名をご連絡してください。
ご賛同者情報ははアピール文書に掲載させていただきます。

 1.個人の場合   個人名(必須)所属(任意)
 2.団体の場合   団体名(必須)

賛同連絡先  CBD市民ネット事務局  村瀬
連絡先メールアドレス
  apple-bear@nifty.com

**************************************
***    




COP10/MOP5開催地住民からのアピール

 【共同提案者】

武者小路 公秀 (CBD市民ネット顧問)

駒宮 博男 (CBD市民ネット名古屋事務局コーディネーター)

大沼 淳一 (CBD市民ネット生命流域作業部会長代理)

羽後 静子 (CBD市民ネットジェンダー・マイノリティー部会長)



はじめに

われわれは、生物多様性条約第10回締約国会議の開催地である愛知・名古屋の住民と
して、生命の多様性の急速な減衰の危機に立ち向かっている全世界の人々に、生命と
その多様性を脅かしている万物の商品化、大量生産・大量消費・大量廃棄のグローバ
ル化の流れ、そしてそれを支えてきた近代合理主義に対して猛省を促すための協力を
よびかけるものである。



1.開催地:愛知名古屋・伊勢三河湾生命流域圏



開催地である愛知名古屋は伊勢三河湾生命流域圏に属している、世界でも稀なる豊か
な環境条件に恵まれた日本列島の中央部分に位置している。この列島の中央部には脊
梁山脈が発達し、それを源とする沢山の河川が急峻な斜面を駆け下って内湾へと注ぎ
込む流域がいくつも形成されている。特に、COP10開催地である愛知・名古屋都市圏
は日本有数の内湾である伊勢湾・三河湾とそれに注ぎ込む木曽川をはじめとする主要
10河川集水域からなる伊勢湾流域の経済と人口の重心である。この都市圏は古来か
ら、伊勢三河湾流域の生態系サ−ビスをふんだんに享受しながら発展してきた。上流
域で育つ良質な木材が筏に組まれ、おいしくて安全な水とともに川を下った。内湾で
得られた塩や海産物が川をさかのぼって行った。



2.我々が失いつつあるもの、そして我々が奪ったもの



ダム開発で上流域の暮らし、歴史が水底に沈められ、高度経済成長の担い手として若
い働き手が下流域に奪われた。WTO自由貿易体制下で工業製品輸出と引き換えに安価
な農林産物輸入が自由化された。その結果として疲弊荒廃しつくした上流域の現況が
ある。過疎化、高齢化によって65歳以上の高齢者が人口の過半数を占める「限界集
落」が増加し、その中にはすでに消滅してしまった集落もある。安価な外材輸入に
よって材価が下がり、間伐の手が入らなくなった真っ暗な人工林ではモヤシのように
細くて長い木が密生し、下層植生が消滅した林床からは土壌流出が起きている。さら
に、中下流域を含めた中山間地帯では、薪や炭から石炭、石油、天然ガスへとエネル
ギー源が転換され、化学肥料の導入によって里山の落ち葉の利用が止まり、これらに
よって、この列島に住む人々が数千年の間維持してきた持続可能な生態系サービス利
用の仕組みとしての里山システムが崩壊の危機にある。そしてこの危機は、いわゆる
生物多様性の危機のみならず、地域の生態系の一員としての「ヒト」の生活文化の危
機でもある。



 豊饒だった内湾も水質汚濁、ヘドロの堆積、工場立地や飛行場のための埋め立て、
人工護岸などによって疲弊している。木曽川河口から庄内川河口まで広大な干潟が形
成されてシギ・チドリの日本屈指の停泊地となり、伊勢湾への汚濁物質の負荷を減ら
す浄化の場でもあったが、そのほとんどは工業用地として埋め立てられてしまった。
ラムサール条約登録指定湿地となった藤前干潟は、最後に残されたごくわずかな面積
の干潟にすぎない。魚たちの揺りかごだったアマモの藻場がほとんど壊滅し、沿岸生
態系のコアとしての移行帯すなわち汀線の半分以上がコンクリートで固められてし
まった。常態化する赤潮の発生や、苦潮(=貧酸素水塊の湧昇)によって豊饒だった
内湾の生物多様性は著しく衰退し、おいしい魚が獲れなくなっている。



これこそが生命流域における「南北問題」だが、この構造は我が国特有のものではな
い。アジア・アフリカ諸国等々、それまでの伝統的な生活文化、即ち、生命資源の持
続的かつ有効な利活用を基本とする文化を捨て、都市に人口が集中している地域は同
様である。そして、こうした南北問題が発生している地域では、多くの場合「南側」
の生物多様性が劣化している。地域の生態系の重要な構成員の一つであった「ヒト」
が地域から去ってしまったことで、それまで連綿と続いてきた豊穣な「ヒト生態系」
が崩壊の危機に瀕しているのだ。



