[BlueSky:06667] 浅川の治水対策説明会のダメさ


[From] Minato Nakazawa [Date] Wed, 28 Feb 2007 02:19:09 +0900

青空MLの皆さん

中澤@長野市です。知事が代わったときから予感はしていたんですが
長野県は浅川に穴あきダムを作るということで,流域住民への説明会
がありました。で,行ってきたんですが,まず感じたことは,この種
の説明会自体の欺瞞性です。説明しましたよというアリバイ作りに
使われるだけに思えてなりません。ふつう,公開説明会をしたら
アンケートをとってその説明会の評価をするのが最近の標準です。
けれどもそんな姿勢は一切ありませんでした。やりっぱなしです。
しかも,既に別のところで質問した人には質問させないという
やり口で,深い質問が出るのを防いでいました。素人の質問だけを
受けておいて,痛いところをつかれると圧迫面接みたいに専門用語
を使って質問者をしどろもどろにするというやり口はあまりに
ひどいと思いました。リスクコミュニケーションとして評価するなら
0点です。

説明会は,説明を受ける側がわからないような説明では無意味です。
しかし,県の説明にはわかってもらおうとする努力のあとさえ皆無
でした。あんな説明では,大学生相手の講義だとしても脈絡のはっきり
しないわかりにくい講義として総スカンをくうでしょう。ましてや
聴衆の多くは地域の一般住民(高齢者も多い)です。あの説明の仕方
では,仮に内容が良かったとしてもダメでしょう。
印刷がつぶれてほとんど見えないパワーポイントの資料をその場で
配るというのもダメです。パワーポイントではなく,きちんと筋が
通った文章にして,事前にwebからダウンロードできるようにして,
かつ公民館や県の出張所で事前に配布するようにすることが最低限
必要でしょう。今回のやり方では,わかってもらおうなんて
毛ほども考えていないし,住民の声を聴く気もないとしか思えません
でした。

それ以前に,県土木部自体がデータの解釈の筋道を整理できていない
ので,説明内容に論理的一貫性がないのがダメでした。
あとで時間があれば逐一突っ込みを挙げたいところですが,たとえば
線状凹地の説明で,TR-7というトンネルのところの説明を延々として
おいて,「トップリングがある地表付近の岩盤はゆるんでいる」けれ
ども「大規模な岩盤すべりはありません」と言い,「ゆるんでいる」
ことへの落とし前をつけずにTR-6というトンネルのところは「まったく
ゆるみがない」ので大丈夫だというわけですが,TR-6が大丈夫ならOK
というなら,何のためにTR-7の説明を延々としたのか筋が通りません。
仮に大規模な岩盤すべりがなくても,小規模な地滑りでも穴あきダムの
穴がふさがるかもしれませんし,土石流のひきがねになるかもしれない
と思ってこちらは心配になるわけですが,そういうことには一切
触れません。表土の地滑りでは災害が起きないとでもいうのでしょうか。
大雨が降ったときに水が溜まる場所は地滑り危険地域にかかっているので,
もっとも危険なときに地滑りが起こる可能性が高まるわけですが,
それを指摘されると,土木部長はそういう危険は滅多にないという
詭弁をろうするのです。
しかし「そういう危険は滅多にない」という言葉は,大雨が降ることが
滅多にないということを意味しています。1/100の雨に対処するために
ダムを作らなければならないといいながら,それと同じ確率で地滑りが
起こるかもしれないことは滅多にないから無視できるというのは論理に
なっていません。「ふだんは水が溜まっていないから安全」などと
あまりに妙な発言をするので会場からも失笑と怒号が
混ざり合った声がでていました。

断層らしいところはすべて現地調査をしましたと言いながら,もっとも
ダム軸に近い11番から13番まではどうだったのか説明がなく,
延々と説明する内容が,活断層がないと考えられること(しかし
F-V断層について否定する根拠は不十分でした)と,大規模な岩盤
すべりは起きないだろうということだけで,しかも一段落するごとに
「だからダム建設は可能です」とわざわざ入れるという念の入った
プロパガンダぶりで,寒気がしました。
整理すればもっと中身のある内容で30分で済んだであろう説明を
1時間以上かけてやっておいて,住民からの質問を時間がないから
打ち切るという態度は論外でした。

地元テレビ局も来ていたんですが参加者にインタビューするでもなく
(いや,もしかしたら会場外でしていたのかもしれませんが,散会時には
もういませんでした),会場の絵を俯瞰的に撮るだけで,きっと
「説明会が行われました」と,ニュース番組でちょこっとだけ触れられる
んだろうと思われました。ニュース番組や新聞でどのように触れられるか
はわかりませんが参加していた印象からすると,100人くらいいた参加者の
大部分はダム反対かつ県の説明には全然納得していなくて,明らかに穴あき
ダム計画に賛成という人は3人しか確認できず,とても浮いていました。賛成
コメントをした2人は論点さえ同じで,仕込みなんじゃないかと勘繰りたく
なるほどでした。

こういう説明会のあり方を根本的に打破するにはどうしたらいいんでしょうか。
何かよいアイディアがありましたら教えていただけると嬉しいです。



▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。