[BlueSky:06376] Re: 在来種の中に混雑も。


[From] SUKA Takeshi [Date] Mon, 24 Jan 2005 11:02:51 +0900

小森谷さん 葛貫さん みなさん

             須賀です。

> 小森谷さん:
> > 日本のイワナは各沢で種類が違うというほど多様性に富んで
> > いましたが、現在絶滅しそうな種もいるようです。(ヤマト
> > イワナはニッコウ系イワナの放流でほとんど見られなく
> > なっているようです。)
> > こういったものも取り上げられていくのでしょうか?
> > 情報があったら教えて下さい。
>
葛貫さん:
> いわゆる「種」になると保全の対象になると思うのですが、株や
> 系統等について考えると、どの程度の遺伝子の差異まで保全の対象
> とするのか、もう具体的に決まっているのでしょうか。
> 御存知の方、宜しくお願いしますm(_ _)m。

わたしも法律などの国の動きは必要に応じてあとから勉強するのが
精一杯なので、くわしく知っているわけではありませんが、とりあえず、
こうかな、と思っていることを書いてみます。まちがいがあるかも
しれませんので、もしお気づきの方がいらっしゃいましたら、訂正や
補足などをお願いいたします。

ブラックバスなどで話題になった「外来生物法」は海外からもちこまれる
ものを対象とした法律だと思います。ですから、国内の系統のちがい
の保存などは、この法律の対象外なのではないでしょうか。

法律の全文はここにあります。
http://www.env.go.jp/nature/intro/law.html

ただ、自然環境関係の法律はほかにもあります。

たまたま、九州大学の矢原徹一さんの日記をみたら、
http://d.hatena.ne.jp/yahara/
「自然再生法」に関連した(?)「自然再生事業指針案」づくりの検討会
の様子がちょっと書かれていました。

"「保全すべき対象は、単なる『種』ではなく、地域固有の系統である」
 という文章には、全員が合意した。"

ということです。ですから、こういう方向へ今後は動いていく可能性が
ありますね。

ちなみに、『長野県版レッドデータブック動物編』
http://www.pref.nagano.jp/seikan/kankyou/kisyou2/index.htm#rdb
をまとめたときには、ほとんどの分類群については情報量がかぎられて
いることから、「種」(正確にはその長野県内の個体群)を保全の単位
として記述することにせざるを得ませんでしたが、一部のよりよくわか
っている種については、亜種を単位にしました。たとえば、イワナでは、
ヤマトイワナとニッコウイワナの2つの亜種を区別しました。また高山
チョウについても、山塊のあいだでDNAレベルでのちがいがあった
場合には、亜種を単位にしました。

このあたり、野生動植物の種内の系統の実態についてはまだ十分に研究
が進んでいないものも多いので、なかなかすっきりとはいかないのが
現状だと思います。


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須賀 丈(SUKA Takeshi)
〒381-0075 長野市北郷2054-120
長野県環境保全研究所(飯綱庁舎)
自然環境チーム 動植物生態グループ
Tel: (026)239-1031 Fax: (026)239-2929
E-mail: suka-takeshi@pref.nagano.jp


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