 挙句、大変残念なことであるが、日本の食料自給率はわずか40%、木材自給率は
20%となってしまった。日本は、宝の山である農地、林地を顧みることなく、海外の
自然資源に頼ってしまった。OECD諸国の中で例外的に食、木材の自給率が低い事
実を見るに、我々の胸は忸怩たる思いで満たされる。従って、いかなる正論を持とう
が、我々開催地の市民が先ず為すべきは、世界の生態系・生物多様性、そしてそれを
保持してきた世界の地域住民に対する謝罪である。そしてそのことは世界の平和に貢
献することにも繋がる。



3.「グローバリズム」「成長主義」とその帰結としての「南北問題」



 この地域をはるかに超えた経済のグローバル化は、わずか50年前まで有機的な関係
性の中で保たれてきた生命流域を分断してしまった。今日のグローバル経済を指導す
る新自由主義は、万物を商品とみなして、その総体の市場価値を最大化すること、経
済成長がすべてに優先するという「成長主義」つまり「経済成長」第一主義を採用し
ている。また、それは男性を女性に優先する価値観でもある。たとえば、家事育児な
どの再生産労働を無価値と位置づけ、さらにそれを女性の役割として女性労働の低賃
金を正当化し、経済成長総体の基盤としてきた。そのため、特に世界のそして日本の
高齢女性の貧困は深刻となっている。また、総体の投機商品としての価値が高い生物
(生命体)資源を大量に増産して殺傷するとともに、一見商品価値が低いと見られが
ちな微生物等の棲息条件を大幅に変えてこれを死滅させたりしているのも同様な構造
である。日々、商品として価値あるとみなされる生物種・DNAが交換の対象となっ
ている。

皆さん自身がもしその対象となったらどう思うだろうか。我々はこの「成長主義」に
よる生命流域の分断の諸問題と、グローバルな規模の格差拡大がつくりだしている新
しい「南北問題」とが同じ仕組みであることに、特に注目するものである。そして、
自然、生命、女性が、「南北問題」のもとで、「終わらない植民地」として、現在も
グローバル経済の成長の犠牲にされていることを認識せねばならない。そもそも歴史
を振り返ると、特に地域コミュニティーの主たる担い手である女性たちは、市場経済
が始まる前から、生命の多様性を守り、小規模な農業や伝統的漁業など生存経済を営
んできた。市場経済が始まるにつれて、北の先進工業諸国による生産中心の世界が確
立し、途上国においては、特に生存経済の担い手であった女性たちは、次第に仕事を
奪われ、周辺に追いやられてきた。生命流域の分断による周辺化の諸問題と新しい
「南北問題」による周辺化の諸問題も根本原因は同じである。市場経済のグローバル
化によって、先進国と途上国、生命流域の上流と下流、男性と女性の経済的な貧富の
格差が広がると同時に、生態系も破壊されてきた。しかしながら、実は、市場経済が
グローバル化した今でも、世界の3分の2の女性たちは、市場経済ではなく生存経済
で生計を立てているのである。 つまり、南北問題の解決、生命流域圏の再生、ジェ
ンダー平等、生態系の回復をめざすためには、生命の多様性を守っている生存経済を
もう一度見直し、再評価すべきである。そして同時に、グローバル化する市場経済で
はなく、地域で循環する市場経済と「生存経済」の共存の道を模索すべきである。



4.誰が生物多様性を守ってきたか、そして、誰が守るべきか



我が国における里山生態系は、ヒトが介在することによって守られてきた。そしてそ
の里山生態系は地域ごとに異なり、全国に多様な里山生活文化を醸成してきた。従っ
て、里山生態系を保持してきたのは、概念的には生物種としての「ヒト」ではある
が、より正確には「地域住民」である。

このことは我が国だけでなく、ヒトが介在して成立してきた生態系・生物多様性の最
大のステークホルダーは、地域住民である。この事実は誰もが認めざるを得ないが、
にも拘らず、今回COP10で生物多様性を論議する主体はあくまでも国家である。そし
て残念ながら、国家が地域住民の意見を代弁しているとは到底思えない。この事情は
発展途上国であっても変わることはない。COP10の正式参加者は全て「北側」の人々
と言っても過言ではないだろう。

我々NGOは世界のNGOと連携し、こうした「歪み」を是正できる唯一のセクターであ
る。国家も企業も、生物多様性の最大のステークホルダーである世界の地域住民の気
持ちを代弁することは出来ない。

