[BlueSky:06338] Re: 世界の漁獲


[From] "Yamaguchi" [Date] Thu, 13 Jan 2005 15:40:36 +0900

> ただ,5倍というのを額面通り受け取っていいのかどうかはわかりません。
> というのは,記事によればFAOの発表とのことですが,元記事自体は
> 見つからなかったのですが,
> http://www.fao.org/DOCREP/FIELD/006/Y3354M/Y3354M00.HTM
> によると,中国の統計が過大になっているのでその影響を排除しなくては
> いけないと書かれていたりして,統計数値自体の信頼性がわからない
> ことが1点。あと,漁獲高には影響する因子が多すぎるので,ある程度
> 増えたからといって資源が枯渇するまで行くかどうかはわからない
> ということもあります。もっとも,わからないから生態系管理が
> 必要だという結論には反対しませんが。FAOは数理生態学的な評価は
> していないんでしょうか?

直接の専門分野ではありませんが、関連したことをやっているので
データの裏の意味はだいたいわかります。
http://www.fao.org/sof/sofia/index_en.htm
これの2004年版がでたのでニュースでしょうか。元サイトでは見つかりませんが。

マクロ統計をそのまま額面どおりに受け取るのは問題がありますが
長年の積み重ねで見る全体像、傾向の把握には役立ちます。

過去50年間の世界全体の漁獲量は右肩上がりで、最近では日本が
ピークから半減していても中国の増加で隠されていますね。
例のロンボルグは全体量の増加を根拠に水産資源枯渇問題を
否定しようとしました。

資源変動は漁獲量データにつき物ですが、特定地域資源の
クラッシュも起きています。また、大型魚類の資源が集中的に
漁業で破壊されていること、持続的資源利用のベースである
幼稚仔の生育場所の破壊が進んでいること、などなど将来的に
問題を抱えている資源は多いでしょう。

有名なケースは大西洋のタラ資源です。カナダ沖の資源は
クラッシュしましたので、南側でアメリカがものすごく警戒して、
激しく漁獲規制をしていますが、それが合理性を欠いていて
小規模な沿岸漁民を圧迫しています。そのドキュメンタリー
記録が本になっているのを読んだばかりですが、ばかげた
ことに漁民が魚の犠牲になっています。
Vanishing Species: Saving the Fish, Sacrificing the Fishermen
Susan R. Playfair Univ Pr of New England ; ISBN: 1584653183 ; (2003)

http://www.fishbase.org/report/FAO/FAOSearchMenu.cfm
上で国別、海域ごと、主な魚種ごとの漁獲量の経年変動を見ることが
出来るようになっています。カナダのAtlantic codを見てください。
http://www.fishbase.org/report/FAO/graphFAOCatch.cfm?c_code=124&scientific=Gadus%20morhua&english=

とにかく中国のデータのすさまじさは魚種ごとにグラフにしてみるとよくわかります。


同じく日本の沿岸資源の減少傾向のおぞましい状況もよくわかります。たとえばハマグリでは
http://www.fishbase.org/report/FAO/graphFAOCatch.cfm?c_code=392&scientific=Meretrix%20lusoria&english=

数理解析も大事ですが、何が変動や減少、クラッシュを引き起こしているのかは
個々の種に特有の生態が絡んでいます。その解明が進んでいない魚種も多い
のでモデルでの予測があやふやとなるし、さらに政治的な力が関与して状況を
悪化させることもあるようです。

山口正士
903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1
琉球大学理学部海洋自然科学科






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