[BlueSky:06400] Re: 環境権


[From] Minato Nakazawa [Date] Fri, 04 Mar 2005 12:24:32 +0900

中澤@昼休み中です。興味深い話題をありがとうございます。

> フランスの国会が憲法を改正し、環境権と環境保全の義務を
> 前文に明記し、環境権を基本的人権のひとつとして位置づける
> ことになったそうです。(朝日新聞の記事↓)
> http://www.asahi.com/international/update/0302/003.html
この記事からみると,笹山さんの論説に載っていたスペイン
の45条に近い内容みたいですね。笹山さんといえば,ぼくは
[6387]で衆議院議員と書いてしまいましたが,現在は議員では
ないらしいです。失礼しました。個人的には,こういう方にこそ
議員でいて欲しいですけどね(なんて,専業議員不要・パート
タイマー化論を
http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/myfavor/20000626.html
で書いた人間が書くことではありませんが)。

> 日本の憲法のなかに環境権を位置づけようという動きも
> あります。笹山登生さんの論説は勉強になりました。
> http://www.sasayama.or.jp/opinion/S_21.htm

スペインの45条2項は,公権力の活動はリスク論(リスクアセス
メント,リスクコミュニケーション,リスクマネージメント)
に基づいて行え,という意味だと,ぼくには受け取れました。
3項の罰則は誰が受けるのかが不明ですが(「違反した者」と
言っても,誰が違反したのかが不明確な場合が大半だと思うので。
所轄官庁の長が責任を取るのでしょうか?)。

それ以外の意味の「環境権」の法的位置づけなら,それを何と
呼ぶかだけの違いで,現行憲法13条と25条に根拠を求めようが,
環境基本法などに根拠を求めようが,あまり本質的な違いは
ないように思えます。
例えば読売試案くらいのものなら,別に憲法を変えてまで
やる必要はないと思いました。
スペインの45条2項のようなものが憲法に謳われるなら
環境影響評価法の根拠がより強化されますし,意味は
あると思いますが。ああ,でも,Think globally, act locally
というのは,リスク論の立場では凄く難しいので(アセスメント
とマネージメントが簡単にはつながらないと思うので),笹山さんが
最後に書かれている地球公共財をまもるという視点のためには
世代間・地域間の不平等を避ける思想も必要ですね。

> 生態系のはたらきの重要性とそれがもたらす
> 大きな価値について、従来の経済中心の価値観だけではとらえられ
> ない広い視野から人間のとっての意味を再評価する、というような
そうですね。自然の価値の捉え方について,鷲谷いづみ・矢原徹一
『保全生態学入門』を引用して,2001年に高崎経済大学でやった講義の
資料として公開していますが,
http://sv2.humeco.m.u-tokyo.ac.jp/~minato/ptlecture/ecology_p21.html
人間中心主義vs生態系中心主義という単純な対立構造は,あまりにも
ナイーブですね。笹山さんもそれはわかっているはずと思いますが,
論点のまとめとしては,そこを問題にする人は多いでしょうから,
出されたのではないでしょうか。
世代間の不平等を避ける思想をリスク論で扱うなら,アセスメントの
際に「予備的使用価値」もきちんと扱いましょうということになると
思いますが,それが本当にできるのかどうか。

まとまっていませんが,感じたことをだらだらと書いてみました。

(signature follows)*****
Minato NAKAZAWA, Ph.D. <nminato@med.gunma-u.ac.jp>
Assoc. Prof., Gunma University Graduate School of Medicine
Socio-Environmental Health Sciences (Division of Public Health)
Showa 3-39-22, Maebashi 371-8511, JAPAN
at 10:33:05 on 04 (Fri) March, 2005


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