またもし生物多様性の最大のステークホルダーが地域住民とするならば、生物多様性
の保持は「補完性の原則」に則って行われるべきである。自治体、国家、企業等は生
物多様性保持に関する2次的ステークホルダーであり、地域住民の保持活動を補完す
るセクターとして徹するべきである。生物多様性保持の主役はあくまでも地域住民で
あり、国家や国際社会は脇役に徹するべきである。



5.生命とその多様性を守るべき「哲学」とは何か



そもそも、古来、特に農業等を主体とした定着型の民族は、「ヒト生態系」の中でコ
ミュニティーを形成し、唯一の生産財である地域の自然資源(多くは生物資源)を持
続的に活用する生活を営んできた。前世紀より急速に進展した近代合理主義の世界的
蔓延によって、こうした地域コミュニティー、あるいは、地域の生態系を共有財産と
して持続的に管理してきたガバナンスである「コモンズ」は世界的に消滅の危機に瀕
している。その典型が先住民族の生活文化だが、こうした「ヒト生態系」の崩壊は、
「ヒト生態系」を構成する多様な生物種に多大な影響を与えてきた。我が国に於いて
も、ヒトが介在することによってのみ成立してきた「里山生態系」の中で、メダカ、
トキ等々絶滅の危機に瀕している種は限りない。このような、ヒトを重要な構成要因
としてきた生態系の保全を考えるとき、単に人類と対峙された自然の中の生命種の保
存ではなく、我々「ヒト」の生活文化を含めた生態系を如何に保存するかが問題とな
る。

加えてそうした生活文化を根底で支えてきた自然観、コミュニティー観を再考するこ
とも重要となる。いわゆる自然に加えて多様な神々、祖霊を含めた概念が日本人の伝
統的自然観である。また、人だけが構成要素である西洋のコミュニティー観とはこと
なり、日本古来のコミュニティーには「自然」が構成要素として成立してきた。日本
人の考えるローカル・コミュニティーとは、多様な神々、祖霊を含めた地域の生態系
そのものであったことを再評価せねばならない。

こうした感覚は、近代合理主義がもたらした大脳皮質偏重の歪んだ身体観に支配され
た我々現代人にとっては受け入れ難いものかもしれない。しかし、未だ伝統的な生活
文化を保持している世界のローカル・コミュニティーや、わずかだが我が国にも残存
する里山文化実践者(多くは80歳以上の高齢者)にとっては極当たり前の感覚であろ
う。

そして、こうした自然観の欠落(近代合理主義に満たされている先進国群等)、ある
いは消滅(発展途上国、我が国の里山等)が生物多様性を阻害しているそもそもの根
本原因であろう。これまでの近代合理主義とその帰結(あるいは前提)である人間と
自然を分離する思想を大いに反省することを土台とし、その土台の上で、新たな(あ
るいは、特に東洋では古くからある)人間と自然が融合した生活文化から生まれる哲
学を提示すること、更には世界のNGOと議論を重ね、生物多様性条約の土台となる哲
学を構築しなければならない。残念ながらこれまでの生物多様性条約についての議論
は、対症療法的な最低限の対策に力点をおいている。その実施に協力を惜しむつもり
はないが、より根本的な生命とその多様性を支える人間社会の生活とそれを保障する
社会と経済の改革を求めるものである。



われわれ「開催地」の住民は、

1)コミュニティを中心にする生存経済を脅かすグローバル経済の規制

(特にバイオパイラシーなど遺伝資源の保護)

2)生命流域で分断されたものを再び結びつける生活中心経済の伸長

(特に食を中心とする生物資源の適正規模の交易を中心とする農村と大都会、農業や

漁業と商業の連帯などを流域圏内流域圏間、世界地域間で女性と男性がともに担い手

となって展開する)

3)日本の伊勢三河湾生命流域の分断が諸外国、特に開発途上諸地域に波及してその
分断を引き起こしているグローバル経済の生命流域の分断と女性のみならず男性にも
拡大する格差に対する世界諸生命流域の協力のもとでの対処。

その前提として、

4)世界の諸生命流域で同様の地点で闘っている人々の対話・連帯をよびかけたい。

そして、われわれは、

5)生命とその多様性を無視して、ひたすら人間社会の成長だけを追い求める「成長
至上主義」に対抗するために、この考え方の背後にある近代思想そのものが持ってい
る危険性について、これが破壊し去ろうとしている自然と共に生きる知恵を再発見す
ることを、愛知・名古屋で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議の開催地の住民
として提唱し、先住民族と伝統的なローカル・コミュニティはじめ、(アジア、アフ
リカ、ラテンアメリカが重複)アジア、アフリカ、ラテンアメリカの人々とともに、
これを目指すことを提案したい。



以下、賛同者





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