[BlueSky:06323] Re: 外来種問題


[From] SUKA Takeshi [Date] Fri, 07 Jan 2005 15:01:20 +0900

葛貫さん 水崎さん 山口さん みなさん

              須賀です。

葛貫さん、セイヨウオオマルハナバチについて、わかりやすい論点
整理をしていただき、ありがとうございます。おっしゃるように、
問題が生じたときだれがどのように責任をとる(対策に必要なコスト
を負担する)のかを整理しておくことが、ひとつの重要なポイント
になりそうですね。

その場合、どこまでコストにふくめて考えるのか。たとえば、信州
の高山のお花畑の花と在来マルハナバチの関係、これは進化の歴史
が生みだした固有のものだと思いますが、この関係が仮に崩壊した
とき、そのコストをなんらかの支出によって埋めもどすというよう
なことができるのか、なんてことも気になります。どういうかたち
でなら、またどこまでならそれができるのかを考えておくことも、
もしかしたら必要かもしれませんね。

葛貫さん:
> どの外来種が、一般の人を含めて関心を集め外来種問題を取り扱う
> 際のたたき台になるのか、今後を占うという感じでしょうか。

そうですね。

山口さん:
> また、国レベルでの仕事と地域行政での仕分けが外来種問題では
> 難しさを増幅させますね。国を単位にして外来種、移入種の問題を
> くくってしまうことが行政的によろしいことかしら。

水崎さん:
> 北海道のブルーデータにしても、島嶼だから容易に判断が付くのですけれど、
> じゃあ、東北と関東の間で、かっちり分けるのか?
> って、誰も答えが出せないのが現状です。
> 現在の状況は、理屈だけでワイワイ騒いでおります。

これはむずかしい問題ですね。こまかくいうと種ごとにちがうわけ
ですね。特定の分類群、たとえばチョウでもハチでも、かなり広い
範囲にわたって連続的に分布している種がある一方で、飛び地的に
分布域が分断されたかたちになっている種もあります。後者のなか
には、人間活動の影響で分布が変えられたものだけでなく、過去の
気候変動の過程で生息地が分断され、それぞれ独自の遺伝的集団に
分化しているものもあります。ひとくくりにはできないわけですね。

本当は、総当りでやっていくのが理屈の上では一番いいわけですが、
それが終わるのを待っていたらいつまでたってもなにもできないと
いうことにもなります。

妥協案として、多くの分類群に共通する分布境界線をつかうという
方法も考えられます。堀田満(1974)「植物の分布と進化」(三省堂)
によると、北海道から沖縄のあいだにひかれた分布境界線としては、
北から順に、石狩低地帯、黒松内低地帯、ブラキストン線、牧野線、
ルイス線(スタインネガー線)、ハマオモト線(本州南岸線)、対馬
海峡線、三宅線、渡瀬線、先島線(蜂須賀線)、細川線、といった
ものがあります。

でも、これで分けると言ったら、専門家のあいだからは異論が百出
するでしょうね。

また、これらの境界線は、県境とはほとんど一致していませんので、
行政上の対応には、自治体を越えた協力が必要になります。

こういったものを参考にしながら、日本列島のなかの生物地理的な
区分に対応した地域区分を一方では設定し、他方では問題となって
いるそれぞれの種についてくわしい調査にもとづいた対応をとって
いくしかないのかも知れませんね。


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須賀 丈(SUKA Takeshi)
〒381-0075 長野市北郷2054-120
長野県環境保全研究所(飯綱庁舎)
自然環境チーム 動植物生態グループ
Tel: (026)239-1031 Fax: (026)239-2929
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