[BlueSky:06755] キングペンギンの給餌と採餌


[From] OTSUKA Kimio [Date] Thu, 26 Feb 2009 15:02:25 +0900

大塚です

 先日、大阪の天王寺にある動物園に行った折、ペンギンに餌を与えるのを見る
ことができました。
 キングペンギンには飼育係がアジを一匹ずつ手渡しで与えていました。5頭い
るキングペンギンは集団で行動していました。飼育係に近づいていくときも5頭
一緒に近づき、一部の個体が満腹して立ち去る時も三々五々ではなく5頭一緒で
した。
 1つずつ与えるので、大きくて強そうな個体が食べて、小さい個体はそれを見
ているというのが続きました。何頭かが満腹すると、満腹した個体だけでなく、
まだ餌にありついていない個体も一緒に一斉に立ち去りました。小さい弱い個体
は空腹のまま夜を過ごすのだそうです。

 これについて、飼育係は「人間でも動物でも強者がうまいものを手に入れ弱者
は我慢せざるを得ないのだ」というような解説していました。

 しかしそのような考えは、"Winner takes all" を是とする風潮に毒されたも
ので、ペンギンの採餌の解説としては適切ではないと思います。上記のような給
餌をすると、複数のペンギンが一匹の魚を争うというシチュエーションの繰り返
しになるため、相対的に強い個体ばかりが餌にありつくことになりました。
 しかし、野生のペンギンが採餌をする時には、餌の魚の方がペンギンよりもず
っとたくさんいるのではないでしょうか。そういう状況下ではペンギン個体間の
相互作用があまりない状態で、採餌量の個体差も小さくなり、強い個体ではなく、
魚採りが上手な個体がたくさんの餌にありつくことになると思います。もしかし
たら大きすぎると小回りがきかなくなって魚を捕まえるのは苦手になってしまう
かも知れません。
 
 「100年に一度の危機」をもたらした新古典主義的な思想ですが、意外なと
ころまで影響が及んでいると感じました。

 みなさんはどう思われますか?

--
大塚公雄
otsuka@kais.kyoto-u.ac.jp
kimio-otsuka@nifty.com
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