[BlueSky:06630] 土木と環境保 全に


[From] 酒井千富 [Date] Fri, 28 Jul 2006 16:08:46 +0900

中沢さん,須賀さん

返事が遅くなりました.酒井@土木屋です.
皆さんから,返事をいただいて一月も過ぎています(^^ゞ

公共事業というものは,人の営みそのものであり,自然
との共生・持続可能な社会を考えるのであれば,土木技
術はその方向に進んで行かなければならない.それなの
に,私たち公共事業に携わる者から見ても,「なんで?」
という事業が多々あります(^_^;)

話は変わりますが,先日,岩手県の一関市本寺地区という
ところに行ってきました.ここは,中尊寺の史跡と絡めて,
文化景観保全地区として世界遺産に登録されるところです
(たぶん,2年後).
ここ本寺地区は,その昔,骨寺とよばれたところで,現在
においても荘園時代の田園風景が保全されている場所です.
その中心である骨寺自体は未だ見つかっていませんが,田
んぼや水路の風景が世界遺産として登録されるのは,日本
で初めてのようです.
実はこの本寺とうい地区は,前から圃場整備(田んぼを四
角にする)のあったようですが,権利関係が細かく分かれ
ているため,なかなか纏まらなかったようで今に至るまで
昔の形が保全されたという経緯があります.やがて,過疎
が進み地域の生き残りをかけての決断が世界遺産としての
景観保全でした.文化景観は人の生活が生み出した風景で
す.この地域の人たちは,ある意味,自分たちの生活を犠
牲にして保全することを選択しました.これから,本寺が
どのように発展していくのか(保全しつつ変わっていくの
か)楽しみです.
実際に生活(農業)をしている人と景観保全・・・4月か
ら景観保護条例が施行され,すでに開発には規制が掛けら
れました.今の人たちは高齢の方達です,世代を超えて継
続していくことが可能でしょうか?


> いえ、土木ほど、自然環境の改変と保全のはざまでさまざまな
> 課題をかかえ、なやんでおられる分野もほかにそうはないのでは
> ないでしょうか。これはわたしどもの分野(生態学、保全生物学など)
> の力量不足でもあるのですが、土木の事業では、場所ごとにちがった
> 生物がおり(しかもどんな生物がいるか事前にはわからないことが
> 多い)、出てくる課題のかたちもいろいろです。加えて、目標とすべき
> 考え方やしたがうべき制度のかたちがどんどん変化していますね。だから、
> こういう問題にはこうしたらいい、というマニュアルのない領域が
> 大きいですね。
by 須賀さん

私が川や渓流を計画するときのマニュアルは現場です.
群馬には急流が多く地形も複雑なので山間地の河川では,
平地の河川で使われている技術がそのまま使えません.
ですから,参考にするのは近くの似たような川となります.
計画洪水流量なんて言っても,結構,水理学的に無理なと
ころが多いです(^^ゞ
自然の地形や川の形を良く観察し,出来形や変化の状況を
踏まえて計画に反映させることが出来れば,生物の保全に
つながるのではないかと考えています(^_^)b

一方で,近年の雨の降り方は異常です.僕等の計算を上回
るような雨が降ります.土木は経験工学ですから,異常気
象には対応しきれないと感じています.技術者の責任はそ
の範囲を明示することなんでしょうね.


> これはわたしも感じます。わたしも、感覚的・抽象的にしかいえないのですが、
> これには何か構造的な原因があるような気がします。行政組織内部での
> 仕事の評価のシステムとか、人事異動のシステムなども関係していそう
> な気がします。ちょっと、わたしもズバリこうだ、というふうにはわからない
> ところがあり、もどかしいのですが、ちょっと苦労しているところでも
> ありますので、また考えてみたいと思います。
by 須賀さん

よく言われる,里山や人工林の荒廃は経済的な影響が強い
ような気がします.人工林の再生にしても経済面での再生
がなければ持続しません.残念なのは国有林が経済林を放
棄(自然林に再生)してしまったことです.実験的に経済
林再生を研究するには国有林が良いと思うのですけどねぇ・・・


> ぼくは長野から群馬大まで新幹線通勤していて,平日は
> 毎日,新前橋から昭和町まで自転車に乗っています。
> 酒井さんとは,ある意味ご近所ですね。
by 中沢さん

長野から通勤しているのですか.ご苦労様です(^^ゞ
私は利根川の対岸,総社町に住んでます.会社も高井町です.
(ローカルな話題で<(_ _)>)

前橋付近の利根川の河川敷は,ゴルフ場,グランド,駐車場,
公園に利用されています.
うちの近くにも,公園が整備されました.工事を行うにあた
り,カワセミの棲息が確認され,カワセミ営巣地(人工)を
作ったのですが・・・使ってくれませんねぇ(^^ゞ
このあたりで,利根川に合流する午王頭川(ごおうずがわ),
吉岡川ではカワセミを良く見かけます.上流部に下水道が普
及したので水質が良くなったのか魚もいるようです.私が幼
い頃は,ホタルやカジカも居たのですけどねぇ・・・

> そうですね。自然に影響を与えずに生きていくことは
> 人間には不可能なので,土木も必要だと思います。
> 要は,いかにうまくやるかということでしょう。
by 中沢さん

日本は,最終氷期以降,他に類を見ない地殻変動が激しい島で
すし,平地は殆ど沖積(川が氾濫して作った)平野です.こん
なところに1億もの人がいるのですから負荷は必至ですね.
でも,土地利用など考える余地はたくさんありますよね.

> 人為を加え始めたら最後まで面倒を見なくてはいけない
> と思うのですが,予算の付き方が,設備ができるまでと
> できあがった設備の維持管理が別なことが多くて,
> なかなか最後まで面倒をみるということができないで
> いるような気がします。抽象的・感覚的な言い方で
> すみませんが。
by 中沢さん

公共工事のコスト縮減が盛んに言われていますが,違っているよ
うな気がします.合理化・機械化・発注規模の見直し等によって
削減を進めていますが,人件費(人の手間)を削ってコストを下
げても資源やエネルギーの投入量が増えて,事業費の殆どが海外
に行ってしまうのですね.
結局,納税者の利益にならない気がします.
それよりも,資源やエネルギーの投入量を減らして人に手間を増
やした方がコストは上がってもお金が国内に残るような気がする
のですが(^^
マンパワーって,ある意味,太陽電池のようなものですから環境
負荷も少ないでしょう(^。^)

ずいぶん,長々と書いてしまいました.
2つにすれば良かったですね(^^ゞ



▲前の記事へ ▼次の記事へ △記事索引へ △青空MLトップへ

(注)この記事が最新である場合,上記「次の記事へ」はデッドリンクです。