[BlueSky:06678] Re: 風力発電と自然環境保全


[From] SUKA Takeshi [Date] Fri, 1 Jun 2007 18:08:25 +0900

中澤さん 青空MLの皆さん

須賀@長野市です。

中澤さん:
> 【駒ヶ根に想う】というブログの記事によると,須坂市に建設予定の風力発電
> 施設について,全国から1万5千人の反対署名が集まったとのことです。
> http://d.hatena.ne.jp/komachan/20070530/p1
>
> イヌワシの生息環境保全と風発建設が絶対に両立しないのであれば,解は存在
> しないことになるので,どこに妥協点を求めるかという問題になるでしょう。
  ・・・
> エコツーリズムではエネルギーは得られないので,風力発電と自然環境保全の
> ジレンマはかなり解決の難しい問題だと思います。
>
> しかし,横国の松田さんのブログで何度か取り上げられているように,もちろん
> リスク科学的なアプローチは可能なはずです。
> http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/

おっしゃるとおりかと思います。ただ、風力発電をめぐるリスク
科学的なアプローチについてきちんとフォローしていませんので、
まとはずれなコメントになるかもしれませんが、須坂市の候補地
のような場所では、猛禽類の絶滅リスクだけの話にはとどまらない
ことにも留意した上で考えなくてはならないのではないかと
思います。

確かこの場所は、根子岳の稜線付近ですよね。この一帯は全国的
にも貴重な草原環境が残るところで、今は登山道くらいしか目立った
人工物はないところだったかと思います。ここで計画されている
風車は直径が70mを越えるようなもの(ビルでいえば何階建てくらい
の高さになるのでしょうか)で、それが10基以上、というような計画
だときいています。

そうすると、そうした施設をつくるのに資材や機材を搬入する
道路やそのための工事が必要になります。その結果、景観や
いくつかの動植物の生息地をそこなうおそれもあります。
計画地にかかっているかどうかはわかりませんが、根子岳は
ミヤマモンキチョウという高山チョウの生息地としても知られ
ています。ミヤマモンキチョウは、日本では浅間山系と北アル
プスにしか生息しておらず、日本以外ではユーラシア大陸北部
と北米大陸に分布しています。浅間山系のものと北アルプスの
ものはそれぞれ固有の亜種とされています。環境省・長野県
双方のレッドデータブックで準絶滅危惧とされています。
いわゆる氷河時代からの遺存種です。

そうするとこういう種の絶滅リスクも計算に入れて、という
ことになるかもしれませんが、考えるべきは、単にその種の
存続可能性ということだけでなく、そういう種の存続を可能に
してきた景観や生物群集(たとえば幼虫の食草となるクロマメ
ノキやその生育環境をふくむ)、またそうしたものを存続させ
てきた地史などの地域的な固有性といったものをどう評価する
か、といったことでもあるのではないでしょうか。

このような地域的な歴史性・固有性といったものをリスク科学
でもうまく定量的にあつかうことができるものでしょうか。
あるいはこれからの課題として、現在研究がすすみつつあると
いった状況なのでしょうか。この場所をどうするかという問題
を越えて、類似のケースでのより一般的な問題として研究的に
も興味深い課題ではなかろうかと考えてしまいました。

何かご存じでしたら、ご教示をいただけましたらさいわいです。

   須賀 丈




▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。